【葬送日記】香具師の伯父がくれたガラス玉はダイヤよりも美しかった

 

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どこかでお役に立てたら私も嬉しいです。

ちなみに私が担当させていただいている地域はいわゆる後火葬。ご葬儀ー出棺ー火葬ー収骨という流れが主流です。

読者の皆様の中で、先火葬(骨葬)という地域も少なくないはずです。

ここでご紹介するナレーション例文は後火葬という前提で書いておりますので適宜アレンジしてお使いいただければと思います。

ピックアップ★お別れの手紙

○○伯父さん、黒いリボンに縁取られた遺影の伯父さんは慣れないネクタイを締めてどこか窮屈そうですね。

本当はまた、ふらりとどこかへ出かけたいのではありませんか。

伯父さんには何度かお目にかかっただけなのにどこか繋がっているような気がするのはあの指輪のせいかもしれませんね。

30年前、夫と私は結婚の報告のため夫の母の姉である伯母の家を訪ねました。

そこで伯父さんに会ったのです。

伯父さんは「あんたが○○ちゃんの嫁さんか」とだけ言って手品師のような手つきで私の手のひらにガラス玉の指輪を乗せました。

私はとても驚き、同時に懐かしい気持ちにもなりました。

脳裏に、子どもの頃に見た縁日の光景が広がったのです。

お面に綿菓子、水風船、そして指輪も売っていました。

私はその指輪がほしいと親に駄々をこねたのですが当時、買ってはもらえませんでした。

…その指輪が、不意に目の前に現れたのです。

夫は「伯父は香具師で酒飲みで怠け者。家にも帰らず伯母が気の毒だ。こんな指輪はどうせ余り物だろう」と語気を強めました。

その口ぶりから私は伯父さんが周りの人たちに受け入れられていないことを察したのでした。

あの日、伯父さんが指輪を下さったのは、夫が言うように単に気まぐれだったのかもしれませんし私も何度かもう処分しようと思ったこともありますが指輪を見ると、人目を気にしたり従順なイエスマンであろうとしたり本当の自分になれない自分を見るようで切なくなるのでした。

かといって私は伯父さんのように生きられません。

伯父さんだって決して生きやすい人生ではなかったことでしょう。

生きていくって、誰にとっても大変なことなのですね。

伯父さん、どうぞ安らかにお眠り下さい。

一句、「冬の日のダイヤに勝るガラス玉」

合掌

image by: Shutterstock

 
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