イギリスは、なぜEU離脱を選んだのか?
次にトッドさん、イギリスのEU離脱について語ります。
──今、その米国人も英国人も国民国家の枠組みに戻ろうとしている、と。
「そうです。英国の場合、トランプ現象に当たるのはEU離脱問題です。原動力は、あまりにたくさんの移民を受け入れることへの拒否反応です。英国でも民族や国民という問題が優先課題になったのです」
「英国の国民投票は、EU離脱を求めた大衆の声と残留を訴えたエリートたちの対決でした。英国には、エリートに敬意を払うという伝統があります。しかし、それも指導層が国民の安全を守っていると考えられる時に限られます。国民投票の結果は、グローバル化に対する批判です」
(同上)
イギリスのEU離脱は、「反移民」「反グローバル化」であると。「移民推進派」の政治家さんにも是非聞かせたい言葉ですね。
EUの未来は?
次にトッドさん、EUの未来について語ります。
──エリートたちが主導した欧州統合の未来は?
「アイデンティティーの危機、共同体に帰属しているという感覚の危機が生じています。たとえばフランスへの帰属意識は低下している。けれども欧州に帰属しているという感覚はもっと弱い。欧州は、国民国家が消滅することへの治療法を生み出していません。むしろ重症化させています。
(同上)
欧州の人たちは、「アイデンティティーの危機」に陥っている。自国への帰属意識が薄く、なおかつ欧州への帰属意識はもっと薄い。結局EUはどうなっていくのでしょうか? 決定的な言葉がつづきます。
今、EUは解体しつつある。最後に神話を粉砕したのは移民危機です。
(同上)
EUは、解体しつつある! EUも、かつてのソ連のように崩壊するのでしょうか?
多くの国で、「EU離脱の賛否を問う国民投票を行う」と宣言している勢力が力を増しています。トッドさんの母国フランスでは、来年大統領選挙がある。マリーヌ・ルペンさんが当選し、国民投票が実施される。そしてフランス国民がEU離脱を選択すれば、EUは実質終わりですね。
そんな可能性も現実味をおびてきています。
image by: Wikimedia Commons
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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