トランプ当選で再浮上した「中国が覇権国家になる」という悪夢

 

確かに、アジア外交、貿易問題、安全保障などに関するトランプ氏の従来の主張がそのまま米国の政策となれば、中国の進める覇権主義戦略を利するようなことは多くあろう。

トランプ政権が米国伝統の孤立主義に回帰し、アジア太平洋地域に対する政治的・軍事的関与を弱めることとなれば、それこそ、米国の影響力を排除して南シナ海を支配し、アジアの覇主になろうとする中国の思うつぼだ。

トランプ政権になると、これまで日米両国が苦心して作り上げようとしたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)がご破算になる可能性が非常に大きいAIIB(アジアインフラ投資銀行)を立ち上げて中国中心の経済秩序をアジアで構築しようとする習近平政権にとって、それは願ってもない好機となろう。

そして、ジャーナリストの木村太郎氏が指摘しているように、「日米同盟の負担をやめたい」のがトランプ氏の「本音」であるならば、彼の政権の下で日米同盟が弱体化する可能性が十分にあるし、沖縄からの米軍基地の撤退という衝撃的な出来事がまったく起きない保証はない。

現に、トランプ氏当選の当日、基地反対の翁長雄志沖縄県知事はさっそく「期待したい」と表明した。万が一、沖縄から米軍基地が撤退するようなことが現実となれば、一番喜ぶのは習近平国家主席であろう。アジア制覇の最大の障害が一挙に取り除かれるからである。

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