なぜ隣の部屋に外国人旅行者が?「マンションの民泊問題」が深刻化

 

で、マンションにおける民泊問題に対する今の整理は…まず、たとえ国家戦略特区であっても、自治体が条例を定めることが、旅館業法緩和の条件だということ。

現在、条例が定められているのは大阪府のみ。年内に大田区が第二号の条例制定を目指している状況です。大阪府の条例では、7日以上利用することが前提で、滞在者の名簿や旅券確認が義務化されています。立ち入り調査も可能で、問題があれば認定を取り消されることもあります。

ということで、たとえ条例に沿った合法的な「民泊」であったとしても、これは「旅館業法」に基づく「業」です。

ということは、管理規約に、専有部分の用法として、区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない(標準管理規約でいうと第12条)という条項があれば、「業」としての民泊は、これに反するので、それだけで規約違反だと言えます。フォーラムで弁護士の篠原みち子先生からもそのようなお話がありました。

それでも、具体的に禁止する条項があった方が、抑止効果があることは確かなので、民泊の事例が出ないうちに民泊禁止の条項を入れた方がいい。

逆に、もともと住宅以外の使用を認めているマンションは、どこまで認めるのか、認めないのか、認める場合に守らなければならないは何かをしっかり検討する必要があると言うことです。

大阪のマンション管理関係の弁護士さんと話をしましたが、7日以上という条件は、実際の需要と合わないが、いろいろ抜け道をつくって短期宿泊もやるだろう。で実際は、認定を受けないで、やる人も後を絶たないだろうね。空き室があって困っている一方で、こんなに宿泊施設が足りないんだから…。

じゃあ、行政が、それをしっかり取り締まるかと言うと…。

国のインバウンド政策との関係で、先日の京都の摘発事例のように、よほど悪質でないと積極的には摘発しにくいだろうから、マンションで自衛するしかないだろうね…と。

とりあえず、民泊を阻止したい管理組合の対応としては、

  1. 住宅以外の使用を求めていない規約があれば、民泊は規約違反だから、堂々と他の規約違反と同じに扱っていい。
  2. 民泊禁止の規約を具体的に定めることは抑止効果として有効だから、まだ事例がないうちに定めた方がいい。
  3. 何かおかしい状況があったら、実態をできるだけ早く確認して規約違反を伝えてやめてもらう努力をしていくことが必要。

ということでしょうか。でも、これは、楽観できない…と大阪の話を聞いて感じています。

そして、19日には、政府の規制改革会議が、自宅やマンションの空き部屋に旅行客等を泊める「民泊」に関して、旅館業法よりも緩やかな新ルールの検討を始めました。

安倍政権のインバウンド政策、10兆円の新産業としての大きな期待に、住まいとしてのマンションが飲み込まれないといいのですが…。

image by: Shutterstock

 

まんしょんオタクのマンションこぼれ話
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