米国の「都合のいい正義」を抹殺した、プーチンの正論すぎる演説

2015.10.15
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プーチンの米国一極主義への批判

さて、どちらが正しいか。

もちろんプーチンは、米国(と国名を出さずに)による経済制裁の乱用とTPPの一方性・秘密性だけを批判したわけではない。上の引用の前半部分に続いて、プーチンはシリアをはじめ中東・北アフリカ惨憺たる有様を作りだしたのは米国による「民主主義輸出」であり、ウクライナ内乱もまた同じだと、厳しく非難することに多くの時間を割いている。要点は次の通りである。

▼我々はみな意見が違うが、その違いを尊重すべきだ。旧ソ連の歴史を思い起こせば、「社会実験」の輸出、イデオロギー的選好に基づいて他国内に変化を起こそうとする試みは、悲劇的な結果をもたらした。ところが、そういう他国の過ちから学ぼうとせずにそれを何度も繰り返す人がいる。今回は「民主主義」革命の輸出だ。

▼しかしそれでどうなったか。改革どころではなく、外国の攻撃的な介入で国家機構とライフスタイルが粉々に破壊されただけだ。民主主義や進歩の勝利の代わりに、暴力貧困社会的惨事が引き起こされただけだ。生存権を含む基本的人権など一顧だにされなかった。私は、この状況を作り出した人たちに問いたい、諸君は何をしでかしたか今は理解しているのか、と。誰も答えられないだろう。自己過信基づく政策と、自分だけが例外免責されているという信念は、いまだに放棄されていない。

▼中東・北アフリカのいくつかの国で作り出された権力の空白が無政府地域を生み、そこに過激派やテロリストが入り込んだ。いわゆる「イスラム国」の何万人もの戦闘員には、2003年のイラク侵攻のあと街頭に放り出された元イラク軍の要員が含まれている。73年の国連安保理決議に全面的に違反するNATOの爆撃で国家体制を破壊されたリビアからも多くがリクルートされている。そして現在はシリアのいわゆる「穏健な」反体制派が、西側支援武器を与えられ訓練を施された上、イスラム国に亡命している。状況は危険という水準を超えている。

▼ロシアは、いかなるテロリズムにも反対する一貫した立場から、イラクとシリアに軍事的・技術的援助を行っている。テロリズムと真正面から戦っているシリア政府およびシリア軍との協力を拒むのは、大きな誤りである。アサド大統領の軍隊とクルド族民兵以外に、イスラム国やその他のシリア国内のテロリスト組織と本当に戦える者はいないことを認めなければならない。

▼こうした我々のアプローチを「ロシアの野望」と非難する向きもあるが、そんなことではなくて、現在の事態は世界にとってもはや耐えられないものとなっているという事実の認識を共有すべきである。我々は、反ヒトラー連合同様の真に広範な反テロリスト連合を創出しなければならない。

▼ところが、冷戦時代のブロック思考が今も罷り通っていて、NATOを拡大し、旧ソ連傘下の国に対して「西側につくのか、東側につくのか」選択を迫るといった誤った政策が行われている。ウクライナで起きたのはまさにそれで、人々の政権に対する不満を利用して外部から軍事クーデターを組織し、その結果、内戦が引き起こされた。ウクライナ問題は脅迫や武力では解決せず、15年2月のミンスク合意全面的実行によって流血を終わらせ、デッドロック状態から脱出させなければならない。

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

 

 『高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋

著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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