なぜ全米メディアは「ヒラリー重病説」をこれほど騒ぎ立てるのか?

 

ところが、恐ろしいのはメディアはこのネタに飛びついて大騒ぎをしているのです。

まず取り上げられたのは、1992年1月に来日したジョージ・H・W・ブッシュ当時の宮沢首相主催の晩餐会で体調を崩して嘔吐したという事件です。この時は、当時は皇太子であった今上天皇とテニスをやって負けたせいだということで、バーバラ夫人が「負けるのに慣れていないので」というジョークを言って、その場を取り繕ったのが有名です。

ですが、この「ブッシュ健康不安説」というのは、正に選挙の年の早々に起きた事件だけに、一部では「影響を引きずった」という見方があります。要するに「ビル・クリントンの若さ(当時45歳)」を際立たせる効果をもたらしたというわけです。

更に調子に乗ったメディアは、「民主党大統領の健康問題の歴史」などといった内容の記事をダラダラと流し続けています。まず、大統領職の末期に何度も脳卒中に襲われながらそれを隠していたウィルソン大統領、そして、ポリオ闘病のため車椅子生活を余儀なくされたことを隠していたFDR(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)、更には脊椎や内臓に病気を抱えていたJFKなどの「黒歴史」を、いかにも悪いことのように、そしてヒラリーの今回の事件がいかにも深刻な問題のように報じているのです。

一方で、興味深いのはトランプ陣営の動きでした。トランプという人は、こういう事件に際しては、瞬間的にイヤミなツイートをして喜ぶ趣味があるのですが、今回は「22時間にわたってダンマリ」を続けたのです。最後には「大統領職に健康は重要です」というイヤミはイヤミでもマイルドなものを流しましたが、とにかく「我慢していた」のです。

この点を評して、8月中旬以来の選対「新体制」による「候補の暴走への抑制」が効いていて、良い兆候だという解説も出ていますが、いずれにしても、注目しても良いかもしれません。

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