もはや三国志の世界。「中東問題」で米・中・露が覇権争いを激化

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未だ出口の見えない中東情勢、そしていよいよ現実味を帯びてきた中国バブルの崩壊。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、世界の覇権を握りたい米ロ中の3カ国がこれらを利用し、互いに他の2国が潰し合うのを待ち望んでいると分析、さらに「当分の間、戦争が世界の問題解決の手段になる」と記しています。

中東戦争と米国の対応

シリア内戦の停戦と和平協議が開始したが、1週間以内に敵対行為中止を目指すとともに、包囲された都市への迅速な人道支援を確保することで合意が成立したが、全面停戦の保証とロシアによる空爆の停止については合意に至らなかった。というようにシリアのアサド政権に有利な条件しか確保できていない。

そして、アサド大統領はISを始めとするテロリストから、シリア全土を解放するつもりだという。

このため、トルコのエルドアン大統領は激怒している。よって、トルコがシリアに侵入する可能性が出てきたし、サウジもシリアに派兵すると言っている。アサド政権がアレッポに迫り、支援している反政府勢力が危機にあるためで、米国の支援を受けて派兵したいようである。

しかし、米国は特殊部隊をイラクには派兵してもシリアには派兵しない。このため、反政府勢力指導者は欧米が裏切ったとBBCに言うことになる。

中東情勢の混乱に対して、米国、ロシア、中国が異なった態度に出ている。米国は中立的な立場ロシアはシーア派の味方、しかし、中国はスンニ派寄りになっている。

サウジは米国が中立的な立場に変化したので、中国に寄り始めている。中国もロシアより安い原油をサウジに求めて、サウジと中国は利害が一致している。それに合わせて、サウジは、安全保障も中国に依存しようとしている。

ロシアは中国に原油を高い価格で売ろうとしているので、中国は、うんとは言わない。ロシアの戦闘機などの技術が欲しいので、ロシアとの同盟関係を築いているように見えるが、ロシアからの技術を入れれば、ロシアは必要がない。

ロシアも中国との関係を気にして、ロシアのラブロフ外相は、中国との関係について「史上最も良好な状態にある」との認識を示したが、このようなことをわざわざ言わなければならないほど、中露関係はおかしくなっているのである。

その証拠に、AIIBでロシアの出資額は、中国についで2位にあるのに、副理事長や理事にもなれないという冷遇を受けている。中国は、ロシアとの関係を一時的であると見ている証である。

ロシアと中国は中央アジアでも競合関係にあり、中国の「一帯一路」戦略上でも、ロシアは邪魔をすると中国は見ているのだ。

そして、イランの制裁解除により原油が輸出できるようになるが、その石油取引の決済をユーロにするとしたが、ロシアはイランに対して、人民元決済も入れるように進言した。中国をサウジ寄りからシーア派寄りに引き戻したいようである。

米国の思惑

米国は中国の持つ米国債を投売りされると、ドル基軸通貨体制の崩壊になるために、中国に強い刺激を与えることができない。このため、南シナ海での行動も中国と協議して実施している。

米国はシェールオイルがあるので、アメリカ大陸に引きこもり、世界の警察を止めていれば、2040年までには、ユーラシア大陸諸国が潰しあってくれるので、それを待てば米国の時代が復活するとしている。これが基本的な米国の戦略である。ストラッドフォーがその戦略を公開した。

その中で日本も島国であり、米国と同じようにしていれば、戦争に巻き込まれないで、人口減少の経済的なトラブルはあるにしても、悲惨な目には合わないとしている。このため、サンダース候補やクルーズ候補など、米国の引きこもりを目指す候補が出てきたのである。トランプ候補も保護主義を唱えているので、引きこもりであろう。

主流派のルビオやブッシュ、クリントンは、外交戦略で引きこもりまで、言っていないが、国民世論がその方向であり、徐々に支持層を広げるために、その考え方を取り入れることになる。

米国がやるべきことは、中東戦争で中ロを分裂させて、両国で潰し合いさせることだ。米国はロシアに対しても、キッシンジャーなどがロシアとの関係を修復するべきと言っている。というように、米国は、中ロを中東戦争に呼び込み戦わせて、米国自体は中立にいて傍観者になろうとしている。

欧州はNATOの構成国であるトルコやサウジと関係的には良い。シリアでの反政府勢力を支援してきた。ということで、中国もスンニ派支持に向かう可能性がある。そして、中国のスンニ派支持を推し進めているのが米国や欧州である可能性が高い。ロシアと中国を中東で戦わせることである。

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