自分の精神症状が「夫(妻)源病」であるとして、夫(妻)相手に「あなたのせいで自分の人生は滅茶苦茶になった。悪いのは私ではない。あなたこそが諸悪の根源なのだ」と責め立てることは、自己正当化と他罰傾向を後押しするだけである。
人は自分が被害者だと思うと、大変に強気になるものだ。
だって、被害者は悪くない。
悪いのは加害者に決まってるもん!
しかし、だ。
夫婦の力関係に差があって片方が一方的な精神的・肉体的DVを受けているケースを除けば、夫婦間の問題なんてある程度「お互い様」ではないのか。
年中ネチネチと嫌味を言う妻と、逆ギレして怒鳴り散らす夫。
こんなの、どちらが加害者でどちらが被害者かわからない。
おそらく双方が加害者であると同時に被害者なのだ。
ところがどちらか片方が「夫(妻)源病」を掲げた途端に、「相手が悪者。こちらは被害者」という構図が本人の脳内で出来上がってしまう。
すると被害者は己の「正義」を主張し、他罰傾向に拍車がかかると思うのだ。
そう、この「正義」が私を不安にするのだ。
「正義」は人を罰するばかりで誰も救わない。
自らを「正義」と信じた人ほど始末に負えない存在はない。独善的に他者を攻撃するモンスターとなるからだ。
我々に今もっとも必要なのは「寛容」であると私は思う。
他者を攻撃するのではなく、他者を許すメンタリティを養うことだ。
「人を裁くな。自分が裁かれないために」(マタイによる福音書7章1ー29)
自戒も込めて、この言葉を胸に刻もうと思う私である。
source: 中村うさぎの死ぬまでに伝えたい話
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『中村うさぎの死ぬまでに伝えたい話』
著者:中村うさぎ
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