政権圧力はあったのか? 古舘伊知郎ら降板キャスター「最後の発言」

 

【キャスター降板の美学】~国谷裕子のケース~

● 降板のコメント

23年間担当してきましたこの番組も、今夜が最後になりました。この間、視聴者の皆様方からお叱りや戒めも含め、大変多くの励ましをいただきました。クローズアップ現代が始まった平成5年からの月日を振り返ってみますと、国内、海外の変化の底に流れるものや静かに吹き始めている風を捉えようと、日々もがき、複雑化し見えにくくなっている現代に少しでも迫ることができれば、との思いで番組に携わってきました。23年が終わった今、そのことをどこまで視聴者の皆様に伝えることができたのか、気懸かりですけれども、そうした中でも長い間、番組を続けることができましたのは、番組にご協力いただきました多くのゲストの方々、そして何より、番組を観て下さった視聴者の皆様方のお陰だと感謝しています。長い間、本当にありがとうございました。

(2016年3月17日「クローズアップ現代」およそ1分30秒)

uttiiの眼

集団的自衛権の問題で菅官房長官にしつこく食い下がった国谷さん。正直に言うと、あまり上手な攻め方ではなかったように見えたが、それでも、あのときの放送が原因で官邸が圧力を掛けたのだとしたら許しがたいことだと思う。少なくとも、NHKの現場が「国谷続投」を強く求めたのに対して上層部が断固として降板を譲らなかったという話は、信憑性が高い。

国谷氏最後のコメントは、当たり障りのないもののように見える。しかし、これは綺麗事を述べたものではなく、私には国谷さんの本心と思えた。23年の経験のボリュームに比べれば、菅氏との衝突など、些細なことだからだ。たとえ、それが自分のポジションを失う最大の原因だったとしても。

この日の番組は「未来への風~痛みを超える若者たち~」と題したもので、時代の閉塞感の中で主体的に動き始めた若者たちを取り上げた。安保法制反対運動や18歳選挙権、ブラックバイト、沖縄の普天間基地移転問題、短歌創作、NPO支援などの分野で生き生きと活動し始めている人たちを紹介。最初に取り上げられたのはSEALDsの奥田愛基さんだった。

ゲストのノンフィクション作家、柳田邦男氏とのトークの締めは、「(こうした芽を大きく育てるために)若者たち自らが考え、行動して欲しい」というもの。そのあと、画面は23年間のテーマを桜の花の1つ1つに見立てたコラージュとなり、ゆっくりとパーンする映像をバックに「国谷裕子キャスターの出演は今夜が最後になります」のテロップが入り、そして国谷さんのワンショットとなって上記のコメント。

コメントの終わりで頭を下げた国谷さん。そのあと、もう一度、国谷さんのワンショットに戻るのだが、今度は静止画。そして、バックにクラシック音楽が被る。「をイメージさせる編集技法。因みに、曲はモーリス・ラベル作曲の「亡き王女のためのパヴァーヌ」で、フルートのバージョン。およそ30秒流れた。

テーマの選び方、最後のコメント、世の中を良い方に変えていく若者の力が発揮されつつあるのだという明るい方向感、さらに、23年間を謙虚に肯定するコメント、そして最後の曲。「王女」は国谷さん自身に違いなく、降板を悲しむスタッフの選曲であることも疑いようがない。降板「事情」についての説明は一切ないが、意味は十分に伝わった

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