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米大統領選に殺されたメディア報道とSNS。検閲の「正当化」繰り返すか=澤田聖陽

米大統領選は「公式には」まだ決着しておらず、年明けまで決まらない可能性もある。確かなのは、前代未聞の選挙で既存大手メディアは完全に死んだことと、自由な議論や情報発信の場であるはずのSNSで検閲が発生する社会になってしまったことだ。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)

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投資に勝つにはまず第一に情報分析。「投資に勝つ」という視点から日常のニュースをどのように読むべきかを、この記事の著者で、元証券会社社長で現在も投資の現場の最前線にいる澤田聖陽氏が解説します。視聴方法はこちらから。

※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年11月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

まだ「公式には」決着していない

アメリカ大統領選挙の結果が出始めています。メディアによって対応は分かれるのですが、旧来の大手メディアはバイデン候補が当選確実という報道を流しています(日本の大手メディアもそれに倣って、バイデン政権誕生を既成事実のように報道しています)。

まだ公式には決まっていないというのが事実なのですが、このメルマガではトランプ大統領の勝ちを予想してお伝えしていたので、その予想が今の時点で外れてしまっていることについてお詫びしたいと思います。正直なところ言いたいことはいっぱいありますが。

現在は、バイデン候補がリードしていて、当選確実の270の選挙人を獲得できる見通しと言われていますが、トランプ大統領が各州で訴訟を起こしているところがあったり、数え直しになっている州もありますので、まだまだ確定できていないという状況です。

なぜこのような状況になったかと言うと、まず根底に郵便投票を大幅に認めてしまったことがあり、一部の州で不自然な票の動きがあったという背景があります。

このような背景があるから、トランプ陣営としては不正であると主張しているのです。

出されぬ敗北宣言、年内には決着しない可能性

たしかにウィスコンシン州やミシガン州で不自然な票の動きがありました。

ウィスコンシン、ミシガンは投票日の集計でずっとトランプ大統領がリードしていたのですが、当日では集計が終了せず、一夜明けたら大量のバイデン票(ウィスコンシンで約12万票、約13万票)が一気にカウントされ、バイデン候補が勝利しました(何度も言いますが、勝利したと書きましたが、数え直しや訴訟が行われているので最終確定ではありません)。

これについては、バイデン陣営は郵便投票が後からカウントされただけで不自然ではないと主張し、トランプ陣営は大量の票が終盤に一気に出てきて、そのほとんどがバイデン票というのは不自然だと主張しています。

また選挙の開票には、それぞれの陣営の選挙監視人が開票作業を監視しなければいけないことになっているのですが、ミシガンでは共和党の選挙監視人が開票作業の場所から追い出されたということも言われています(これについては事実であれば、明らかな違法行為なのですが)。

トランプ大統領が負けを認めれば別ですが、おそらく数え直しや訴訟で、今後1か月ぐらいは勝者が正式に確定できないと考えます。

大統領選挙の仕組みは、過去のメルマガでも説明させて頂いておりますが、今回行われた選挙は選挙人を選出する選挙であり、12月に選挙人集会で選挙人が集まって投票して、正式に270人以上の選挙人を獲得した方が大統領になります。

選挙人集会は、今年は12月14日なのですが、その6日前の12月8日までに各州は選挙人を決める必要があります。

今回訴訟や再集計でそこまでに決められない可能性があります。

議会選出に持ち込みたいトランプ陣営

最終的に1月6日までに結果が確定しないと判断された場合、合衆国憲法修正12条の規定に基づき、来年1月3日に招集される新議会で下院が大統領を、上院が副大統領を選ぶ形になります。

下院での選挙は各州に1票ずつが与えられ、各州で多数派を占める党が票を投じる形になります。

この方式ですと、今のところ共和党が26と過半数を獲ると言われています。(もちろん世論を気にして造反する可能性もあるので、断言はできませんが)。

下院で過半数の26に達する候補がいなければ副大統領(こちらは上院の過半数で選出される)が代行し、副大統領も決まっていなければ下院議長が代行します。

個人的には、不正票を明確に炙り出して今の状態から選挙結果をひっくり返すのはかなり難しいので、おそらくトランプ陣営としては議会での選出に持っていきたいと考えているのではないかと考えています。

今後どうなるかについては、正直なところ分かりません。それぐらい過去に例がない事態です。

Next: 前代未聞の大統領選で大手メディアの信頼は地に落ちた



裏側には無数の思惑

ウィスコンシンやミシガンの票の動きは個人的にもやはり怪しいと思いますし、過去の大統領選挙でも不正はあったと言われています。過去にあった選挙違反は大きな影響があるようなものではなかったのですが、今回は郵便投票が幅広く認められ、過去の選挙とは背景がかなり異なります。

それでもやはり一度投票されてしまった巧妙に仕組まれた不正票を探し出して無効にするのはなかなか難しいと思いますし、おそらくトランプ陣営も難しいのではないかと思っているので、前述のとおり下院での投票選出に持っていきたいと思っているのではないかと思います。

ただトランプ陣営のジュリアーニ氏は、激戦州で数十万票単位の不正票があり、証拠もあるというような発言をしているので、もし真実であればバイデン氏が勝つと言われていた州がトランプ大統領の勝利となる可能性もゼロではありません。

あと共和党側も一枚岩ではなく、トランプ大統領に早く選挙戦から降りてほしいと思っている議員がいるという点も挙げておきます。

今回大統領選挙とは別に、下院と上院の選挙も行われています。まだ結果が固まっていませんが、下院は民主党が過半数を獲りそうですが当初予想よりも共和党が善戦しているという状態で、上院は48議席ずつ民主党と共和党がとり、あと4議席のうち2議席は共和党に決まりそう状態です。

その他の2議席はジョージア州なのですが、どちらの候補も過半数に達しなく、年明けに再選挙になってしまいました。

今回行われた集計では共和党候補が優勢なので、共和党が1議席は少なくとも獲れると思いますが、2議席民主党が獲ってしまうと上院が50:50になってしまい、大統領が民主党系(バイデン氏)だと上院も民主党が過半数ということになってしまいます(俗にいうトリプルブルーというやつです)。

共和党議員の中には、大統領選挙よりも上院で過半数を得ることの方が大事だと考えている人も結構います。

もしかしたら、上院は共和党に譲るから、トランプ大統領を選挙レースから降ろすのに協力してくれと民主党側から投げかけている可能性もあります。

今後、選挙の結果に影響を与えるような事案が出てきたら、すぐにこのメルマガでお知らせします。

大手メディアはもう死んでいる

選挙の行方から離れて、今回の選挙戦で明らかになったことを記載します。

1つ目は、既存のメディアについてですが、今回の選挙戦でテレビ、新聞等の既存大手メディアは個人的には完全に死んだと思っています。

これは選挙があったアメリカだけでなく、日本の大手メディアについても同じことが言えます。

選挙前、大手メディアはそのほとんどがバイデン氏の圧勝を予想していました。結果としては、トランプ大統領がかなり根強い人気で善戦していて、かれらの調査は大きく外れました。

また本来は中立性が求められるメディアがかなり露骨に一方の候補者であるバイデン氏に肩入れするような現象が見られました。トランプ大統領に対しては、これもまた露骨な印象操作を行っているのが見受けられました。

そこにはジャーナリストとしての誇りはまったく感じられませんでした。

彼らの行う世論調査は単なる彼らの自論調査で、自分たちの考えに近づけるために印象操作など手段は選ばないというイメージになってしまいました。

もう誰も大手マスコミの世論調査をそのまま真に受ける人はいなくなるでしょう。

Next: 自由なはずのSNSで検閲が発生。真実が見えなくなった



自由なはずのSNSで検閲が発生

2つ目は、自由な議論や情報発信の場であるはずのSNSで検閲が発生するようになってしまったという点です。

今回の選挙戦でTwitterやFacebookなどのSNS大手は露骨な検閲を行いました。

特にTwitterが注目されましたが、明らかにトランプ大統領側の情報発信を検閲によって制限(ブロック)しているという動きが見られました。

SNS側は、ファクトチェック(真実であるかの確認)ができていないとか理由を付けていましたが、今まで真実確認をできていなくても拡散されているものは星の数ほどあるし、明らかにイデオロギーに基いた偏った拡散制限をしていたと見られているので、かなり問題がある対応だったと思います。

そもそもファクトチェックと言いますが、SNS側にファクトであるかどうか見極める能力があるとは思えません。

ファクトかどうかの判断はSNS側ではなくて、情報を見た利用者側がすればよいのです。

彼らは、自分の意見を反映しない中立公平なプラットフォーマーであるということで、通信品位法230条により投稿される情報の内容についての免責を受けています。

それは彼らが導管(プラットフォーム)であるということが前提で、今回のTwitterの対応の様に特定のイデオロギーにより検閲されるようであれば、それはプラットフォーマーではなく免責の対象にならないということになります。

既存メディアが劣化してジャーナリズムとしての役割を果たせなくなっており、それに代わるネットについても問題があることが露呈しました。

正確な情報を得られない社会になってしまった

正確な情報を国民が入手できるというのは、民主主義の根幹です。

その根幹が崩れようとしているということですので、早急に対応の必要があると考えるのですが、おそらく既存メディアはもう変われないのではないかと考えています。

SNSについては通信品位法230条の運用をより厳しくする等の対応策はあると思いますが、今回の選挙でこれだけ露骨にIT企業が自社サービス内で思想による検閲を入れてきたので、本質的に解決するには大きくなり過ぎたIT企業を分割するとか、もっと新しいサービスが出てきて競争が促進されるということがないと難しいのではないかと思います。

次回のメルマガでは、仮にバイデン政権が発足したらどのようなことが起こるかという点について記載していこうと思います。

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image by:Andrew Cline / Shutterstock.com

元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』(2020年11月10日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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