日本発「パンツ界のエルメス」はいかにして海外ブランドを蹴散らしたか?

 

まとめ(戦略ショートストーリー)

見えないおしゃれを重視する男性をターゲットに「確かな縫製技術」や「縫製に対するプライド」に支えられた「長持ちする」、「履き心地がいい」という強みで差別化を実現しています。

男性用アンダーウェアを高価格で百貨店など高級品を扱う店舗で販売している。つまり、売り物、売り値、売り場の整合性をとることで、消費者の支持を得ています。

分析のポイント

「強力なメッセージ」

「パンツ界のエルメス」を目指すと聞いて、どう思いました? 私は「おもしろい発想」と思ってしまいました。パンツに特化した高級ブランドという発想はなかったですからね。私と同じように消費者目線から見ると「おもしろそう」と思った方も少なくないと思います。

では、パンツを扱う競合の方が聞いたらどう思うでしょうか。ただ注目を集めるための奇策だと思って相手にしなかったり、冗談だと思って聞き流してしまう方もいるかもしれません。

差別化とは、要は「競合と異なる価値を強みとして戦う」ことですが、競合から冗談だと思われるくらいの価値を提供することは差別化につながりやすいです。なぜなら、競合が相手にしないということは、競合として「認識していない」、「提供している価値が重ならない」ということであり、これは、「競合とは異なる価値を提供している(=差別化)」ということを意味するからです。

そして、その提供価値を求める顧客がいるという前提ですが、競合とは明らかに異なる価値を提供していれば、顧客から見ても、提供価値の違いがわかるようになりますので、差別化できていると言えるでしょう。

また、従業員から見て、社長から「パンツ界のエルメス」を目指すと言われたらどう思うでしょうかね。人によるとは思いますが、とてもイメージのしやすいメッセージですし、元々、尖った印象の会社ですから、わくわくする方や熱くなる方もいらっしゃるかもしれません。逆にこのメッセージを受け入れられない、合わない従業員の方は、離れていくのではないでしょうか。

つまり、このメッセージは目標達成のための組織の一体感を高める効果もあるということです。なぜなら、ビジョンに共感できる方が社内に残り、共感できない方が離れていき、共感できる方が採用されることになると組織としての一体感は高まるためです。もちろん、ビジョンに共感できる方々が適材適所に配置されることも非常に重要となります。

以上のように、強力なメッセージは「消費者」や「自社の戦略」、「従業員」にも影響を与えるということです。恐らく、TOOTの社長はこれらを意図して、このメッセージを発信しているのでしょう。

今後、TOOTが「パンツ界のエルメス」のような存在になれるのか楽しみですし、日本発のブランドとして非常に期待しています。

image by: TOOT 公式HP

 

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