他の例を挙げます。
たとえば、マンションの営業担当者は、売ろうとしている物件が「駅から近い」「眺望が良い」「地域の平均よりも安い」「資産価値が高い」といったことをアピールすることが多いと思います。メリットを強調し、デメリットを隠してマンションを売ろうとします。
しかし、物件を探している人は、マンションそのものに興味があるというより、今住んでいる住居に何らかの不満がある、あるいは結婚や出産等で生活が大きく変わるなどの事情があるはずです。マンションを買うことは、なんらかの人生設計に基づくものであり、立地や間取りなどの条件は、その理想の生活の実現のための手段にすぎません。
販売業績が高く、ほかから抜きんでる一流の営業担当者は、自分が専門家として考える商品の価値をアピールするより、顧客が今、抱えている問題を解決し、あるいは顧客の生活を幸せにするためにマンションを購入するよう働きかけるでしょう。
つまり、ここでも、「二流」は、商品を売り、「一流」は、幸せを売る、ということが言えるでしょう。
プロとして、専門分野に通じていることは当然。それがなければ二流にもなれません。そのうえで、専門知識自体を売りにするか、専門知識を手段として相手の幸せに貢献できるか。
ビジネスにおいては、ここに二流から一流に飛躍するためのポイントがあるのではないか、と思います。私自身も、一流の弁護士を目指して精進していこうと考える今日この頃です。
今回は、ここまでです。
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『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』
人生で成功するには、論理的思考を身につけること、他人を説得できるようになることが必要です。テレビ朝日「報道ステーション」などでもお馴染みの現役弁護士・谷原誠が、論理的な思考、説得法、仕事術などをお届け致します。