生活保護受給者のパチンコ問題。国はなぜギャンブルと認めないのか?

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生活保護受給者のパチンコ制限を定めた市の条例が、国の指導で撤回されたというニュースをご存知でしょうか? 条例を支持する声が多数派でしたが、国と県は撤回を求めました。一般常識からすると「大切な税金から支給しているのだから、パチンコに使うなんて言語道断!」と感じますが、どうやら今回の判断は生活保護法の条文の解釈によるもののようです。無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』で法律のプロが詳しく解説してくれています。

生活保護とパチンコ

大分県の別府市と中津市が、生活保護を受給している人について、支給開始に際して、パチンコ店に立ち入らないとする誓約書を提出させ、それにもかかわらずパチンコをした受給者に対する給付の一部停止をしていたことにつき、厚労省と県から不適切であるとの指導を受けて、停止措置を取りやめたとのことである。背後には、これを問題視した弁護士グループがいたとも報じられている。

さて、別府市は、「生活保護費をパチンコなどに使うことは不適切だという認識に変化はない」とのコメントを出し、両市の措置について過半数の住民が支持をしていたらしい。不適切であるとの指導を問題視することに、私もかなりの違和感を覚える。

生活保護費の使途については、ギャンブルに使用してはならないことを義務付けている公共団体もあり、厚労省はこれには問題がないと判断しているらしい。とすると、パチンコはギャンブルではないとの認識があり、ギャンブルで使用することはダメだが、ギャンブルでないものに使用するのはよいということだろうか。

パチンコは、客が、店で現金をもって玉を借り(賃貸である)、増やした出玉を店で特殊景品と交換し、これを景品交換所に持参すると古物商である交換所は現金で特殊景品を買い取り、卸業者が交換所から特殊景品をさらに買い取って店に卸すという、いわゆる三店方式を採用することによって、風営法の網をかいくぐっており、ほとんど脱法であって、ギャンブルであると考えるのが普通の人の感覚である。

法的に考えてみると、生活保護法27条1項は「保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。」とし、62条1項後段は「被保護者は、保護の実施機関が…27条の規定により、被保護者に対し、必要な指導又は指示をしたときは、これに従わなければならない」とし、さらに同条3項はその義務違反について「保護の変更、停止又は廃止をすることができる」としている。だから、前記両市の措置に法的問題はないと考えられる。

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