ソーシャルワーカーは見た。不登校を生んだ教師の「ひいきの現場」

 

私の親友で、別の小学校で担任をしている若い女性に本音を聞いてみました。「先生は児童生徒の好き嫌いあるの?それが原因で不登校になることあるかな?」と。「不登校の児童生徒中の何%かは、担任の先生が原因ということ有ると思うよ。隠されているけれど」(注1)

しかし、児童生徒に対する教師の好き嫌いは主観的なこともありなかなかむずかしいところがあります。第一、「子どもたちには平等に接しています」とほとんどの先生方は建前しか言いません。毎日接している子どもたちにはわかっても、たまに授業参観する程度の保護者にはそういったことは見破れません。もし発見したとしても、必ず先生は否定するでしょうし、改善の見込みは薄いのです。

当初、拓哉くんの不登校は、小学校から「主に家庭側の要因」とされました。泣き寝入りをしていたお母さんに、「教育委員会に相談するように」と私はお伝えしました。

すぐさま、お母さんは教育委員会に相談し、その結果、ソーシャルワーカーとしての私に依頼がきました。不登校の解消の名目のもと、校長の許可を得て、学校開放日、授業参観の教室に入ってみました。

たしかに、問題の勇介くんは、運動神経が良く、体育の授業では輝いています。一方で、算数などの授業では、集中力がきれ、保護者の前でも、立ち歩いたり、周りの子に消しゴムを借りようとしたり、いそがしく動いています。先生は一応、注意はするものの、いかにも表面的です。勇介くんも慣れっ子になっているようで耳に入っていない様子でした。先生のおざなりな注意は周囲への「私はやってますよというアピールにしか見えません

つまり、ここで教師の指導上の問題が浮かび上がってきたのです。口頭で注意して行動抑制につながりやすい、いわゆる「指導のとおる」子だけに注意をしており、ADHD傾向の子ども向けの指導が行われていないのでした。

授業後に、同行した教育委員会の教諭から担任の先生に質問してもらうと、予想通り、こう返答がかえってきました。

「だって、勇介くんのような子に大声で注意すると、怒り出したり、かえって危ないことをするので逆効果になるのです。だから注意しません。それよりも、時間をかけて愛情を注ぎ、信頼関係を築くことに重点を置いてきました。だから、勇介は担任である私の言うことを聞きます」

と誇らしげに言いました。どうやら、先生は、注意や指導が通りやすい、拓哉くんのほうに指導をしたようです。叱られる拓哉くんが「不公平だ」と感じるのは当然のことです。注意をしても行動抑制のきかない勇介くんの指導をあきらめ、何も言わない、怒鳴らない、と決めたようです。たしかに愛情は大切ですが、やっていいことと悪いことを教えないのであれば、子どもが自ら学習し成長する機会を奪っていることにもなります。

勇介くんからすれば、先生はいつも自分の味方で甘えて良い先生大好きな先生。拓哉くんからすれば、ひいきでイジメを止めてくれない自分を嫌いな先生、というわけです。

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