実験導入した国も。ベーシックインカムは「AI失業」時代の答えだ

 

ドナルド・トランプの大統領選挙での勝利はそんな時代の始まりを示す警告だと私は受け取っています。機械化や情報革命のメリットを受けることができず、逆に職を失ったり、最低賃金の仕事に追いやられてしまった人たちの不満が爆発した結果の、トランプ大統領の誕生なのです。

トランプ大統領は、公約通り、保護主義に走り、公共投資や工場の米国内への誘致などで国内の雇用を増やす努力をすると思いますが、結局は対処療法でしかなく、国の財政を悪化させ、最低賃金で働く人たちを増やすだけです。貧富の差は彼のアプローチでは縮まりません

一方で、トランプ大統領と対立する民主党が各州で行っている最低賃金の引き上げも、同じく対処療法でしかなく、企業は海外へのさらなるアウトソーシングや機械化で対応してくるだけのことです。

ベーシックインカムは人々に全く新しい生き方のオプションを与えます。これまでであれば、とても難しかった、ボランティア活動や芸術や研究に一生を捧げる人々が増えると想います。生活のためではなく、充実感のためだけに職に就く人も数多くいると思います。歌手になる、スポーツ選手になる、などの夢をいつまでも追い続けることが可能になります。

共産主義が崩壊し、資本主義が貧富の差を増大している今、「機械化により豊かになった人間社会」の形がどうあるべきか、という根本の問いかけに対する、現実的な答えの一つがベーシックインカムなのだと私は思います。

image by: Shutterstock.com

 

『週刊 Life is beautiful』より一部抜粋

著者/中島聡(ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア)
マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

≪無料サンプルはこちら≫

print
いま読まれてます

  • 実験導入した国も。ベーシックインカムは「AI失業」時代の答えだ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け