真田丸『第34話』裏解説。なぜ上杉景勝は家康に反旗を翻したのか?

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NHK大河ドラマ『真田丸』を放送直後にワンポイント解説する人気連載シリーズ。今回は「徳川家康が上杉討伐を決意するに至った原因」について。その原因のひとつとされているのが、直江兼続が西笑承兌に送った「直江状」と呼ばれる書簡ですが、著者の西股総生さんは、上杉景勝が突如として建て始めた「神指城」の存在も大きかったと言います。それは一体どういうことなのか、さっそく見て行きましょう。

今回のワンポイント解説(8月28日)

徳川家康が上杉討伐に踏みきった直接のきっかけは、ご存知「直江状」だが、もう一つ、大きな原因となったのが神指城である。

上杉景勝が、蒲生氏に替わって会津に入ったのは慶長3年(1598)。越後時代の上杉領が91万石余(北信濃・佐渡・出羽庄内含む)で、会津領は概算120万石だから、これは栄転と言ってよい。ところが、会津に入って半年もたたない内に秀吉が死去。一旦は上洛し、五大老として政務に当たった景勝だったが、翌年に帰国すると神指城の築城に取りかかった。

この神指城、完成していれば間違いなく日本屈指の名城になっていたと思えるような、壮大な城だった。こうして巨大な城を新造し、武力を蓄えている様子に神経をとがらせたのが、景勝の後に越後に入っていた堀秀治。秀治は、景勝が軍備増強に余念がない様子を京に報告し、家康は景勝に上洛して謀叛の意志がないことを釈明するよう求めた。政権の許可なく勝手に戦争の準備を始める行為とは、すなわち謀叛を意味するからだ。 ところが、景勝はこれに応じなかった。おまけに、挑発的な「直江状」が送りつけられたため、家康は上杉討伐に踏み切ることになったわけだ。 

ほら。城は領地を支配する政庁で、天守や石垣は身分や権力を示すためのシンボル、と考えたら、この歴史的経緯が説明つかなくなるでしょう?だって、そうだとしたら、彼は五大老の立場にふさわしい壮麗な城を築いて、120万石を支配するための新しい政庁とするのは当然だったはず。 誰も、とがめ立てする権利などない。でも、堀秀治はそれを脅威と感じ、家康も謀叛とみなした。それは、城が軍事施設であり、築城という行為が戦争準備を意味していたから、ではありませんか?

おそらく、景勝は会津に帰国した時点で、豊臣政権の先行きに見切りをつけていた。もともと秀吉の家臣でもなく、上杉家を守るために服属したわけだから、五大老を愚直に務めていても上杉家を守ることができない、となれば、政権と距離を置くのも当然だ。今は、伊達・最上・徳川との戦争も視野に入れながら、軍備を増強して自立自存の体制を固めるのが優先、と景勝は判断したのだろう。そんなふうに考えてくると、神指築城から「直江状」にいたる一連の経緯が理解できるわけだ。(西股総生)

今週のワンポイントイラスト

多数派工作、先にじれた方が負け。待つのが得意な家康が有利!?(みかめ)

 

文・絵/TEAM ナワバリング(西股総生・みかめゆきよみ)

ナワバリスト(城郭研究家)の西股総生率いる、お城(主に山の城)と縄張りを愛する3人組

 

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その3

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