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日本株に追い風。バイデン新大統領は「強いアメリカ」を取り戻す=矢口新

トランプ大統領はどこから見ても、とんでもなく型破りな政治家だったのではないだろうか。同氏が型破りな外交で多くの国々と軋轢を生じさせたために、自ら望んでいたような「強いアメリカ」を取り戻すどころか、むしろ弱体化させたのではないかと睨んでいる。バイデン新大統領はどうか?(『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2020年11月9日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

米国に新大統領が誕生

米国に新大統領が誕生した。今回の選挙では連邦議会議員選挙を含め、いくつもの「新」が誕生した。

まずは、期日前投票数が1億人を超えたこと。前回の2016年選挙の総投票数が約1億3,900万票なので、この数値がいかに大きなものかが分かる。民主党の大統領候補、共和党の現職大統領の得票数も共に過去最大だった。

また、カマラ・ハリス氏は、黒人・アジア系の女性として初めての副大統領となる。以下に、フォーブスから「初めて」集のうち数件を引用する。

ニューメキシコ州の連邦下院選では、いずれも有色人種の女性候補であるイヴェット・ハーレル(共和)、テリーザ・レジャー・フェルナンデス(民主)、デブラ・ハーランド(民主)がそろって当選した。連邦下院議席をすべて有色の女性が占めるのは全米初。ハーレルは共和党初のネイティブ・アメリカンの連邦議会議員にもなる。

デラウェア州の州上院選では、トランスジェンダーの女性であることを公にしているサラ・マクブライド(民主)が当選した。米国初のトランスジェンダーの女性州上院議員となり、トランスジェンダーの公表者では米国で最も高位の公職者にもなる。

ミズーリ州の連邦下院選では、黒人女性候補であるコーリ・ブッシュ(民主)が当選。ミズーリ州初の黒人の女性連邦議会議員になる。

出典:女性・非白人・性的少数者が躍進、2020年米選挙の「初めて」集 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)(2020年11月7日配信)

そのほか、記事ではLGBTQを公にしている議員の初当選や、複数の州での初の女性議員誕生、米史上最も若い25歳の連邦議会議員誕生などが紹介されている。

今回の大統領選挙は、トランプ氏の相手が特徴がないのが特徴だと言われたバイデン氏が相手だったので、事実上のトランプ氏の信任投票だと言われていた。しかし、上記の「新」の多さと内容とを見ていると、必ずしもそれだけではなく、カマラ・ハリス氏を副大統領候補に選んだことが、「時流に乗った」勝因の1つだったと言えるかも知れない。

米国は「分断」されている

しかし、両党支持の色分けを見ると、確かに米国は「分断」されているかも知れないと思う。

出典:The Associated Press(2020年11月9日17時現在)


活躍している移民が多く世界に開かれた東西海岸地域と、南部中部穀倉地帯のコアなアメリカだ。フロリダ州も移民が多いが、大勢力のキューバからの移民が社会主義的な民主党左派を嫌ったためと、トランプ氏が重点的に攻略したことが効いたとされている。

Next: 型破りだったトランプ。強い米国を取り戻すどころか、弱体化させた?



トランプの功罪

それにしても、トランプ大統領はどこから見ても、とんでもなく型破りな政治家だったのではないだろうか?

私は同氏が型破りな外交で多くの国々と軋轢を生じさせたために、自ら望んでいたような「強いアメリカ」を取り戻すどころか、むしろ弱体化させたのではないかと睨んでいる。

しかし、同氏が米国民にもたらした最大の功績は、「政治は自分たちのもの。自分たちが選んだ大統領が世界を変えられる」という意識ではないだろうか?

でなければ、期日前投票を1億人以上もが利用し、投票所では10時間待ちの列までつくって、投票率が120年ぶりの高水準になるはずがない。トランプ氏の支持者、反発者共に「ぶっ潰して欲しい」、「潰されてはたまらない」と熱かったのだ。

経済面では高評価

また、トランプ氏の経済面での評価は高かった。選挙の出口調査で、「5つの政策項目のうち、大統領選投票で最も重視したものはどれか」という質問には、経済が35%、人種問題が20%、コロナが17%、犯罪と治安、ヘルスケアがそれぞれ11%との回答があり、有権者の関心は経済にあったことが分かっている。

その経済対策に期待するでは、トランプ氏が82%とバイデン氏の17%を圧倒していた。

バイデン氏の公約は?

そのため、バイデン氏は就任第1期目の4年間に2兆ドルの巨額投資プランを公約に掲げていた。

今後の米国の動向を知るために、メディアがまとめたものを要約する。

1)インフラの再建、整備

老朽化したインフラを再建し、気候変動リスクに対する耐久性を高め、大気や水の汚染防止で公衆衛生を改善させる。

インフラ再建には国内の労働力と国産の資材を使用。それによって数百万の雇用を創出し、持続的な経済成長の基盤とする。また、全米に5Gのインターネット通信網をあまねく整備し、イノベーションの起爆剤とする。

2)クリーンエネルギー

2035年までに電力部門のCO2排出ゼロを実現する。再エネによる発電を促進。

発電・送電事業者に対する新基準を導入。既存の原発や水素発電も引き続き活用するが、厳格な安全基準を適用。クリーンエネルギー技術のコスト削減を促し、国産技術による早期の商業化を目指す。

また、クリーンエネルギー技術に対して「アポロ計画」を上回る規模の研究開発投資を推進。そのために、「気候変動に関する最先端研究プロジェクト局(ARPA-C)」を新設する。

Next: 富裕層・企業には増税、ミドルクラス以下には支援。日本株も上がる?



3)自動車産業

EVとその部材の生産で世界のリーダーとなる。100万の新規雇用を創出。50万カ所の充電ステーション建設。蓄電池の研究開発支援。

政府、公社が国産EV車を購入する。連邦政府調達で4年間に4000億ドルのアメリカ製品を購入する「バイ・アメリカン」政策では、蓄電池や電気自動車などのクリーンエネルギー製品を中軸に据える。消費者に買替え補助金。

4)建設関連

400万棟の商業ビルの更新と200万軒の住宅の耐気候改修を行い、100万の雇用を創出する。老朽化した公立学校の校舎改修も推進する。

エネルギー効率の高い150万軒の住宅建設に連邦予算を投じる。低所得者用住宅を建設することで人種間の経済格差も縮小させる。

5)農業と環境正義(Environmental Justice)

温暖化や自然災害防止に寄与する農業、自然保護活動を促進する。

「Civilian Climate Corps(気候対策市民部隊)」の創設を通じ、森林管理や植林、湿地帯の回復、用水系統の修復、生物多様性の維持など自然保護のための人材と技術を結集する。また、廃坑となった石油・ガス井、石炭・石材・ウラン鉱山の埋め戻しや再開発を通じ、25万の雇用を創出。有毒物漏出などの環境汚染を防ぐ。

大気や水質など環境面での公平性を重視する。有色人種、低所得者、原住民のコミュニティをはじめ、環境汚染の負担を過分に背負っている地域を連邦政府による対策を通じて正常な状態に戻していく。不利益の大きい地域の判別のため、データによるスクリーニング手法を導入する。

6)労働者

すべての労働者が労組加入権と団体交渉権を持つ。それこそが「良質なミドルクラスの雇用」だと主張する。

またバイデン氏は富裕層、企業への増税を掲げ、ミドルクラス以下への支援を約束しているが、私は長い目でみるとその方が経済にはプラスだと見ている。

日経平均29年来の高値を更新

日経平均株価が終値ベースで1991年11月以来の高値を更新した。米大統領選を通過したことで世界的に株価が急騰、日経平均先物の空売り筋のポジション整理が進んだ。日経平均先物(ラージ)の売買代金は、大統領選直後にそれ以前の倍以上に膨らんだ。

日経平均株価 月足(SBI証券提供)

主な買い手は動きの速いヘッジファンドや商品投資顧問(CTA)などとみられている。レバレッジ型ETFでも品貸し料(逆日歩)が急騰した。

Next: 高値更新は1つの買いシグナル? NTレシオは40年来の高水準へ



NTレシオが40年来の高水準

NTレシオとは日経平均(Nikkei)を東証株価指数(Topix)で割ったものだ。東証をカバーするTOPIXはS&P500のように中長期の投資家が注目し、流動性の高い日経平均先物はヘッジファンドなどが利用することから、NTレシオが上がるのは投機的だとされている。このところ中長期の投資家は日本株を売り続けているので、その意味でもNTレシオが上がってきたと思われる。

また、日銀のETF購入方法が2020年5月以降、各ETFの「時価総額」に応じてから、「市中流通額」に応じてに変わったことも、5月以降のNTレシオの上昇に貢献していると思われる。時価総額ではTOPIX連動型が買われるものの、それらは日銀の買い占めにより流通額が減ってしまっているからだ。

NT倍率 月足(SBI証券提供)

また、この3月のNTレシオの変動率が約30%と、通常の6倍、約10億分の1の確率だったようだ。上記チャートの右側の下髭は、TOPIXの値動きに比べて、日経平均が大きく売り込まれ、また買い戻されたことを示している。

この時期は、まだ日銀がTOPIX連動型を買っていたことに加え、売り込まれるとGPIFなどが万遍なく日本株を買うことができるからだ。日経平均はヘッジファンドが売り込んだ。

いずれにせよ、高値更新は1つの買いシグナルとされている。

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※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2020年11月9日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。信済みバックナンバーもすぐ読めます。

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image by:VP Brothers / Shutterstock.com

相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2020年11月9日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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