街が消える。北京で最悪レベルの大気汚染、日本のPM2.5汚染状況は?

2015.12.06
by Mocosuku
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中国・北京で微小粒子状物質PM2.5による大気汚染が悪化し、今月初めには「街が消える」ほどのスモッグが発生したことが報じられています。この秋、北京では9月3日におこなわれた軍事パレードにあわせて、周囲の工場の操業を停止したり、交通制限をするなどの対策が講じられ、一時的に大気汚染のレベルは低下していました。しかし、人々が暖房器具を使う冬になると状況が一変、11月30日にはPM2.5を含む汚染指数は最悪レベルの「危険」(301~500)を上回る560となり、翌日には600前後の数値を示したとのことです。空に壁はありませんから、隣国日本における汚染状況は大丈夫なのでしょうか。

深刻な汚染を示す「オレンジ警報」発令

中国では暖房の際に石炭やわらが燃やされることが多く、今年2月にインターネット上で話題となった中国のPM2.5汚染についてのドキュメンタリー『穹頂之下』においても「質の悪い石炭の大量消費」が大気汚染の一因となっていることが指摘されていました。

北京では、今月2日の午前0時に深刻な大気汚染を示す「オレンジ警報」は解除されたとのことですが、中国では法で定められた環境対策をおこなっていない企業が多いことも確認されており、根本的な解決に向けての動きが待たれているところです。

タバコの煙もPM2.5

一方、日本国内に目を移すと、PM2.5の国内での発生率は減少しているものの、ここ数年は中国からの飛来物質による大気汚染の悪化が懸念される状況が続いています。

また、PM2.5といえば、日本では、タバコを吸う人の周囲にいる人が、タバコの煙を吸いこんでしまう「受動喫煙」による健康被害が問題となっています。タバコとPM2.5は一見関係がないように思われますが、実はタバコの煙も典型的なPM2.5なのです。

PM2.5はその名のとおり、大気中に浮遊する物質のうち、粒の大きさが2.5µm(マイクロメートル)以下の非常に小さな粒子のことで、肺の奥深くまで入り込みやすいため、PM2.5の濃度が高い地域では、呼吸器・循環器疾患による死亡率が上昇することがわかっています。

また、PM2.5の濃度が問題となるのはこうした地域性だけではありません。公共施設など屋内での受動喫煙対策が欧米に比べて遅れている日本においては、飲食店などで、タバコの煙によるPM2.5濃度が高い数値を示すことにも注意しなければなりません。

ちなみに、日本禁煙学会の資料によると、禁煙・分煙・自由喫煙別の屋内におけるPM2.5濃度では、喫煙家庭が「弱者に危険」、自由喫煙のパチンコ店が「危険」、ファストフード店の喫煙席や居酒屋、喫煙中のタクシー内などは「緊急事態」レベルの数値を示したことが報告されています(米国環境局基準分類値による)。

通常のマスクでは防げない

上記のとおり、PM2.5は極めて細かい物質のため、通常のマスクでは防ぐことができず、医療用の「N95マスク」や、防じん用の「DS2マスク」でなければ着用してもあまり効果がありません。そのため、PM2.5による汚染のひどいときは、環境省の大気汚染監視システムである「そらまめ君」などを参考に、外出や外に洗濯物を干すことを控えるといった対策が必要になります。

また、タバコから出るPM2.5による健康被害を防ぐために、喫煙者以外の人は禁煙や分煙のお店を選ぶことも大切。特に子どもがいっしょの場合は、自由喫煙のお店や喫煙席、喫煙スペースなどには近づけないようにすることが大切といえるでしょう。

※N95は米国労働安全衛生研究所(NIOSH)が定めた規格で、DS2は日本の厚生労働省が定めた規格です。いずれも、空気中の感染源からの呼吸器感染のリスク軽減を目的として設計、開発されたマスクで、おもに医療、工業など労働作業現場で使われています。在中国日本大使館では、北京市など大気汚染のひどい地域を訪問する際には、N95マスクの装着を推奨しています。

<参考>

最悪レベルの中国大気汚染 原因は石炭やわらの燃焼 Record China

PM2.5と受動喫煙 厚生労働省

環境省大気汚染物質広域監視システム そらまめ君

PM2.5による大気汚染のドキュメンタリーが中国で大反響 Mocosuku

 

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記事提供:Mocosuku

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