政治家で「国民」ではなく「人類」を連呼する演説は信じるな

 

義務よりも善行を優先すると、国が亡びることがある

なぜ私は、こんなことを長々と書いているのでしょうか? 「日本よりも、近隣諸国のこと世界のことを優先させる政治家がいたら、「ヤバいかも」と思った方がいい。つまり、「国益」よりも、「世界益」「人類益を語る政治家には注意した方がいい。

もちろん、それは「国益を得るために、ドンドン強気でいけ!」というのとは違います。これをやると国際社会で孤立して、「また敗戦」ということになりますから。

国益を追求するにしても、他国の利益とすり合わせてWIN-WIN状態にもっていく必要がある。しかし、国益よりも、人類益、世界益を優先させる政治家が国のトップになると、「いいことない」というのが、歴史の教訓なのです。

2つ例をあげます。1つは、ソ連最初で最後の大統領ゴルバチョフさん。この人は、アメリカ、西欧との和解を本気で推進し、「冷戦を終わらせた人」です。日本や、欧米にとっては、「恩人中の恩人」といえるでしょう。

しかし、ロシアでは、まったく人気がありません。理由は、ロシア人の立場に立てばわかりますね。ゴルバチョフは、15共和国からなるソ連という国を「崩壊させた人」だからです。ロシアは、東欧、コーカサス、中央アジアに位置する14共和国を失いました。経済はボロボロになり、国民は、年2,600%のインフレに苦しむことになった。

ゴルバチョフさんの行動は、確かに人類全体にとってはよいことでしたが、ロシア人の生活を破壊しつくしたのです。国益よりも世界益、人類益を追求するとこんな結果になります。

もう1つの例は、ドイツのメルケルさんです。メルケルさんのドイツは去年、「100万人」(!)の難民を受け入れました。これは、ありえないほどの「善行」です。しかし、その結果、「1日1,000件の痴漢、強盗」という驚愕の事態が起こった。

独、15年大みそかの性犯罪は全国規模 16州中12州で発生

AFP=時事 1月24日(日)10時52分配信

 

【AFP=時事】ドイツの警察は、2015年12月31日に同国西部の都市ケルン(Cologne)で大規模に発生した性犯罪や強盗事件と同様の事件が、ドイツの全16州のうち12州で発生していたと発表した。現地メディアが23日伝えた。

 

レイプ犯が外出先のビアホールから逃走、独ケルン

 

昨年の大みそかの夜、新年を迎えようと大勢の人々でにぎわっていたケルン中央駅付近で、数百人の女性が主に北アフリカ系の容疑者から痴漢や強盗などの被害を受けた。

 

独紙・南ドイツ新聞(Sueddeutsche Zeitung)などのドイツの報道機関がドイツ連邦刑事庁(BKA)の報告を引用して伝えたところによると、同様の事件は同国16州のうち12州で発生していたという。

 

南ドイツ新聞は同紙のウェブサイトに掲載した記事で、「一部で強盗事件も伴った性暴力は、われわれがこれまでに考えていたよりも大規模である」と述べ、各州が異なる度合いで事件の影響を受けたと付け加えた。

 

最大の影響を受けたのはケルンがあるノルトライン・ウェストファーレン(North Rhine-Westphalia)州で、約1,000件の被害届が提出され、次いでハンブルク(Hamburg)州の約200件が続いた。

これも、国益よりも人類益、世界益を重視した結果です。メルケルさんも、今決意して難民流入を止めなければ、「欧州キリスト教文明を崩壊させるきっかけをつくった首相」として、歴史に悪名を残すことになるでしょう(難民問題は、「彼らが祖国に戻ってもきちんと暮らせるよう」「内戦終結支援」「経済復興支援」をするべきです)。

読者さんの質問から、話がひろがってしまいましたが、私が言いたいことは、「国益を主張する政治家と世界益、人類益を主張する政治家」がいたら、迷うことなく「国益を主張する政治家を選びましょう」ということ。

その次の段階は、「この政治家は、他国と不要な摩擦を起こすことなく、国益を達成することができるだろうか?」と問うことです。

そういえば日本にも少し前に、国益よりも世界益、人類益を優先させる総理がいました。わずか1年の間に、日本とアメリカの関係はボロボロになり、日本政府と沖縄の関係もメチャクチャになりました。

「義務よりも善行を」
「国益よりも人類益世界益を

優先させると、短期間で国はボロボロになるといういい例でですね。

image by: Wikimedia Commons

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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