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現役医師が恐れる、「ロボット手術」で外科医の仕事が奪われる日

日進月歩の医療業界ですが、最新のテクノロジーで近い将来、ロボットが手術をする時代がやってきそうです。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、Intuitive Surgical社が開発した外科医ロボット「Smart Tissue Autonomous Robot (STAR)」を紹介。未来の医療と医師としてのあり方について考えます。

外科医に多いアルファ性格

外科医にはアルファタイプの性格を持つ人が大勢います。アルファタイプとは、闘争心旺盛で、負けず嫌いであり、気に入らないことがあると突然、「瞬間湯沸かし器のように怒りまくる性格です。心理学では、そのような性格を持つ男性を「アルファオス」といいます。動物にもそのような性格を持つ雄(オス)が多いといわれています。

私は、そのような医師をこれまで数多くみてきました。未熟な研修医やコメディカルが失敗でもしようものなら、顔を真っ赤にして逆上し、近くにあるカルテを投げたり、イスを壊したりなどの風景です。このような医師の行動を、医療安全の専門家はdisruptive behavior破壊的行動)と呼び、患者安全や医療の質に重要なチーム医療を乱す行為としています。

上のような経験をしてきた私は、少し話をするだけで相手がアルファ性格者であることがわかるようになりました。きっと防御反応で鍛えられたのでしょう。全国のさまざまな病院でいろいろな外科医にお会いしてお話をするとき、「この外科医は破壊的行動をする医師だな」というふうに分かることがあります。

ここまで進歩した手術ロボット

さて、ロボット手術がめざましく発展してきています。数年前に登場した、「ダ・ビンチ」という手術ロボットは先進国に広がりました。日本でも、前立腺の手術は保険適応も認可されました。今や、東京の病院にも、沖縄の病院にも「ダ・ビンチ」はあります。ただ、「ダ・ビンチ」は自動的に手術をするわけではなく外科医が操作して微妙な切開や縫合を行うものであり、手術ツールと呼んだ方がまだよいかもしれません。

その「ダ・ビンチ」を開発したグループが最近、完全自動で手術を遂行するロボットを開発しました。スマート・ティッシュ・オートノマス・ロボットSmart Tissue Autonomous Robot (STAR)と呼ばれる高性能ロボットで、子豚の腸管の切開と縫合を行うことができ、完全な腸管の吻合に成功したのです。

多くの子豚の腸の手術を成功させただけでなく、ロボットが行った手術テクニックは見事なものでした。術後に解剖して吻合部を詳細に調べたところ、ロボットが手術した組織の縫合は、ベテラン外科医が縫合した結果と比較するとリーク腸管内容物の漏れも少なくロボットが縫合した糸のほうがその配列の規則性が高かったとのことです。結果として、ロボット手術の合併症はゼロでした。

STARによる自動手術は、ベテラン外科医の手術と比較して、今のところまだ時間がかかるようですが、すみやかにバージョンアップを経て、スピードは格段に上昇するだろうといわれています。外科手術の登竜門である「虫垂切除術を完全自動に行う動物実験も計画されています。STARの開発者は、手術後の合併症が減って再入院率も減るために、患者や病院にとても喜ばれるだろうとしています。

未来の医療

ICTによる医療革命は今、すさまじい勢いで進んでいます。現在開発されてきているCT画像コンピューター自動読影が進歩していくと、CT機器にデフォルトとして読影機能もセットされて販売されるようになるでしょう。結果として、放射線読影医の必要性が減ることになります。

また、これはロボットではありませんが、すでに「ヒフミルくん」という皮膚所見コンサルトアプリで、地域医療での皮膚科医師常勤の必要性はかなり低下しました。

外科手術を担当するロボットが登場する日は将来かならずやってくるでしょう。すなわち、将来を予測するうえでの設問は、外科医がロボットに置き換わる日は「本当に来るのか」どうかではなく、「いつ来るのか」とすべきでしょう。

破壊的な行動をする外科医は医療安全にとって脅威であり、そのような行動をとっているとロボットに手術担当の役割を持っていかれるかもしれません。ロボットに人類が征服されるという意味はそういう意味なのかもしれません。物理的に戦って敗れるのではなく職が奪われるのです。

むしろ、将来に外科医を目指す若い医師は、手術についてロボットとの競争ではなく、共存を目指すため、チーム医療内での良好なコミュニケーションスキルも良くするように努力するとよいと思います。

文献
Peter Kim et al: Science Translational Medicine: Children’s National Health System in Washington, DC, USA, 2016

image by: Shutterstock.com

 

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