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オバマ大統領は本当に「無能」だったのか?ドン底からの3つの逆転

アメリカの現職大統領として初の「広島訪問」を決めたオバマ大統領。彼を巡っては米国内では、「期待外れ」「史上最低ではないが、空気のような存在」という否定的な声も聞かれるようですが、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは逆に高く評価しています。北野さんがオバマ大統領を認める「3つの理由」とは?

オバマが「偉大」である3つの理由

皆さんご存知のように、オバマさんの広島訪問が決まったそうです。ちょうどいい機会ですので、オバマさんについて考えてみましょう。

一般的にオバマさんの評価は、「とても低い」と言えるでしょう。「アメリカの権威を失墜させた!」と。しかし、私は、一般とは違う見方をしていて、「オバマさんは、偉大だ!」と考えています。なぜでしょうか?

理由1 ~世界経済の崩壊を食い止めた

オバマさんが大統領に就任したのは09年1月です。皆さんご存知のように、08年9月の「リーマンショックから世界は、「100年に1度と形容される経済危機に突入していました。これ、当時も今も、「まさに100年に1度の危機だった」と言えるでしょう。要するに、1929年から始まった「世界恐慌並」だったのです。そして、「100年に1度の大不況」の責任は前任のブッシュさんにあり、オバマさんには1%の責任もありませんでした。

1929年の世界恐慌。アメリカのフーバー大統領(当時)が対応を間違ったために、世界はメチャクチャ不安定になった。結局、第2次大戦が起こってしまった。オバマさんは、フーバーさんの間違いを繰り返しませんでした。アメリカも世界経済も、08~09年当時ほとんどの専門家、研究者が予想していた「大破局」にはならなかった。

これが、「オバマさんが偉大である」第1の理由です。

理由2 ~シェール革命で、アメリカは世界一の産油、産ガス国に

オバマ政権下で起こったことで、とても大きな変化は、「シェール革命でアメリカが世界一の産油産ガス国になったこと」でしょう。これ、本当にすごいことです。

ブッシュが大統領に就任した時、「アメリカの原油は2016年に枯渇する」と予測されていた。

なぜ、アメリカは、「アルカイダを支援していない」「大量破壊兵器を保有していない」フセイン・イラクを攻めたのか? 諸説ありますが、グリーンスパン元FRB議長は、「石油が理由であることは、『誰もが知っている』事実だ」と断言しています

「自国の石油が枯渇するから、中東支配を強化しなければ!」

ひどい話に思えますが、日本だって昔同じようなことをしました。「ABCD包囲網で石油が足りなくなるから、東南アジアを攻めて、油田を確保しよう!」と。

ところが、オバマ政権下でシェール革命が進み、「アメリカの石油、ガスは枯渇するどころか有り余っている!」状態になった。アメリカは、いまや世界1の産油、産ガス国である。そして、今年3月、40年ぶりに原油輸出を再開しています。

「シェール革命」は、アメリカの外交と世界情勢にも、大きな影響を与えています。「石油が自国にたっぷりある」。このことは、アメリカを「中東のくびき」「イスラエルのくびき」から解放した。それで、アメリカとイスラエルサウジアラビアの関係がとても悪くなっている

そして、シェール革命は、原油価格が長期的に低迷する最大の要因である。このことは、ロシア、ベネズエラなど「反米資源国の経済を直撃しています。

これが「オバマさんが偉大である」第2の理由です。

理由3 ~修正されたアメリカ外交

オバマさんがもっとも批判されるのは、「外交分野」です。実際、「アメリカの権威を失墜させること」をしました。もっとも記憶に残っているのは、2013年9月の「シリア攻撃ドタキャン事件」でしょう。

2013年8月、オバマさんは、アサド軍が「化学兵器をつかったこと」を理由に、「シリアを攻撃する!」と宣言した。しかし、翌9月、「やっぱやめた!」と戦争を「ドタキャン」し、世界を仰天させました。

さらに、オバマさんは、ウクライナの政治に関与し、親ロシア・ヤヌコビッチ政権転覆を支援しました。これ、トンデモ系に思えますが、オバマさん自身が関与を認めています。

昨年2月ウクライナの首都キエフで起きたクーデターの内幕について、オバマ大統領がついに真実を口にした。恐らく、もう恥じる事は何もないと考える時期が来たのだろう。

 

CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウクライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた。

 

別の言い方をすれば、彼は、ウクライナを極めて困難な状況に導き、多くの犠牲者を生んだ昨年2月の国家クーデターが、米国が直接、組織的技術的に関与した中で実行された事を確認したわけである。

 

オバマ大統領 ウクライナでの国家クーデターへの米当局の関与ついに認める

このクーデターで、プーチン・ロシアは、「クリミア併合を決意した。そして、ウクライナ内戦が勃発した。シリア、ウクライナ、そして、オバマさんも「失敗」と認めている「リビア攻撃」(2011年)。「オバマ外交」は「失敗だらけ」と言っていいと思います。

しかし、2015年3月の「AIIB事件」後、オバマさんは、突如「偉大なリアリスト」に変貌した。そして、「ほとんどすべての問題」を解決したのです。

そして、もうすぐ広島を訪問し日本国民の歴史的恨みを解く。こう見ると、「どこがリアリズムだ? ただの理想主義じゃないか?」と思えます。

いえいえ。

オバマさんの動きは、「世界中の国々と、とにかく仲良くしたい」ようにも見えます。しかし、(北朝鮮と)中国との和解は、全然模索していないのです。これは、どういうことでしょうか?

アメリカはこれまで、3つの地域で戦っていた。すなわち、

しかし、いくらアメリカでも、「3つの戦いを同時にするなんて非効率」なわけです。だから、中東問題、ウクライナ問題を解決し、中国問題に焦点をあわせている。「これぞ、リアリズム外交」なのです。

次の大統領がトランプさんになるかヒラリーさんになるかわかりませんが。賢明な「オバマ外交」が継承されることを心から望んでいます。

というわけで、

これが「オバマさんが偉大である」第3の理由です。歴史がオバマさんの功績を正しく評価することを願います。

image by: Drop of Light / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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