マネーボイス メニュー

ついに中国経済に転落の兆候、当局が盛った経済統計でも景気停滞=澤田聖陽

中国経済に減速の兆候が出ています。各種指標が悪化しており、それでも当局がよい方向に取り繕った数字だと考えられます。今後、高い成長率の維持は期待できないでしょう。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)

※毎月第3木曜日19:30よりLIVE配信予定「『投資に勝つ』ための最新ニュース解説
投資に勝つにはまず第一に情報分析。「投資に勝つ」という視点から日常のニュースをどのように読むべきかを、この記事の著者で、元証券会社社長で現在も投資の現場の最前線にいる澤田聖陽氏が解説します。視聴方法はこちらから。

※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年12月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

中国経済が減速している?

中国経済に関する以下の指標が発表されています。

<中国 新築住宅価格>

中国国家統計局が発表したデータに基づきロイターが算出した11月の主要70都市の新築住宅価格は前月から伸びが鈍化した。大都市では引き続き不動産規制が圧迫し、中小の都市では需要鈍化が響いた。

11月は前月比0.1%上昇。新型コロナウイルス感染防止のためのロックダウン措置で市場が冷え込んだ3月以降で最も鈍い伸びとなった。前年比では4.0%上昇で、2016年2月以来の低い伸び率を記録した。10月は前月比0.2%上昇、前年比4.3%上昇だった。

出典:中国新築住宅価格、11月は前月比+0.1% 3月以来の低い伸び – Reuters(2020年12月14日配信)

<中国 消費者物価>

中国国家統計局が9日発表した11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.5%低下し、2009年10月以来の前年水準割れとなった。ブルームバーグのエコノミスト調査中央値では横ばいが見込まれていた。10月は0.5%上昇だった。

出典:中国の消費者物価、11月は約11年ぶりの下落-豚肉値下がり響く – Bloomberg(2020年12月9日配信)

中国国家統計局の発表する数値は信頼性が低く、よって上記の2つのニュースについても、もう少し深読みすることが大事だと考えています。

統計は鵜呑みにできない

まず中国新築住宅価格、11月は前月比+0.1%という数字ですが、かろうじてプラスにしているのは、おそらく結論ありきの操作ではないかと推察しています。

実際は、マイナスに転じていると考えています。

労働者の給与(社会保障を含めた報酬総額)が伸び悩んでいる(実際は減少しているということだと認識しています)というニュースが報じられており、労働者の給与が減少しているのに新築住宅販売が伸びるはずがありません。

私の知人からの情報ですと、北京郊外のマンションは最高値からはすでにかなり下落しており、販売現場で2割程度まで値引きするのは当たり前になっていると言っていました。

おそらくそのような悪い状況が露呈してくるには、まだ少し時間がかかると思います。

中国政府は行けるところまで粉飾し続けるでしょうが、いつまでも隠し続けられるものでもありません。

Next: 中国にデフレの兆候。「中産国の罠」で経済減速



デフレの兆候があることは確実

次にCPIがマイナスに転じた件ですが、主因はアフリカ豚熱によって豚肉価格が高騰していたものが下落に転じた為(豚肉価格の下落だけでCPIが0.6ポイント押し下げたと発表)で、統計局の発表では「食品以外の価格は安定している」という趣旨の会見を行っています。

しかし、食品を除いた指数も0.1%低下しており、デフレの兆候があることは確かです。

何度も言いますが、中国の国家統計局の発表について、悪い数字はマイルドに加工されていると考えた方が良いので、実際はもっとCPIは下がっているのではないかと考えています。

中国政府は、2021〜2025年の5ヵ年計画で、内需の拡大による成長を掲げていますが、足元は厳しい状況になっていると考えるのが妥当だと思います。

「中産国の罠」で経済減速

「中産国の罠」という言葉があります。

新興国が低賃金の労働力等を背景として飛躍的に経済成長を遂げ、中所得国(1人当たりGDPが3,000ドルから10,000ドル)に達するも、人件費上昇によって工業品の輸出競争力が失われて成長が鈍化する傾向を形容した言葉です。

中国の1人当たりGDPは10,000ドルを少し超えたところです(あくまで中国の公式発表のGDPを元にということですが)。

中国の人件費が高騰してきているのはかなり前から言われており、徐々に世界の工場としての魅力が薄れてきています。

中国は「歪な大国」

私は、このところ中国という国は「歪な大国」だという話をしています。

中国のGDPは正確な数字ではないと考えていますが、それでも大国には変わりません。

日本では、「中国凄い論」と「中国凄くない論」ばかりが目立ちますが、中国は凄いところと凄くないところが混在している「歪な大国」なのです。

AIなどの先端技術の一部は確かに世界最先端の部分があり、「凄い」部分です。またベンチャーも凄い規模のベンチャー企業があり、こちらも「凄い」部分だとは思います。

一方、アメリカや日本の様に多くの労働者を雇用できるような成熟した産業基盤は弱く、多くの労働者は安いから中国で生産しているという工場等で働いています。これは「凄くない」部分です。

もちろん全て二元論で語れるものではないのですが、マクロ的にはそういう傾向があるのではないかということです。

基礎部分が弱く、表面がとても綺麗な家のようなものではないかと思います。

Next: 中国経済は脆弱、成長率の維持は期待できない



「中産国の罠」からは逃れられない

よってかなり経済的には脆弱な部分があると考えており、今までは(1人当たりGDP1万ドルレベルまでは)順調に伸びてきましたが、やはり「中産国の罠」には陥るだろうと見ています。

人口がとてつもなく多く、魅力的な市場であることは間違いないので、今後もある程度の外需は期待できますが、地政学的なリスクが高いこともコロナで認識されてしまい、高い成長率を達成することは困難になっていると考えます(むしろ直近で国有企業のデフォルトが頻発するなど、経済崩壊のリスクがかなりあると考えています)。

続きはご購読ください。初月無料です

【関連】レナウン、コロナ倒産ではない? 中国企業との取引に潜むリスクと、破綻の真相=澤田聖陽

<初月無料購読ですぐ読める! 12月配信済みバックナンバー>

※2020年12月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2020年12月配信分
  • Vol.053 「中国経済に異変? 各種指標で経済停滞の兆し」「東京都、新車販売2030年にすべて電動車に」(12/15)
  • Vol.052 「ドコモが月額2980円プラン「アハモ」を発表」「新型コロナウイルス感染拡大の経済対策、事業規模73兆円」(12/8)
  • Vol.051 「アメリカ大統領選挙関連今週の動き」「内閣支持率58%に低下、コロナ対策は低評価(日経調査)」「「(12/1)

いますぐ初月無料購読!


※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2020年12月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

2020年11月配信分
  • Vol.050 「アメリカ大統領選挙今週の動き」「中国企業の社債のデフォルト続出 中国経済は大丈夫か?」(11/24)
  • Vol.049 「アメリカ大統領選挙で今起こっている事 バイデン政権になったらどうなるのか?」他(11/17)
  • Vol.048 「アメリカ大統領選挙 現時点での総括と今後の見通し」(11/10)

2020年11月のバックナンバーを購入する

2020年10月配信分
  • Vol.047 「菅総理、所信表明演説で2050年に国内の温室効果ガス排出実質ゼロを宣言」他(10/27)
  • Vol.046「ハンター・バイデン氏のスキャンダルをTwitter、Facebookが検閲?」他(10/20)
  • Vol.045「米最高裁人事の公聴会開始」「米議会下院司法委員会の巨大IT企業に対する反トラスト法調査報告書について」(10/13)
  • Vol.044 米大統領選挙、候補者ディベート前後で現在の状況とディベートの結果を解説します(後編)+トランプ、コロナ罹患(10/6)

2020年10月のバックナンバーを購入する

2020年9月配信分
  • Vol.043 (2週連続特集) 米大統領選挙、候補者ディベート前後で現在の状況とディベートの結果を解説します(前編)(9/29)
  • Vol.042 「ドコモ口座で不正利用が発覚」「エヌビディア SBGからアームを約4.2兆円で買収」(9/15)
  • Vol.041「菅新総理候補の政策について」「ソフトバンクG、株式デリバティブで約40億ドルの含み益」(9/8)
  • Vol.040 「不動産はこれからどう動くか?(二週連載企画 後編)」(9/1)

2020年9月のバックナンバーを購入する

2020年8月配信分
  • Vol.039 「不動産はこれからどう動くか?(前編)」(8/25)
  • Vol.038「2020年4~6月期の日本のGDP速報値 年率換算27.8%減」他(8/18)
  • Vol.037「トランプ大統領、大統領令でTikTokとWeChatの取引を禁止」他(8/11)
  • Vol.036「TikTok(バイトダンス)のアメリカ事業の禁止及びマイクロソフトへの売却について」(8/4)

2020年8月のバックナンバーを購入する

2020年7月配信分
  • Vol.035 ドラマ「半沢直樹」を観て 日本の金融システムの何が問題なのか?(後編)他(7/28)
  • Vol.034 ドラマ「半沢直樹」を観て 日本の金融システムの何が問題なのか?(前編)(7/21)
  • Vol.033「ファミリーマート伊藤忠商事の完全子会社に」「自社株買い 強まる潮流」(7/14)
  • Vol.032 (2回連載企画)アメリカ大統領選挙の仕組みを徹底解説及び予想(後編)他(7/7)

2020年7月のバックナンバーを購入する

2020年6月配信分
  • Vol.031(2回連載企画)アメリカ大統領選挙の仕組みを徹底解説及び予想(前編)他(6/30)
  • Vol.030 (5回連載企画)緊急事態宣言解除後の世界 第5回「分断された世界 貧富の差の拡大」他(6/23)
  • Vol.029 「コロナ後の世界情勢 米中激突 5G時代 半導体の行方」他(6/16)
  • Vol.028 緊急事態宣言解除後の世界 第3回「DXは人間の幸福度を上げるのか?」他(6/9)
  • Vol.027(5回連載企画)緊急事態宣言解除後の世界 第2回「働き方の変化」他(6/2)

2020年6月のバックナンバーを購入する

2020年5月配信分
  • Vol.026 (5回連載企画)緊急事態宣言解除後の世界 第1回 「7割経済」他(5/26)
  • Vol.025 「レナウン、民事再生手続き開始 その真相は?」「ソフトバンクグループ、2020年3月期連結決算について」(5/19)
  • Vol.024 「緊急事態宣言解除後、どうなるか?」(5/12)

2020年5月のバックナンバーを購入する

2020年4月配信分
  • Vol.023(号外)緊急事態宣言延長へ 1カ月前後延ばす見通し(4月30日)(4/30)
  • Vol.022 「(数字で検証)インバウンド消費の正体」「貸倒引当金、判断柔軟に 会計士協会、銀行監査で方針」他(4/28)
  • Vol.021 (資金繰り考察)資金繰り余力、各種指標の見方 他(4/21)
  • Vol.020 「(デジャヴ)1600億年に一度の発生確率」他(4/14)
  • Vol.019 「日本政府による事業総額108兆円(財政支出39兆円)の緊急経済対策について」他(4/7)
  • Vol.018(号外)「6日にも緊急事態宣言の準備入り表明見通し」(4/6)

2020年4月のバックナンバーを購入する

2020年3月配信分
  • Vol.017「東京ロックダウン(都市封鎖)について」「東芝機械、買収防衛策を可決 村上氏側TOB撤回」(3/31)
  • Vol.016 「コロナウイルスショックの影響と各国の対応まとめ(3月23日現在)」「ボーイングの危機について」他(3/24)
  • Vol.015〈徹底解説〉コロナウイルスショックと今後の経済、マーケットへの影響(3/17)
  • Vol.014「コロナウイルスの影響、今週の動き、所感」「アメリカ大統領選まとめ スーパー・チューズデーの結果及び分析」他(3/10)
  • Vol.013「コロナウイルスショック、今後の影響を徹底的に解説・予想」「アメリカ大統領選挙、民主党予備選について」(3/3)

いますぐ初月無料購読!

2020年2月配信分
  • Vol.012「2019年10~12月期のGDP、5四半世紀ぶりマイナスに」「モルガン・スタンレー、Eトレード買収他」(2/25)
  • Vol.011「ソフトバンクグループ、10~12月期連結決算発表等解説」「民主党ニューハンプシャー州予備選について」(2/18)
  • 2月11日発送分の修正版の発送及びお詫び(2/12)
  • Vol.010「民主アイオワ州党員集会について」「公取委、楽天に立ち入り検査」等(2/11)
  • Vol.009「新型コロナウイルスの感染拡大について」「ブラックストーン・グループによる国内最大の不動産投資について」等(2/4)

2020年2月のバックナンバーを購入する

【関連】10万円給付金は「パーッと使う」が大正解!ただし消費税おまえはダメだ=澤田聖陽

【関連】ホテル業界「完全終了」へのカウントダウン。稼働30%割れ 買い手消滅で窮地=澤田聖陽

image by:Alessia Pierdomenico / Shutterstock.com

元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』(2020年12月15日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」

[月額880円(税込) 毎週火曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
投資に勝つにはまず第一に情報分析。「投資に勝つ」という視点から日常のニュースをどのように読むべきか。元証券会社社長で、現在も投資の現場の最前線にいる筆者の視点で解説します。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。