原発ゼロにかじを切った台湾。資源の少ない「島国」の決断は吉か凶か

 

まさに、李登輝氏の言う通りで、原発のない社会は理想です。2011年、私は台湾の民視テレビと、ドイツのハンブルグで行われた原発をめぐるシンポジウムに登壇しました。周りを見る限りでは、原発に賛成していたのは私だけでした。そんな私の主張に賛同したのは、原子力研究を専門とする物理学専門家数人のみでした。

EUを見るとドイツは反原発、スペインは太陽熱エネルギー過剰、デンマークは風力と、フランス以外は原発以外の電力を確保しています。一方、中国は、核廃棄物をどうしているのかというと、チベット高原のインド向きの斜面に放置しています。そのため、大雨になると核物質がインドへ流れ出してしまいます。これに対して、インド政府がどれだけ抗議をしても、知らんぷりでいるばかりか、文句があるならかかってこいといった勢いです。

台湾の原発反対運動は、環境保護運動の延長として長い歴史を持っています。それはまた、反国民党体制運動の一環としての意味も持っていました。

かつて、私も反原発運動のリーダーである林義雄氏とエネルギー問題について議論したことがありました。反対派が原発に反対する最大の理由としては、地震と台風が多い上に、台湾は人口が都市部に密集しており、4基ある原発のうち3基が台北に隣接しており、危険だということです。また、核廃棄物の処理について、現状では離島の蘭嶼島に廃棄していますが、今後はどうするのかという問題もあります。

どんなエネルギー源も一長一短な面があります。李登輝が言うように、国民の選択を尊重し、それぞれの国にあったエネルギーを慎重に選んで行くべきでしょう。

総統選挙の際、すでに問題となっていた第4基原発をめぐり、候補者たちは原発に対する立場を表明することを強いられました。蔡英文は原発ゼロを公約にして当選しました。蔡氏は公約を実行したにすぎず、原発ゼロによる経済的負担も当然想定内でしょう。

懸念すべきは安全保障の問題です。どこまで自然エネルギーが代替となりうるのか。自前でエネルギーを調達できなければ、石油や天然ガスを輸入せざるを得ないということになります。

しかしその場合、台湾海峡を中国に封鎖されるようなことがあれば、台湾はエネルギーで重大な危機に直面することになります。日本同様、そうしたこともきちんと考えなくてはなりません。

2025年に向けて、蔡政権がエネルギー政策でどのように舵取りをしていくのか、日本も注意深く見ていく必要があります。

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image by: 123Nelson / Shutterstock.com

 

黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋

著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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