原発ゼロにかじを切った台湾。資源の少ない「島国」の決断は吉か凶か

 

原発をなくすと言うのは簡単ですが、それによってどんなメリット、デメリットがあるのかを熟考して決断しなければなりません。台湾が先進国の一員として原発問題に立ち向かう姿勢は評価できます。いつかは直面すべき問題だからです。しかし、蔡政権は始まったばかりです。あまり焦って変化を生もうとすると、社会のバランスが崩れどこかに弊害が生じます

失業問題、エネルギー問題、シーレーン問題などは、じつに微妙な問題であり、焦ってできるものではありません。それ以前に、何の準備も何の根回しもなく、いきなり原発廃止を宣言するのは時期尚早だとしか言えません。

2014年、台湾の第4原発をめぐる騒動で李登輝氏の発言が注目を浴びました。その李登輝氏の発言の一部を以下に引用します。

福島で原発事故が発生して以後、世界中で原発の安全性についての再検討が進められたが、隣国である台湾では特に強烈な反応を引き起こした。

 

「第4原発」の建設を中止すべきか否か、人民が最も憂えているのは安全の問題であり、生命に対する脅威の問題である。

 

「無原発社会」は、林義雄氏がこれまで長らく主張してきたことであり、林氏が第4原発建設中止を求めてハンストすることを決定したのであれば、指導者たる者は人民の声に耳を傾け、人民がどのような意見を持っているか、多くの人民が林氏と同じような憂慮や主張を持っているかを聞くべきである。そして、第4原発の建設を中止するか否かは、人民が直接決定するよう委ねるべきである。

 

仮に、最終的に民意が第4原発建設中止を選んだのであれば、政府は思考を一歩進め「原子力発電を放棄した場合、それに代わる発電方法は何か」「原子力発電がなくなったら我々の生活に必要な電力はどう確保すればよいのか」などの課題について積極的に対応策を練らなければならない。例えば、以前から私が提言している次のような方法が考えられる。

 

  1. 台湾電力の民営化を進め、六地域に分割することで営業コストを下げ、南北間の送電ロスを抑えて発電効率を上げる
  2. 現在、台湾国内で20万ヘクタール以上ある休耕地を利用し、バイオエネルギーの原料を栽培する。

さらに、他の専門家が提案する太陽光、風力、水力、地熱などの代替エネルギー方式の利用や、再生エネルギーの発電比率を向上させると同時に、再生エネルギーの新技術研究への奨励政策を推し進め、エネルギー節約の広報を強化することで、これまでのエネルギー配分の構造改革を行わなければならない。

 

最後に、私の「原子力発電」に対する立場を明らかにしておきたい。私は、危険度も汚染度も高いウラニウムを原料とした第4原発には反対だ。しかし、このウラニウムを使った方式が唯一の原子力発電の方式ではない。より安全で汚染度の低いトリウムを使った原子力発電方式の研究を考えるべきだ。

 

ここで私は強調しておきたい。人民こそが国家の主人である。人民が第4原発の安全に対して憂慮しているのであれば、政府は民意に耳を傾け、最終的な決定を人民に委ねるべきだ。同時に、指導者は社会の各界とともに積極的にあらゆる解決法策を模索する義務がある。
(「『台湾の声』李登輝元総統が第四原発に関する発言について声明を発表

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