すき家が強気に出た。1080円の高級弁当に隠された3つの意図

 

高級牛丼を利益度外視で発売したすき家の「隠された意図」とは?

それでは、「黒毛和牛弁当」の発売にはどのような意図が隠されているのでしょうか? 浮き彫りにしていくことにしましょう。

1.話題性―ギャップによるプロモーション効果

まず、1つ目の大きな意図は、話題性によるプロモーション効果を狙ったものといえるでしょう。

これまで低価格の牛丼を販売してきたすき家がいきなり3倍以上の価格の牛丼を発売すれば大きなインパクトがあります。

プレスリリースを流せば、多くのメディアでニュースとして取り上げられるでしょうし、このニュースを受けてSNSや掲示板などで盛り上がりを見せることでしょう。

つまり、コストをあまりかけることなくより多くの人にすき家で高級牛丼が発売されることをプロモーションすることが可能になるというわけです。

2.差別化―ブランディング

2つ目の意図としては、差別化によるブランディングにつなげたいという狙いが浮き彫りとなります。

牛丼業界はこれまで激しい価格競争を繰り広げてきました。すき家でいえば、かつては牛丼並盛1杯240円で提供したこともあり、「牛丼=安物というイメージが図らずも定着してしまいました。

また、最近では回転寿司大手のくら寿司が「牛丼を超えた『牛丼』」をキャッチフレーズに、1杯399円で牛丼の提供を開始し、発売後わずか1ヶ月で50万食を売り上げるヒットを記録しました。12月2日からは牛丼の売り上げを加速するために、半熟の卵を2つトッピングした「W温玉牛丼」を前倒しで投入し、3ヶ月で100万食という目標の早期達成を目指しています。

このように、従来のライバルとは全く異なる企業も牛丼業界に殴り込みをかけてきているのが現状です。

牛丼業界において、従来の枠を超えて競争が激化する中、業界トップのすき家は威信をかけて差別化を図り価格ではなく商品力で勝負していこうという決意の表れでもあるといえるでしょう。

その強い想いは、すき家が日本の外食業界では初めて、世界の優れたブランドに贈られる「ブランド・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、自社のブランドを高めることに注力しているところにも見てとれます。

3.新たな顧客層の開拓―価格から価値へのシフト

そして、最後の3つ目は新たな顧客層を開拓するという狙いです。これまですき家は女性層やファミリー層など吉野家などが食欲旺盛な男性を狙う中、ポジションを少しずらして急成長を遂げてきました。

一方で、「価格に敏感な顧客層」という共通の特徴も挙げられます。

ただ、すき家が新たに狙う顧客層は価格よりも価値に重点を置き、価格が少々高くても価値があれば購入を厭わない層です。なぜなら、このような顧客層を取り込むことに成功すれば、今後不毛な価格競争に巻き込まれることを避けることも可能になるからです。

つまり、すき家は価格で浮気しやすい顧客よりも、価値を重視して浮気しない新たな顧客の開拓を目指しているというわけです。

そのような意味では、今回の「黒毛和牛弁当」は1,200円や1,500円相当のコストをかけて赤字覚悟の価値を提供する必要があるといえるでしょう。

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