NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は「徳川家康が上杉討伐を決意するに至った原因」について。その原因のひとつとされているのが、直江兼続が西笑承兌に送った「直江状」と呼ばれる書簡ですが、著者の西股総生さんは、上杉景勝が突如として建て始めた「神指城」の存在も大きかったと言います。それは一体どういうことなのか、さっそく見て行きましょう。
今回のワンポイント解説(8月28日)
徳川家康が上杉討伐に踏みきった直接のきっかけは、ご存知「直江状」だが、もう一つ、大きな原因となったのが神指城である。
上杉景勝が、蒲生氏に替わって会津に入ったのは慶長3年(1598)。越後時代の上杉領が91万石余(北信濃・佐渡・出羽庄内含む)で、会津領は概算120万石だから、これは栄転と言ってよい。ところが、会津に入って半年もたたない内に秀吉が死去。一旦は上洛し、五大老として政務に当たった景勝だったが、翌年に帰国すると神指城の築城に取りかかった。
この神指城、完成していれば間違いなく日本屈指の名城になっていたと思えるような、壮大な城だった。こうして巨大な城を新造し、武力を蓄えている様子に神経をとがらせたのが、景勝の後に越後に入っていた堀秀治。秀治は、景勝が軍備増強に余念がない様子を京に報告し、家康は景勝に、上洛して謀叛の意志がないことを釈明するよう求めた。政権の許可なく勝手に戦争の準備を始める行為とは、すなわち謀叛を意味するからだ。 ところが、景勝はこれに応じなかった。おまけに、挑発的な「直江状」が送りつけられたため、家康は上杉討伐に踏み切ることになったわけだ。
ほら。城は領地を支配する政庁で、天守や石垣は身分や権力を示すためのシンボル、と考えたら、この歴史的経緯が説明つかなくなるでしょう?だって、そうだとしたら、彼は五大老の立場にふさわしい壮麗な城を築いて、120万石を支配するための新しい政庁とするのは当然だったはず。 誰も、とがめ立てする権利などない。でも、堀秀治はそれを脅威と感じ、家康も謀叛とみなした。それは、城が軍事施設であり、築城という行為が戦争準備を意味していたから、ではありませんか?
おそらく、景勝は会津に帰国した時点で、豊臣政権の先行きに見切りをつけていた。もともと秀吉の家臣でもなく、上杉家を守るために服属したわけだから、五大老を愚直に務めていても上杉家を守ることができない、となれば、政権と距離を置くのも当然だ。今は、伊達・最上・徳川との戦争も視野に入れながら、軍備を増強して自立自存の体制を固めるのが優先、と景勝は判断したのだろう。そんなふうに考えてくると、神指築城から「直江状」にいたる一連の経緯が理解できるわけだ。(西股総生)
《今週のワンポイントイラスト》
多数派工作、先にじれた方が負け。待つのが得意な家康が有利!?(みかめ)
文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)
ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組
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その1
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『西股総生氏トークイベント《第2部》「対談形式 サブカルチャーで楽しむ歴史と話題ドラマ」』
12月23日(金・祝)14:00~17:00
場所: 新宿アイランドウィング
※二部構成となっております。それぞれ申し込みが必要です。
その2
クラブツーリズム主催のナワバリスト西股によるお城講座
9月24日(土) 関東初の近世城を徹底検証!石垣山一夜城跡 ※キャンセル待ち
コース番号03338-086
10月30日(日) 土の城を見るコツを徹底指南!「増尾城跡」 ※開催決定・キャンセル待ち
コース番号03335-086
その3
11月 27日(日)に下記イベントにてナワバリンググッズの販売予定。
・デザインフェスタ(東京ビックサイト)
★縄張りグッズ委託販売中★
神保町書泉グランデ の4階ではTEAM ナワバリングの縄張り図グッズを置いていただいております。お近くにご用事の際には是非お立ち寄りください!!
今週の『真田丸』SNS反応【編集部まとめ】
丁寧に「敗者はなぜ敗者なのか」を見せる三谷幸喜さん…かっこいいけど、この三成さんが支えようとする豊臣家では戦のない世を続かせるシステムは作れないのだと。#真田丸
— ぬえ (@yosinotennin) 2016年8月28日
「声が小さくて聞こえませんなあ~」ってされて景勝様が泣いて帰って以来ずっと溜め込んでいた怒りの直江状。その長さは5メートルにも及んだ #真田丸
— 汀こるもの@レベル97 (@korumono) 2016年8月28日
兼続さんの「直江状」をもっと聴きたい!という声を見越して、公式サイトから5分以上聴くことができるとは…!
公式恐るべし…!***
特集 ムービー 直江兼続 役・村上新悟さんによる「直江状朗読(※一部抜粋)」 https://t.co/3R1UobvYyk#真田丸
— 小栗さくら@歴史タレント (@oguri_sakura) 2016年8月28日
ここで家康がビリビリに破いたら直江状は後世に残らないはずなのに!歴史のパラドックス! #真田丸
— まとめ管理人 (@1059kanri) 2016年8月28日
直江状を見せるセコムのドヤ顔と、めっちゃウケてる御屋形様たまらん上杉主従
#真田丸 pic.twitter.com/KYHyd0Hc48
— しめじ (@shimeji_b) 2016年8月28日
丸の家康はワリと信繫の事を気に入ってて、無礼な振る舞いを許してきたところあるんだよね。今まで色々便宜図ってもらったのに喧嘩売っちゃう信繫恩知らずじゃね?と思ったんだけど、そういや徳川に嫁を殺されてるんだった。。徳川に仕える選択肢は信繫の中には元々無いんだな#nhk #真田丸
— くろま@おいでよ真田丸の沼 (@kuroma_9) 2016年8月28日
凄い脚本だよなと思うのは、三成さんは一生懸命なのにそれが空回りしまくっててとても可哀想で見ていて切ないけれど、天下を治める器かと言われるとそうではないなと明確に思わせるところ。 #真田丸
— いが(たろに) (@iga_iganao) 2016年8月28日
「恐れながら申し上げます。石田治部少輔様は己が身を顧みる事なく誰よりも豊臣家の事を思い尽くしてこられました。その石田様をもってしても内府様の下では務める事がかないませんでした。どうして私などに務まりましょう」源次郎なりの義の通し方だったと思う。有用な人材すぎる。#真田丸
— みかんねこ (@tangerine_cat) 2016年8月28日
いや~三谷脚本ほんと素晴らしいですな! 構成がすごい緻密なんだと思います。
今回の放送で、何故『組!』メンバーが起用されているのかはっきりと分かりました。 家康が半ば各所を騙して豊臣の旗を上げさせて会津へ攻める なんて、幕末の戊辰戦争と全く同じ流れです。(続 #真田丸— 7月の侍 (@01reo01) 2016年8月28日
自分の居場所を武田への思いと擦り合わせてしまった昌幸とも、豊臣のために戦うと決めている信繁とも、目的が重なることはないと信幸はわかっているんだろうな。だから昌幸を見る目は厳しく話す声は必要以上に強い。信繁に「策士だな」という声は細く、目は悲しい。そう、感じた。 #真田丸
— あさきゆうみ (@asaki0014) 2016年8月28日
今回私の中でのMVPは片桐且元殿でした。今までで一番かっこよかった!秀頼殿へ向ける笑顔がとても素敵だった!伊達に賤ヶ岳七本槍の一槍を担ってなかった! #真田丸
— まーぼー (@mabo_twit) 2016年8月28日
来週これかな?と思い再掲致す。 #真田丸 https://t.co/LGUoQHNTJc
— 國 (@921aym3) 2016年8月28日
いま出ている大名たちがどういう運命を辿るか、見ている方が全部知っている前提で書いてるのがいいよね。「あー、この人、ああなっちゃうのにどうして…」って興味の引き方が上手い。その答えを必ず用意してるのも偉い。#真田丸
— tadataru (@tadataru) 2016年8月21日
#真田丸
今回は家康のドヤ顔を見れて嬉しい限りですが笑、実はこの頃、公家の久我親子が大スキャンダルを起こしていました…
このど〜でもよいような事件、実は出自が怪しい家康にとって大チャンスだったのです‼️天下人は運もスゴいんですね😊! pic.twitter.com/TU0DwSOVNF— こんでん (@hiroju55) 2016年8月21日