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親の介護をしたのは自分だけなのに、なぜ遺産相続で優遇されないのか

高齢化社会が進むにつれ、新たに「介護離職」なども大きな社会問題となっています。家族とは言え、自分のために大切な人が大きな負担を抱えるのはお互いにとって辛いことですよね。無料メルマガ『こころをつなぐ、相続のハナシ』には、「親の介護をした子供は他の相続人より財産を多くもらえるのか?」という、誰もが知っておきたい疑問に対する回答が記されています。

親の介護をしたら、他の相続人より財産は多くもらえるのか?

さて、本日は、「親の介護をしたら、他の相続人より相続で財産を多くもらえるのか?」という内容について、考えていきましょう。

介護をしていくというのは、とても大変です。中には、自分の仕事を辞めざるを得なかったり、また自分のやりたいことを我慢したりということもあるでしょう。超高齢化社会と言われている今、決して他人事ではない問題です。

では、それだけ大変な思いをするのだから、介護をした人は、法律上財産を多くもらえるようになっていると考えて良いのでしょうか。実はコレ、答えはNOです。残念ながら、介護をしたからと言って、相続で財産を多くもらえるとは限りません。

確かに、相続について規定した法律には、「寄与分(きよぶん)」という制度があります。寄与分とは、より故人に貢献した人が財産を多くもらえるようにしようという制度だと考えてください。しかし、ここでいう寄与とは、「故人の財産の増加に貢献した」という意味。たとえば、故人である親が自営業で、その事業を無報酬等で手伝って、その結果人件費がかからずに済んで、結果的に親の相続財産が増加した、というイメージです。

また、介護であれば、通常はヘルパーさんに頼んで費用がかかるものを自分で行ってきた結果、ヘルパーさんに支払う費用が節約でき、その結果親の相続財産が増加したようなという場合であれば、認められる可能性はあります。これでは、少しハードルが高いと感じるのではないでしょうか。つまり、通常の介護であれば、ここでいう「寄与とまでは認められにくいのが現状なのです。

では、どうすれば良いのでしょうか。

実は、実際に相続が起きてしまってからできることは、多くありません。せいぜい、裁判上で、「自分のしてきたことは寄与にあたるので、自分は多く財産が欲しい」と争うくらいでしょう。もちろん前述の通り、争ったからと言って通常の介護では寄与分は認められにくいのが現状です。

そのため、相続が実際に起きてしまう前に、遺言書を整備しておくことが不可欠と言えます。遺言書さえあれば、自分の生活を犠牲にして介護をしてきた子に財産を多く渡すことが可能です。

「介護をしたら、当然多くもらえるはずだ」と思いこんで何も対策をしなければ、何ら報いることができず、後悔の念を残すことになりかねません。

また、子の立場からは、親がきちんとこういった事を知っているのか。財産についてどう考えているのかなど、話し合いの場を持つことも重要です。言い出しづらいことではあるかと思いますが、専門家へ相談等もしながら、早いうちから考えておくことをお勧めします。

image by: Shutterstock

 

 『こころをつなぐ、相続のハナシ
行政書士山田和美が、相続・遺言について情報を発信するメールマガジン。「相続人って誰のこと?」という基本的な事から、「相続が起きると銀行口座どうなるの?」等のより実務的な疑問まで幅広くお伝えして参ります。
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