ユニクロ、GAPなどを成功に導いたことから、かつてはアパレルメーカーのビジネスモデルのみを指すと考えられていた「SPA」。しかし無料メルマガ『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』の著者でMBAホルダーの安部徹也さんは、今やニトリ、JINSなど、他業界もこの「SPA」を導入し成功を収めていると指摘、ただし「すべての業界がこのモデルで成功するとは限らない」との考察を記しています。
高収益を生み出すSPAモデルとは何か?
さて、今回はビジネスモデル編をお送りしていきましょう。
「新・大塚家具はニトリに勝てるのか? 経営戦略のプロが『騒動後』を分析」でニトリはSPAモデルを採用し、高い利益率を実現しているというお話をお伝えしたところ、読者の方から次のようなご意見を頂戴しました。
SPAって(specialty stores of private label apparel)アパレルメーカーに関する言葉で「ニトリ」についてSPAと表現するのは適切ではないと思いますが?」
(原文ママ)
このご意見を受けまして、今回はSPAというビジネスモデルをより詳しく紹介し、ニトリにSPAを使用した経緯を説明していきたいと思います。
もともとSPAとは、1986年にアメリカのアパレル大手GAPのドナルド・フィッシャー会長が発表した自社のビジネス形態を表す「Speciality store retailer of Private label Apparel」の頭文字を取ったものになります。
この言葉だけではSPAがどのようなビジネスモデルかはわかりにくいと思いますので簡単に説明すると、企画・デザインから製造、販売に至るまでのプロセスを自社の中に取り入れ、サプライチェーンの全体最適化を図っていくモデルということができるでしょう。
アパレル業界ではGAPがこのSPAモデルで成功を収めると、ライバル企業も次々に同様のビジネスモデルを導入していきます。
世界第1位のZARAを展開するインディテックスや2位のH&M、日本ではユニクロを展開するファーストリテイリングなど、SPAモデルを導入することによってGAPと同じように大きな成功を収めてきたのです。
このSPAモデルには次のようなメリットとデメリットがあります。
● メリット
- 商品の企画から店頭に陳列するまでの期間を短縮できる
- 顧客のニーズを商品開発に反映しやすい
- サプライチェーンの無駄を省き、低コスト化を実現できる
● デメリット
- サプライチェーンをすべて自社内に取り込むため、莫大な資金や人的資源が必要
- サプライチェーンの各プロセスを管理する様々なノウハウが必要となる
このようにアパレル業界で生まれ、同業界の多くの企業に導入されてきたという経緯を踏まえれば、SPAはアパレル業界の成功モデルということができるでしょう。
この観点に立てば、もともとSPAのAはアパレルを指すことからも、SPA=アパレル業界のビジネスモデルとイメージされる方も多いと思います。
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