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アベノミクスは死なず。日経平均は4~5月に底値をつけ上昇を開始する=伊藤智洋

今回は日経平均株価に注目する。理由は、4月中(遅くても5月)に底値をつけて上昇を開始する可能性があるからである。日経平均株価日足、赤と青の実線が今年の予想線だ――有料メルマガ『少額投資家のための売買戦略』創刊を記念して、2016年4月10日号をまるごと無料公開します。

※次回は4月24日配信予定、興味のある方はぜひこの機会に定期購読を!

プロフィール:伊藤智洋(いとうとしひろ)
証券会社、商品先物調査会社のテクニカルアナリストを経て、1996年に投資情報サービス設立。株や商品先物への投資活動を通じて、テクニカル分析の有効性についての記事を執筆。MS-DOS時代からの徹底したデータ分析により、さまざまな投資対象の値動きの本質を暴く。『チャートの救急箱』(投資レーダー社)、『FX・株・先物チャートの新法則[パワートレンド編]』(東洋経済新報社)など著書多数。

2016年の日経平均株価は4月か5月に底値をつけ上昇を開始する

アベノミクスは死んでいない

今年に入ってからの円高、株安は、アベノミクスの失敗ではない。第一の矢である金融緩和の限界が見えてきたことからの修正場面に過ぎない。上がわかったので、いったん下を試すという動きである。

上を見せてしまったのは、年初の人民元安に対して、政府、日銀が積極的な対処を行わなかったことが原因である。人民元安が(金融自由化へ向けた動きとして)米国によって仕掛けられたものであるとするなら、年初からの下落は既定路線だと言える。

日銀は、今年に入り、金融緩和だけではなく、銀行に積極的な業務改善を促すマイナス金利を導入するにいたっているが、まだその成果が出ていない。国内では、マスコミがアベノミクスの失敗だったと騒いでいるが、もっと値動きの本質を探って欲しいものである。すべてが既定路線なら、放っておいても10月頃までには人民元の不安要因が取り除かれているはずである。

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2016年の日経平均株価 日足予想線

予想屋のメルマガなので、毎回、最も注目したいポイントを書いてゆこうと思う。今回は、日経平均株価に注目する。理由は、見出しの通り、4月中(遅くても5月)に底値をつけて上昇を開始する可能性があるからである。図1は、日経平均株価日足、赤と青の実線が今年の予想線である。

図1:日経平均株価日足と予想線

前回のメルマガ(見本として無料配信しているもの)では、日経平均株価の16年のシナリオを、5月に本年の底値をつけて上昇するパターンと、10月に本年の底値をつけて上昇するパターンの2通りとした。

前回の記事は、3月11日の終値を見て書いたものなので、2月12日からの反発調の終点を確認できていなかったが、今回は、2月12日からの反発調が3月14日に終了したことがわかっているので、その分、今後の展開が絞られている。また、値動きの詳細も前回よりも具体的に見えてきている。

多くの方は、「未来はわからないもの」と考えているが、値動きに関していえば、先のことをある程度の範囲で当てることができる

“個人が切り開く未来なら、突然の変化も許容されるが、集団で作る未来は、多数の合意によって形成されるため、大多数が想像できる範囲(過去の値動きや大多数の資金移動の事情)に変化が限定される”からである。

投資市場は「不平等」だからこそ予測可能

だから、価格には動ける範囲や、時期というものがある。

余談になるが、リーマンショックのような急落は、必ず仕掛ける側がいるものだと考えた方がいい。想定以上の急落や、急上昇は、少数の資金力のある側が仕掛けて、多くの市場参加者を乗せることで成立する。

だから、偶然、その年のその時期にあらわれているわけではなく、その年のその時期だからこそ、大多数を乗せられるからあらわれている動きである。

資本主義社会での市場は、特定の側が利益を得られることによって長く存在できる。利益を得られなくなった会社は潰れるのと同じように、利益を得られない市場はなくなってゆく。

投資市場が平等であるなら、大口投資家は誰も参加しないだろう。平等な市場は、すべてがギャンブルになってしまうからである。予測は、利益を得られる側が存在していることを前提にしているからこそ、成り立っている。

長く投資をしている方なら、誰もが価格には動ける範囲や、時期というものがあることを知っている。そのような方は、「年間の動きが強弱、横ばいの3通り(強弱、横ばいのそれぞれに何通りかある)のパターンにわけることができ、一定期間を経過するごとに、そのシナリオが絞られ、予測の精度が高まってゆく」、そういう予測になっているはずである。

これを書くと、今年出した本の予測が間違っているではないかという反論が出てくるだろうが、書籍では詳細な予測記事を書けないので、消費税を来年引き上げる展開を前提にして書いている。

今年のポイント~特別に弱い年

前回のメルマガで書いた通り、今年は特別に弱い年である。予測では、特別な年の値動きを最初に重要度の高いものとして設定することなどできない。

特別に弱い年だと判明した2月以降に描いたシナリオは、昨年末に描いたものよりも精度が高く、2月の反発の終点を確認できた現時点でのシナリオは、前回よりも精度が高いものになっていると考えている。

今年のポイントは、
今年が特別に弱い年
特別に弱い年には政府が株価を押し上げるための政策を実行する
特別に弱い年は、底値をつけた後、翌年まで続く上昇の流れを作る
今年は、すでに年間の変動幅の大部分を下げで消化している
ということである。詳細は、前回のメルマガ(無料サンプル)を読んで欲しい。

現時点でさらに加えられた材料は、
消費税をやめる可能性が高く、それを6月頃に発表する
5月26日から始まる伊勢志摩サミットの前に大規模な財政政策を発表する可能性がある
ということである。

Next: 今年の「弱さ」は経済政策の失敗を意味せず/5月底値の理由とは?



今年の「弱さ」は日本の経済政策の失敗を意味しない

今年の特別な弱さは、人民元安によってあらわれているものであって、日本の経済政策の失敗ではない。

SDR構成通貨入りを目指す10月頃までで人民元安に一定のめどができ、今年の日経平均株価は、放っておいても(消費税さえやめてくれれば)重りがとれて、10月頃から上昇を開始する。

アベノミクスの第一の矢による妥当な値位置は、すでにわかっている。日経平均が18000~20000円程度で、円・ドルが120~125円程度である。

消費税と人民元安という2つの重りがなくなれば、来年前半にはほっておいてもこの値位置へ戻る場面である。6月には、消費税の引き上げという重りを先にはずしてもらうだけでなく、その前に財政政策を発表するのである。

5月までに底値をつける可能性が高い

特別に弱い年の安値が翌年までの底値になるという見方が正しいなら、その底値は、5月までにつける可能性が高い。残された期間は、4月と5月のどちらかである。

前掲図では、10月頃まで、価格がいったん下げる展開を想定しているが、それは、8~10月の期間で人民元のSDR構成通貨入りのスケジュールが見えてくる過程で、人民元の急落場面があらわれる可能性があると見ているからである。

今回のシナリオは、8月頃までの展開が中心であり、8~10月に不安要因を残している。

今年は、4月、5月の安値が底値になると見ているが、10月頃にその安値を下回る動きになる可能性がまったくないとは言えない。あるかどうかは、5月以降の上げ幅を確認しなければわからない。

ただ、10月に一段安となったとしても、年間の変動幅を考慮すれば、一時的にそれまでの安値を下回るだけになると考えられる。価格が下がってくれるなら、今年は、4月(または5月)、10月という2回の絶好の買い場を提供してくれると考えればいいだけである。

Next: 上昇、下降、横ばいの「値動きの違い」から探る今後の展開



上昇、下降、横ばいの値動きの違い~パワー・トレンド理論で探る今後の展開

私のパワー・トレンド理論の考え方を理解してもらうには、大勢の動きの考え方から順番に説明して、小さな値動きへと結びつけてゆく必要がある。

だが、それをまとめた本がわかりづらいとアマゾンの書評に書かれているので、ここでは、ポイントを絞って、今後の展開と合わせて紹介してゆこうと思う。

今回のポイントは、「上昇、下降、横ばいの値動きの違い」である。

株価は少し異なるが、一般的な価格は、激しい変動を好まない。それを扱う業者や消費者にとって、モノの値段がころころ変わってしまうと、将来推計をたてられなくなり、経済が回らなくなってしまう。

だからこそ、価格は、景気や物価の状況に合わせて少しずつ変化するだけで、月間や年間の平均値が大きく動くような展開にならない方がいい。価格は、横ばい(短期的なジグザグがあっても平均値に大きな変動がない)が好ましいのである。

価格は、何十年の動きをならしてしまえば、結果として緩やかにしか動いていない。それにもかかわらず、数年の期間で値幅の大きな動きになっているのは、無理やり作っているからである。

値幅が大きく、日柄の長い上昇、下降の動きは、値幅で利益を得る市場参加者が、いろいろとこじつけて無理やり作っているものである。長期の方向は、より行きやすい方へ作られる

上の表現は、極端だが、これから説明する上昇と下降の違いをわかってもらうために、わかりやすいのではないかという前提を加えたと考えておいて欲しい。

価格を作りやすいのは「上昇」

価格には、その国の状況によって、妥当な水準というものがある。上昇、下降が作られる動きだとするならば、どちらが作りやすいかと言えば、当然、上昇である。

そのとき、その状況で妥当な値段なら、そのものの価格は、そこから無理やり大きく下げようとしてもできない。市場で取引されているものは、十分な需要があるものであり、どんなに下げてもものの値段は、0円にはならない。不当に価格が下がるなら、その好機を業者が見逃すわけはない。

一方で、価格の上昇は、共通の認識、思い込みを作ってしまえば、いくらでも無限に拡大することができる。一定の流れができるときの敵は、個々の利益によって反対方向へ動く側である。

妥当な値段から動く場合、下降には限界があることを誰もが知っているので、下降へ向かう積極的な投資が現れにくいが、上昇は、市場参加者が(作られた幻想)共通の認識を持っている間、そこに限界はないのである。

だから、最初に仕掛けられる積極的な動きは、上昇から始まるのである。積極的な下降があらわれるのは、価格が十分な上昇を経過して、十分な下げ余地ができるときだけである。上昇は、規則正しい動きになりやすいが、下降が不規則になりやすい理由もそこにある。

年初から大きく価格が下げて、1年を通じて下げの流れを作っている、2年も3年も下げ続けている年があるではないかと思うかもしれない。だが、そのような動きをしている年の前を見て欲しい。必ず、数年かけて作られている大幅な上昇局面があるはずである。

Next: 過去15年のデータが示唆する、2016年の「下げ幅の限界」



過去15年のデータが示唆する、2016年の「下げ幅の限界」

今年の下げは、2008年10月から昨年までの上昇があるからこそ現れている動きに過ぎない。今年の下げがアベノミクスの終焉を意味しているわけではない(アベノミクスの終焉は日銀が金融引き締めに入るときに来る)。

したがって、下げ幅にも限界がある。

前回のサンプルのメルマガで、年間の変動幅の目安を書いたが、再度掲載しておく。91年から15年までの期間を見ると、年間の最安値から最高値までの値幅は、

(91~95)
6147円、9707円、5610円、4331円、5728円、
(96~00)
3931円、6422円、4565円、5914円、7651円、
(01~05)
5174円、3884円、3635円、1896円、5675円、
(06~10)
3518円、3631円、8162円、3746円、2612円、
(11~15)
2756円、2195円、5922円、4145円、4360円

となっている。

一定の流れができている場合でも、だいたい4000~6000円幅が目安になる。

今年はすでに4086円幅の下げを経過

今年は、2月12日の安値14865円ですでに4086円幅の下げを経過しているので、14865円から大きく下げる展開を想定して、積極的な下降を仕掛ける動きにはなり難いという見方ができる。

つまり、14865円を目指す動きは、十分に上昇した後の積極的に14865円前後を目指す下げか、底値を確認する作業として14865円前後でうろうろする動きのどちらかということになる。

3月14日以降の下げは、2000円幅以上の値幅の下げ余地があったため、積極的な下げ場面になっている。多くの市場参加者は、下げはじめの段階で、14865円を大きく下回る下げを想定しているわけではないだろう。

今回の積極的な下げが一段落した後、いったん値を戻して、まだ下げたい側が多かったとき、一時的に14865円を大きく下回る程度まで下げることになる。

Next: 政治・経済スケジュールを踏まえた2016年の株価シナリオ



政治・経済スケジュールを踏まえた2016年の株価シナリオ

5月のサミットの前に底値をつける、4月26日、27日にFOMC、4月27日、28日に日銀金融政策決定会合というスケジュールを考慮すると、4月27日頃まで、積極的に下値を試す動きは考えにくい。

FOMC、日銀の政策が嫌気され、4月28日以降に価格が下げるとするなら、4月28日までの間で、14865円を若干割れた地点まで下げるだけで十分な利益を得られる値幅まで値を戻す動きになる可能性がある。

だとすれば、4月中に下げられる期間は、4月11日~20日頃までである。

3月14日以降の下げは、勢いの強い下げ場面が止まったという動きを見せてしまうと、積極的な売りがすぐに離散してしまう状況なので、勢いの強い下げの流れが継続する格好で下げて、底値をつけると考えられる。

以上のことを考慮すると、4月の安値は、8日の安値になるか、11~20日頃までにつけると考えられる。11日の価格が上昇すると、8日の安値に下値堅さが出てくるので、8日の安値が4月の安値になる可能性が大きくなる。

5月に安値をつける展開になるかは、28日以降の動き方を見て判断するしかないが、28日までに17000円程度まで上げていると、その後の価格が下げても、14865円以下になり難いという見方ができる。

シナリオを描く際には、たくさんの要素を考慮しているが、まずは上昇、下降の横ばいの考え方の違いに焦点をあてて書いた。これを知っただけでも、値位置の見方が違ってきたのではないだろうか。


※次回(第3号)は4月24日配信予定です。興味のある方はぜひこの機会に定期購読をお願いいたします。リンク先のページでは第1号(無料サンプル記事)もご覧いただけます。

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少額投資家のための売買戦略』(2016年4月10日号)より

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値動きには理由があります。一般的に言われているような確率や、需給の変化を見るだけでは、先のことなどわかりません。確率論や、統計データ分析をやりつくし、挫折を味わった経験があるからこそ、理解できた値動きの本質を書いてゆきます。

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