安部総理がハワイの真珠湾を慰霊訪問することが決まりました。現職総理としては初の今回の訪問を受け、外部からの批判覚悟で「真珠湾を訪れた際は、アメリカはもちろん、中国や韓国も何も言えなくなるくらいに、きちんと心の底から謝罪するべき」とするのは、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さん。そこには、「中国から日本を守る」という意図があるとのことですが…、その論拠は一体?
安倍総理が、真珠湾で、中国の戦略を粉砕する方法
今回は、本当に「書こうか、書くまいか」悩みました。戦争に行き、満州で亡くなった祖父はどう思うだろうかと考えました。
龍馬は、なんと言うだろうか? 吉田松陰は、どう思うだろうか? 天風先生は、どうおっしゃるだろうか?
いろいろ考えました。そして、勇気を出して書くことにしました。中身は、「中国の反日戦略を粉砕する方法」です。しかし、この方法を書くことで、私は批判されるだろうと思います。それでも、覚悟して書きます。
「真珠湾攻撃を望んでいたルーズベルト」は「陰謀論」ではない
皆さんご存知と思いますが、安倍総理は12月26日、真珠湾に行かれるのですね。
ところで「ルーズベルトは、真珠湾攻撃を知っていた」と、日本で公言すれば、「陰謀論者」です。しかし、実を言うと、ルーズベルト大統領の前任者フーバー元大統領も、マッカーサーも、「日本よりルーズベルトの方が悪い!」と断言しています。
フーバーさんは、こんな主旨のことをいっています。
- ルーズベルトは、真珠湾攻撃をあらかじめ知っていた(つまり奇襲ではない)。
- ルーズベルトは、日本がアメリカを攻撃することを望んでいた。
- その理由は、アメリカが対ドイツ戦争に参戦するためだった。
2011年12月7日の産経新聞を読んでみましょう。
米歴史家のジョージ・ナッシュ氏が、これまで非公開だったフーバーのメモなどを基に著した「FREEDOM BETRAYED(裏切られた自由)」で明らかにした。
真珠湾攻撃に関しては、ルーズベルトが対独戦に参戦する口実を作るため、攻撃を事前に察知しながら放置。ドイツと同盟国だった日本を対米戦に引きずり込もうとした─などとする「陰謀説」が日米の研究者の間で浮かんでは消えてきたが、米大統領経験者が「陰謀説」に言及していたことが判明したのは初めて。
どうですか、これ? この本によると、フーバーさんは1946年に日本を訪問し、連合軍総司令部のマッカーサー元帥と会談した。すると、マッカーサーさんは、フーバーさんになんと言ったか?
マッカーサーも、「ルーズベルトは41年夏に日本側が模索した近衛文麿首相との日米首脳会談を行い、戦争回避の努力をすべきだった」と批判していた。
(同前)
何とマッカーサーも、「日本側は戦争を回避するために努力したが、戦争を望むルーズベルトがそれをぶち壊した」と考えていたというのです。私たちの先祖たちは、好戦的な悪者ではなかった。むしろ、ずる賢いルーズベルトにはめられた。「自虐史観」は、いい加減捨てましょう。
私たちが反省すべきは、「アメリカに先制攻撃したこと」ではなく、「アメリカの謀略に見事にはまって、先制攻撃させられたこと」。もちろん、「当時の指導者が、アメリカの真意を理解せず、ナイーブすぎた」と批判することはできるでしょう。しかし、それと「日本人は悪い民族だ」というのは、全然違う問題です。
ここまで書いて終わりにすれば、私の気分は何と良いことか。「フーバー大統領が言っている」というのは、大した証拠ですから、批判もされないことでしょう。
問題は、ここからです。
中国の「対日戦略」を復習しよう
昔からの読者さんは、知り尽くしていますが、大事なことなのでもう一度復習します。
2012年9月、日本政府は、尖閣を「国有化」しました。激怒した中国は、「日本を叩きつぶす!」と決意します。そして2012年11月、中国の代表団はモスクワを訪問。
「反日統一共同戦線」構築を、ロシアと韓国に提案しました。
この戦略の骨子は、三つです。
- 中国、ロシア、韓国で【反日統一共同戦線】をつくる
- 中ロ韓は、共同で「日本の領土要求」を断念させる(日本には、尖閣だけでなく、【沖縄】の領有権もない!)
- 「反日統一共同戦線」に、「アメリカ」を引き入れる
全部驚愕ですが、特に「3」は大事です。中国は、「アメリカ」を「反日統一共同戦線」に引き入れたい。そして、この戦略は、実際成功していたのです。
それで、2013年12月に安倍総理が靖国を参拝すると、世界的大バッシングが起こった。中韓にとどまらず、アメリカ、イギリス、EU、ドイツ、ロシア、オーストラリア、シンガポール、台湾などが、「靖国参拝」を非難しました。これは、中国の「反日統一共同戦線戦略」の結果です。
さて、中国は、どうやってアメリカを「反日統一共同戦線」に引き入れるのか?
- 安倍は、右翼である!
- 安倍は、軍国主義者である!
- 安倍は、歴史修正主義者である!
笑っちゃうようなプロパガンダですが、中国が大金を投じた結果、大きな成果が出ている。青山繁晴先生がおっしゃってましたが、安倍総理は欧州で、「ソフトファシスト」と呼ばれている。
ところで、この「反日統一共同戦線」戦略、今はどうなっているのでしょうか? 2014年初まで、非常に成功し、安倍総理は追いつめられていました。しかし、その後2014年3月の「クリミア併合」で、アメリカの敵意が、日本からロシアに移った。2015年3月の「AIIB事件」で、アメリカの敵意は、ロシアから中国に移った。というわけで、一応「停滞している」状態なのです。
しかし、中国に関しては、一刻も油断できません。トランプは、台湾の蔡英文総統と電話会談するなど、はっきり「反中」の姿勢を見せています。中国の思考だと、「アメリカと直接対決しよう!」とはならない。「アメリカの敵意を、中国から別の国に向けさせよう!」と考える。
第1のターゲットは、ロシアです。アメリカで「反プーチン」の世論を煽って、中国問題を忘れさせる。
第2のターゲットは、日本です。どうやって? 以前と変わらず、「安倍は右翼、軍国主義者、歴史修正主義者で、全然大戦の反省をしていない!」とプロパガンダすることで。
安倍総理は、中国の戦略を無力化するために「謝罪」を
では、どうすれば、中国の戦略を無力化できるのでしょうか?たとえば、総理は12月26日、真珠湾に行かれます。しかし、「謝罪はしません」と。
<真珠湾訪問>「謝罪ではない」菅官房長官
毎日新聞12/6(火)13:00配信
菅義偉官房長官は6日の記者会見で、安倍晋三首相の26、27両日の真珠湾訪問について「戦没者の慰霊のためであって謝罪のためではない」と強調した。そのうえで「日米の和解の価値を発信する機会になる」と述べた。
これ、私は、「ルーズベルトの真実」を知った上で、あえて総理に「はっきりと大きな声で、アメリカ国民からも中国、韓国からも文句をいわれないぐらい明瞭に謝罪してください」とお願いしたいと思います。なぜなら、謝罪しなければ、それは習近平への最高の「クリスマスプレゼント」になってしまうからです。
中国の指導者、メディアは、こう言うことでしょう。
「安倍は、パフォーマンスで真珠湾を訪問したが、スピーチの内容から、まったく反省していないことは明らかだ。日本は、卑怯な奇襲によりアメリカ人を2,403人殺害したが、安倍には、『悪いことをした』という気持ちは、一切ないらしい」
これに同調して、中国に買収されたアメリカ民主党議員が騒ぐことでしょう。「日本の歴史修正主義を抑えるために、中国と共闘すべきだ!」と。
私たちは、「ルーズベルトの真実」を知っています。しかし、99.9%のアメリカ人は知りません。ハワイには、日本の真珠湾攻撃で亡くなった人たちの子孫がいて「日本の総理は、謝罪するだろうか?」と注目している。
12月8日付ウォールストリートジャーナルには、こうあります。
攻撃から80年近くたった現在でも敵意が消えていない人々もいる。退役軍人の大半は現在90代。中には100歳を超えている人もいる。彼ら元兵士は今週、真珠湾攻撃の生き残りとして栄誉礼を受ける。
例えばイリノイ州コリンズビルに住むB・C・ウィルボーン氏は「本当のことを言えば、日本人は嫌いだ」と述べた。ウィルボーン氏は当時、真珠湾に係留していた米戦艦メリーランドの水兵だった。戦艦オクラホマ(攻撃による損害が軽微だったメリーランドとは異なり、集中攻撃を受けて転覆・沈没した)の艦内に閉じ込められた兵士たちが、船体の壁面を必死にたたくのを耳にしたという。そのうちの多くが救出されず死亡した。
もう一人の真珠湾の退役軍人であるテネシー州フランクリンのチェスター・クロス氏(94)は、旧日本軍の攻撃の残忍さが忘れられないと述べた。クロス氏は「日本人の連中は残虐だった。本当に残虐だった」と語った。同氏は、日本軍の攻撃が終わってしばらく後に真珠湾に到着した戦艦ノースカロライナの乗組員だった。
攻撃から80年近くたった現在でも敵意が消えていない人々もいる。
「本当のことを言えば、日本人は嫌いだ」
「日本人の連中は残虐だった。本当に残虐だった」
これらは、真珠湾攻撃を実際に体験した人にとっては、「事実」「真実」です。この部分を曖昧にしてかわそうとすれば、習近平は、大喜びでしょう。
「ルーズベルトの陰謀」を知った上で、総理は、はっきりと、「真珠湾攻撃で犠牲になった2,403名の皆さま、親族の皆さま、そしてアメリカ国民に、心からお詫び申し上げます!」と解釈の余地のない謝罪をし、真珠湾攻撃の犠牲者と、親族の憎しみと恨みを解放するべきです。
ここをごまかして、美辞麗句で逃げようとすれば、まず中韓が非難の声を挙げ、その後、中国の指令を受けた米民主党議員が、「安倍はまったく反省していない。やはり歴史修正主義者だ!」とバッシングを始めることでしょう。
しかし、解釈の余地のない、明確な謝罪をすれば、真珠湾攻撃犠牲者、親族、アメリカ国民の心は解放され、日米同盟はますます強固になります。
「ルーズベルトの真実」を知ったうえで、このようなことを書くのは、簡単ではありません。しかし私たちは、進行中の「反日統一共同戦線戦略」を常に意識し、あらゆる言動で、「無力化」していかなければなりません。安倍総理が、はっきりくっきり謝罪されることで、日本は確実に安全になります。
オバマ大統領への感謝を
安倍総理の真珠湾訪問には、もうひとつ重要な意味があります。それは、「オバマ大統領と気持ちよくお別れすること」です。そのためには、第1に「オバマ大統領は、傑出した大統領である!!!!」とほめあげることが必要。ネタはあります。
- オバマは世界経済が最悪だった09年に大統領になり、アメリカと世界経済を破局から救った。
- オバマ政権下でシェール革命が進み、アメリカは世界一の産油、産ガス超大国になった。
日本については、
3. トモダチ作戦
を、決して忘れるべきではないでしょう。そして、大きな声でいう必要はありませんが、オバマ政権は
- 10年「尖閣中国漁船衝突事件」
- 12年「尖閣国有化」
- 16年夏「大規模領海侵犯事件」
があった時、「尖閣は日米安保の適用範囲である!」と宣言し、日本を中国の侵略から守ってくれたことも忘れてはいけないでしょう。小人数で話す機会があれば、是非とも感謝すべきですね。
総理の真珠湾訪問。これは、「日米関係によいこと」と断定的に思われがちです。しかし、真珠湾訪問が「よいもの」になるか「わるいもの」になるかは、総理の言動によります。
中国は、「アメリカを反日統一共同戦線に引き入れる」と宣言している。総理は、中国の野望を、真珠湾で是非粉砕していただきたいと思います。
image by: 首相官邸
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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