【書評】地獄のシナリオ。日本の賃金は中国に近づき、産業はギリシャ化する

 

詳細は本文に譲りますが、ざっとポイントを見て行きましょう。

より基本的な原因は、アメリカの金融正常化によって投機資金が資源や新興国から引き揚げられていることだ。過去10年程度の期間にわたって続いた「投機の時代」が、ようやく終了しつつあるのだ

優れたレコメンデーション・システムを構築した供給者は、市場を独占するかもしれない

人々は、アルゴリズムに発明や創造はできないと考えている。しかし、「こうした考えは危険な思い込みであることが明らかになりつつある」とスタイナーは警告する

100年も前に作られた法律は、「人々のための法律」と「ビジネスのための法律」を区別している。しかし、「人々がビジネスになってしまったら、どうするのか?」

重要なのはビットコインそのものではなく、ブロックチェーン技術であり、それを用いてスマートコントラクトを自動的に遂行していくことである

日本的発想との関係で問題となる第2点は、集中と分散にかかわるものだ。スケールの大きいIoTは、中央集権的で信頼できる中間者を必要とするシステムではうまく運用できず、分散し、信頼を必要としない参加者によるシステムが必要だ

最も重要なのは、(アメリカでは)日本の統計分類にはない「専門的、対ビジネスサービス」の値が製造業より高くなっており、しかもリーマンショックの影響をあまり受けず、現在まで伸び続けていることだ。2014年の値を07年と比べると、国内産業全体では国民所得は22.6%増加している。製造業は増加しているものの、増加率は17.9%増と、国内産業全体を下回る。これに対して、「金融・保健・不動産・賃貸」は、29.2%というかなり高い伸びだ。「専門的、対ビジネスサービス」の増加率は28.1%であり、非常に高い

アメリカの成長産業である高度サービス産業は、さまざまな面で従来の産業とは異質である。それを示す一つの指標が、自営業者の多さである。雇用者数に対する自営業者数の比率を見ると、製造業では2.3%にすぎないが、「金融・保険・不動産・賃貸」では11.6%である。さらに、「専門的、科学技術的サービス」では、26.3%にもなる。アメリカ経済は、組織が経済活動の中心で、人々が大組織の中で仕事をする社会から、「自営業の時代」に移りつつある

製造業なのに工場を持たないファブレス企業が誕生した(中略)その典型がアップルである。同社の製品は、アジアを中心とする世界各国で生産される。アメリカはそれらを輸入するので、ドル高のほうが望ましいのだ

サービスにおいても国際間の取引がなされるようになった(中略)アメリカ企業のコールセンターはインドにある場合が多い。アメリカはそうしたサービスを輸入する立場にある。したがって、ここでもドルが高いほうが望ましい

これからの日本経済課題がびっしり書き込まれており、政策担当者には、ぜひ読んでいただきたい内容です。

一方で、政府がどう出ようとも稼ごうと思うビジネスパーソンにとっては、起業のチャンスが見える、そんな内容となっています。

問題の本質がわかれば、打ち手は見える。

起業家マインドのある方なら、ぜひ読んでおきたい一冊です。

image by: Shutterstock

 

『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』

著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。

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