2013年12月4日、『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録され、和食の魅力が世界中に注目されました。
一方で、日本人の年間の塩分摂取量は世界の中でも多めです。過去に実施された調査によると、世界187か国の平均食塩摂取量は約10g。
血圧と食塩摂取量との関連を解析したところ、年齢とともに血圧が上昇しない地域では、1日の平均食塩摂取量が約3~5gにとどまっていました。
同時期の「平成22年国民健康・栄養調査」によると、日本人の1日あたりの塩分平均摂取量は、男性で11.4g、女性で9.8g。年々減少傾向にあり、最新の26年度の結果では、男性10.9g、女性9.2gとなっていますが、それでも他国と比較すると多いと言わざるを得ません。
体内の塩分濃度が高くなると、濃度を薄めたり塩分を外に出すために血液量が増え、血管にかかる圧力(血圧)が高まります。その状態が長く続くと、血管がもろくなり、脳卒中を引き起こすリスクも高まることがわかっています。
これでは健康的と言えません。和食に塩分が多い理由と健康的に取り入れる方法を考えていきましょう。
和食が健康と言われるワケ
旬の食材と食材の持ち味を活かした調理法で一汁三菜(ご飯、汁物、主菜、副菜2品)を基本とする日本の食事スタイル。
食物繊維を含み噛みごたえのあるご飯、魚や大豆製品など、質の良いタンパク質や脂質が適度に含まれる主菜、季節の野菜・海藻などでビタミン、ミネラルを豊富に摂ることができる汁物や副菜。
さらに、素材を活かした様々な調理法は、効率的に栄養素を補うことができます。和食は、栄養バランスが良く、低脂肪な献立であることから、健康的と言えます。
和食が塩分過剰になるワケ
塩分は和食の特徴である「出汁のうま味」を引き立たせます。塩漬けは保存性を高める調理法。ほうれん草をゆでる時に塩を加えますが、食材の色を良く見せます。魚を焼くときに塩を振るのは、うま味を逃がさないため。うどんのコシは塩なしでは出すことができません。このように、塩には、和食に欠かせない調理上の大切な役割があります。
また、「最後に塩で味を調える」のは、実は海外ではあまりされていない、和食調理の特徴です。
調理だけではなく味付けでも、ご飯に合うように主菜の味付けを濃くする、副菜には漬物や梅干し、たらこなどの塩蔵加工食品が多い、毎食汁物を食べる、醤油をかけて食べる、など、塩味に慣れ親しんでいる日本人。このような積み重ねが、摂取量が多くなる理由であると考えられます。
健康的に和食を取り入れるコツ
塩分が多いメニューを1日で調節しましょう
汁物、麺類のスープ、漬物、干物、加工食品、保存食などは塩分が多いので1食にし、1日の中で重ならないように注意しましょう。
調理もひと工夫
素材の味を活かして、薄味を心がけましょう。出汁、油、酢、柑橘類、香味野菜や香辛料は、塩味が薄くても美味しく感じることができます。上手に活用しましょう。
執筆:山本ともよ(管理栄養士)
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