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鬼滅の刃マンチョコの転売ヤーは悪くない。不動産投資家から見た正義とは=姫野秀喜

『鬼滅の刃マンチョコ』の転売が批判されています。「なんかイヤ」という気持ちはわかりますが、その批判のほとんどは的外れでしょう。商社もスーパーも、不動産屋だって単なる転売屋です。転売には、規制されるべきものと、個人の自由に任せるべきものがあります。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)

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プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。

経済は「転売」で成り立っている

何気なくYahooニュースを見ていたんですが、女性芸人「3時のヒロイン」の福田さんや立川志らくさんが、テレビで「鬼滅の刃」と「ビックリマンチョコ」のコラボ商品『鬼滅の刃マンチョコ』の転売についてコメントしたみたいで、えらく議論が巻き起こっていました。

まず、前提として私は経済学の徒なので、基本的にマーケットを支持しています。アダムスミスからマルクス、リカードゥ、ケインズ等の古典、新古典派経済学、行動経済学、開発経済学、計量経済学等々、資本主義にせよ共産主義にせよ、経済というものは社会をよりよくするために存在するものです。

今回の「鬼滅の刃マンチョコ」の転売は、本当にプリミティブな貨幣を介在した交換の形だと思います。

このような転売は、今に始まったわけでもなく、商社もスーパーも、不動産屋だって単なる転売屋です。自分で生産したわけではない商品を仕入れてきて、高値で売る。

それが転売として批判されるならマーケットは存在しません。

自分で生産したもの以外に価値がないと思っている人は、農家などの第一次産業に従事している人以外には価値がないと思っているんでしょうかね。

「転売ヤー」に向けられる批判の声

まぁ、ヤフーのコメントの議論を見ていると、商社やスーパーなどは批判していないみたいですが、なぜか転売だけは批判する人が多いんですよね。

批判を大別すると、
「子どもたちが買えない」
「本当に欲しい人が買えない」
「法外な利益をとるのがおかしい」
「税金を払っていない」
「楽して儲けるのはだめ」
といった感じになります。

気持ちはわかりますが、一言でいうと「なんかイヤだからイヤ」って駄々をこねている子どもと同じで、論拠に正当性がないコメントが多かったです。

ちなみに、以前、スルガ銀行の「かぼちゃの馬車」問題の記事が出た時には、コメントの多くは、法外な利益をとっていた業者を批判せず、不勉強とはいえ騙された側の大家さんを批判していましたから、本当に他人が儲かるのがうらやまけしからんのでしょう。まぁ、あれは損した得したというよりも、私文書偽造とかの問題があったから事件になったのですけどね。

批判は的外れ

とりあえず、先ほどの転売に対する批判についてコメントしておきます。

「子どもたちが買えない」のは、あたりまえです。早く大人になって自分で稼ぐようになって買えばいいです。

「本当に欲しい人が買えない」のは、違います。本当に欲しいなら高い金額を出せばいいです。出せないならその程度しか欲しくないということです。

「法外な利益をとるのがおかしい」のは、違います。価格は需要と供給で決まるので、結果として利益が大きくなっただけです。

「税金を払っていない」のは、違います。転売を業としてやっている人は税金を納めていますし、メルカリなどはログが残るので脱税するのは厳しいでしょう。

「楽して儲けるのはだめ」ってのも、違います。楽して儲けられるならすごいです。ただ、転売している人たちはかなり努力していますよ。人気商品の趨勢を見て、なにが次にブレイクするかを先読みしています。当然読みが外れれば損します。

今回の鬼滅の刃マンチョコは、単なる奢侈財(ぜいたく品)ですし、人命にも関わらないため、転売規制は不要です。うん、有閑階級の理論じゃないけど、奢侈財を買う人がいることで経済がより回るっていう話です。

Next: どちらが正義?規制した方が社会がよくなるケースもある



ぜいたく品なら、経済活動をする個人の自由を守る方が正義

ただ、経済学的にも市場を規制したほうが全体として良くなることもあります。

具体的には「市場の失敗」と呼ばれるもので、マーケット(市場)の需要と供給に任せておくと、社会全体として損するという場合には規制をするということも、理論的に説明されています。

マーケットに任せない例としては、コロナの影響下で、マスク転売が規制されたのは記憶に新しいです。『これから「正義」の話をしよう』のサンデル先生も、マスク転売については人命にかかわる点で規制するほうがより正義ではないかと述べていました。

まぁ、たしかに人命と言われれば、マスク転売が規制されることには正義があったと思います。

しかし、ぜいたく品は違います。「鬼滅の刃マンチョコ」などのお菓子は、ぜいたく品ですから、経済活動をする個人の自由を守るほうがより正義に近いと私は考えます。

転売で利益を上げる不動産業者の場合は?

では、不動産のようなぜいたく品でも、経済活動を行う自由を規制したほうが良いことってなんでしょうか?

私は、買った人の人生が破たんするような、不動産については、経済活動を行う自由よりも、規制するほうがより正義ではないかと考えています。

具体的には、価値が5,000万円しかないのに1億円で売りつけるような「かぼちゃの馬車」やら、サブリースで利回りが激低い(6%とか5%とか4%とかw)アパートやマンションや区分等です。

なぜなら不動産は金額が大きくて5,000万円、1億円などの借金を背負うわけですから、キャッシュが回らない物件を買ったら、その人と家族の人生が破たんしてしまうからです。

人生が破たんするような儲からない物件を売ることを規制するのは、「人命にかかわる」という点で、マスク転売を規制することの正義と同じだと思います。

不動産取引は規制されない

まぁ、そうはいっても不動産の取引について規制することはできません。

規制対象としてマスクはわかりやすかったですが、不動産は規制すべきかどうかの判別が難しいからです。この物件は規制対象、この物件はOK、なんてことは見分けられませんから、結局のところ規制されることはないのです。

買う人がいるから、売る人もいるわけで、まぁ仕方ないですよね。

Next: 「鬼滅の刃マンチョコ」を3万円で買っても死なない。しかし不動産は



儲からない不動産物件を転売する罪は重い

「鬼滅の刃マンチョコ」を3万円で購入した人は、後々、ブームが過ぎ去ったあとは、ちょっとした後悔をするだけかもしれません。

しかし、価値が5,000万円しかない物件を1億円で購入してしまい、税引き後キャッシュフローがマイナス100万円、200万円になる物件を買っちゃった人は、後悔だけではすみません。

物件を売ろうにも残債が大幅残るので売れないし、保有してても毎年100万円、200万円がキャッシュアウトしていきます。そしてローン完済の30年後まで会社の給料やボーナスで補てんし続けなくてはなりません。さらに借金を返済できなければ、最悪、自己破産で一家離散なんてことすら起きかねないのです。

そういう観点から見た時に、儲からない不動産物件の転売の罪はとても重いと私は思うのです。

とにかく不動産市場は、常に情報の非対称性があるわけですから、儲からない物件をつかまされないように勉強して臨んでいきましょうね。

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image by:JETACOM AUTOFOCUS / Shutterstock.com

1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』(2020年11月10日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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