度重なる暴走行為で今や「危険な国」というレッテルを貼られてしまった中国。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、世界三大戦略家エドワード・ルトワック氏の発言を分析しながら、中国が犯した「最大の過ち」とは何だったのか、そして、日本が「平和的台頭」を目指すべき理由について述べています。
中国4.0~なぜ「平和的台頭」がベストなのか?
今回はまた、世界三大戦略家ルトワックさんの教えです。全国民必読の超名著『中国4.0 暴発する中華帝国』
戦略的勝利だった「中国1.0」
この本の名前は、『中国4.0」』です。つまり、「中国1.0」「中国2.0」「中国3.0」もあるのですね。
09年にはじまった「中国2.0」は、「対外強硬路線」です。皆さん、覚えておられますね?10年、「尖閣中国漁船衝突事件」が起こった。中国側が悪いにもかかわらず、中国の反応は超強硬でした。「レアアースの禁輸」とか、ありえないです。2012年、日本政府が尖閣を「国有化」すると、さらに凶暴さは増しました。ルトワックさん、「中国2.0」は「失敗だった」と断言しています。
一方、ルトワックさん、09年までの「中国1.0」は、絶賛しています。「中国1.0」とはなんでしょうか? 「平和的台頭」です。期間は2000~09年。ルトワックさんは、「中国1.0~平和的台頭」についてどう思っているのか?
この当時の中国は、どの国にとっても恐ろしい存在ではなかったし、国際秩序に対しても脅威になっていなかった。
領海や国連海洋法条約、それに国際的な金融取引の取り決めなど、私的・公的を問わず、中国は実に多くの面で国際法を守っていたからだ。
(p19)
「チャイナ1.0」は、中国に政治・経済の両面において、非常に大きな成功をもたらすことになったのである。
(同上)
「中国1.0」が成功した理由はなんなのでしょうか?
「戦略の論理」を抑え込む「平和的台頭」
この世の中は、「行動」と「反応」で成り立っています。「原因と結果の法則」とも言えるでしょう。
ある男性が不倫という「行動」をした。それがバレると、奥さんからなんらかの「反応」があるでしょう。離婚を決意され、家族が崩壊する可能性すらあります。有名人であれば世間から厳しい批判にさらされ、社会的に「抹殺される」ケースもある。
さて、通常国は、「経済力」と「軍事力」を充実させていくことが「国益」と考える。これはまったくそのとおりで、正常な行動なのですが。もちろん、「周辺国」から「反応」が起こってきます。
ある国家が台頭し始めると、通常の場合はその国がいかにおとなしくしていようと、あるメカニズム、つまり「戦略の論理」というものが発動するようになる。つまり規模が大きくなり経済的に豊かになり、軍備を拡張するようになると、何も発言しなくても、他国がその状況に刺激されて周囲で動き始め、その台頭する国に対して懸念を抱くようになる。
(p20)
これが普通のケースである。ところが、「中国1.0」は「違った」というのです。
ところが「チャイナ1.0」は、このような「戦略の論理」を完全に押さえ込むことに成功した。他国は中国の台頭をただ傍観したまま、それに対して警戒的な反応を示すことは全くなかったからである。
ロシアもアメリカも、さらには日本でさえも、中国の台頭に対抗するためにそれほど軍備増強をしたわけではない。
(p19~20)
結果として「チャイナ1.0」は、中国の実際の台頭を平和裏に、しかも周辺国の警戒感を呼び起こすことなく実現したのである。
潜在的には1970年代後半から始まり、2000代初めから2009年末まで明確に採用されていたこの政策は、中国に経済面での富をもたらし、それに対する目立ったリアクションを起こさなかったのである。
(p24)
このように、中国の「平和的台頭戦略」は、世界三大戦略家ルトワックさんも感嘆するほど素晴らしいものでした。
ところが09年、「アメリカの没落」を確信した中国は「本性」を現し、「アグレッシブ」になっていきます。そして、ルトワックさんいわく、「自滅」し始めたのです。
「中国1.0」と日本史
中国の「成功」と「失敗」。これは、日本にとっても「他人事」ではありません。
1868年の明治維新で世界に登場した日本。1905年の日ロ戦争勝利まで、特に米英を敵にしないよう、用心深く歩んできました。1905年時点で、イギリス政府もアメリカ政府も、「極東の平和は、日本、イギリス、アメリカの事実上の同盟関係によって守られるべきである」と認識していた。
ところが、ここから(09年の中国のように)日本の態度が変わっていきます。1905年、ハリマンの「南満鉄共同経営」提案を断り、アメリカを親日から反日に変えてしまった。第1次大戦中、同盟国イギリスの「陸軍派兵要求」を断りつづけた結果、日英同盟を破棄されてしまった。全世界から満州国建国に反対され、国際連盟を脱退してしまった。こうして日本は、力をつけるにつれ、「国際世論」を無視するようになり、孤立して破滅しました。
私たちは、中国と、過去の日本の教訓を活かさなければなりません。自虐史観から脱却するのは、めでたいこと。
しかし、それは「いつでもどこでも強く自己主張しろ!」「他国の意見など気にせず、貪欲に国益を追求しろ!」というのと、関係ありません。ルトワックさん的にいえば、「戦略的ロジックを発動させない」戦略が最上なのです。
「平和的台頭」というのは、「平和ボケ・リベラル」の「夢想」と思われがち。しかし、「世界三大戦略家」のルトワックさん「お勧め」の戦略でもあること、知っておきましょう(もちろん、「摩擦を起こさないために、「慰安婦問題のウソ」「南京大虐殺のウソ」も認めてしまいましょう」とか、極論をいっているのではありません。念のため)。
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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