ハナモゲラ
ある日、ジャズミュージシャンの中村誠一さんは、山下洋輔等とのライブを終えたあと、ホテルの一室で打ち上げパーティーに興じていました。仲間内だけで騒いでいたはずがいつのまにか見知らぬ男が部屋にいて一緒に馬鹿騒ぎしていたのに気づきます。
「こいつは誰だ?」と思った中村さんは得意の「ハナモゲラ語」でその男に話しかけました。ハナモゲラ語とは…、どこかの外国語のような音とリズムに聞こえるけれど話している内容は適当という、中村さんが得意とする芸です。
山下洋輔さんの著書によるとそのとき中村さんは、韓国語風に
「タレチョネン イリキテカ スミダ」
と怒鳴りつけたそうです。すると…、乱入してきたその男は中村さんより流暢なハナモゲラ語で
「ヨギメン ハッソゲネン パンチョゲネン パンビタン ピロビタン ウリチゲネンナ ゴスミダ」
と返してきたとか…。これで皆と意気投合したこの男はそのあと朝まで大騒ぎしたあと、「森田です」と名前だけを言い残して帰っていったそうです。
いよいよ、タモリさんが子供の頃から好きだった「人間観察」の成果が世に出る時が来たのです。
デビュー
福岡でのライブの打ち上げで「森田」と名乗る謎の男と遭遇した山下洋輔さんは、東京に戻ると…、「福岡に凄い男がいた」と、仲間に話してまわり、そんなに凄いなら、みんなで旅費を出し合ってその男を呼ぼう、という話になりました。
そこで山下さんは、あれだけ芸達者な男なら街で噂になっているにちがいないと博多まで出かけて、「森田という面白い男を知らないか?」と聞いてまわったそうです。
その頃、タモリさんは喫茶店のマスターをしていて、案の定「変人マスター」として、地元で噂になっていました。すぐに森田という男と再会することができた山下さんはさっそく東京に連れて帰り、仲間に紹介したそうです。
これをきっかけに芸能人の間で人気者になったタモリさんは、
さて…、それ以来、