多極主義と中国への期待
さて、ソロスは、「多極主義者」。「多極主義者」なのに、その運動のリーダーである「ロシア」が嫌い。では、「多極主義」、もう1つのリーダー「中国」についてはどうなのでしょうか?
これ、つい最近まで、「きわめて肯定的」だったのです。
06年に出版された、「世界秩序の崩壊 『自分さえよければ社会』への警鐘/ジョージ・ソロス」には、以下のように記されています。
ところが、ここに、皮肉にも愚かな事態が起きた。
近隣の大国・中国が基本的に多極主義を受け入れ始めた矢先、アメリカ合衆国が正反対な方向へと動き、国際的な諸制度への疑念を強め、最近の国家安全保障面での難題に対して大幅に一極主義的な治療策を遂行したのである。
ここでソロスがいっているのは、
「多極主義を受け入れた中国は賢明だ」
「一極主義のアメリカブッシュ政権は愚かだ」
ということです。つまり、彼の頭の中では、06年の時点で、
「アメリカ、ブッシュ政権はバカ」
「中国は、賢明」
という構図になっていた。さらにソロスは、いいます。
日本は、この両国の板挟みになった。
かたや最大のパトロンかつ保護国ながら、昨今益々世界の多くの国々との折り合いが悪くなってきたアメリカ。
かたやその経済的繁栄を持続させ確保すべく国際的システムにおいて安定と現状維持を志向しつつある中国。
どうですか、これ???
かたやその経済的繁栄を持続させ確保すべく国際的システムにおいて安定と現状維持を志向しつつある中国。
ソロスさん、中国については、「最高評価」といってもいいでしょう。
・ソロスは、アメリカブッシュ政権が嫌い
・中国が好き
こういう思考を持っているところ、アメリカでは「住宅バブル」が崩壊した。07年、「サブプライム問題」が顕在化してきた。そして、彼は08年1月、リーマンショックが起こる8か月前に、決定的宣言をします。
「現在の危機は、ドルを国際通貨とする時代の終えんを意味する。ワシントン・コンセンサスではなく、新しい保安官が必要だ」と述べた。
(ジョージ・ソロス ロイター1月24日)
この時点でソロスは、「アメリカの時代は終わってもいい。俺たちは、中国と共に繁栄していける!」と考えていたのでしょう。2010年11月、彼はこんなことを言っています。
アメリカから中国への、パワーと影響力の本当に驚くべき、急速な遷移があり、それはちょうど第2次世界大戦後の英国の衰退とアメリカへの覇権の移行に喩えられる
今日、中国は活発な経済のみならず、実際に、アメリカよりもより機能的な政府を持っているという議論を呼ぶであろう
ここまで読まれて、陰謀論好きの人は、思い出すことがあるでしょう。そう、
世界を支配しているのは、「国際金融資本」である。
「国際金融資本」は、国境を超越しているので、別にアメリカが覇権国家でなくてもかまわない。
国際金融資本は、中国を「次の覇権国家」にしようと決意している
という話。ソロスの言動を見ていくと、この説があながち「トンデモ」ではないことが見えてくるのです。ところが…。