日本を為替操作国に見せた、官邸主導「円安誘導」の動かぬ証拠

 

唯一の「成功体験」としての円安

アベノミクスは最初のうち上手く行きそうに見えたのだが、それは異次元金融緩和という一種の心理的ショック療法の余波で円安と株高が進んで、見せかけだけの企業業績の向上が現出したことによる。

言うまでもなく、円安自体は良いことでも悪いことでもない。トヨタを筆頭とする輸出企業にはとてつもない見かけ上の利益という不労所得をもたらして株価も押し上げられるが、輸入企業や純国内企業にはマイナス要因でしかないから、全体を均せば中立的であるし、消費者にとっては輸入品の値段が上がって有り難くない。にもかかわらずマスコミは「早速アベノミクスの効果が出た」と囃し立て、自分では株の取引などしていない人までが何か得をしたような気分になってしまうという、異常な集団的幻覚症状が蔓延した。

たとえそれが幻覚であっても、その化けの皮が剥がれないうちに第2の矢や第3の矢が狙い違わず放たれて、実体経済の活性化が緒に着くのであれば救われたのだが、実際にはすべては不発で、何も起こらないまま矢尽き刀も折れて、昨年9月の日銀の「総括的検証」の結末としての破れかぶれの「マイナス金利という名の事実上の敗北宣言に行き着いた。

それ以後、アベノミクスはもはや打つ手なし」の状態で、そうかと言って敗北を認める訳には行かないので、そこで最初の「成功体験」に戻って、政府・日銀挙げての円安・株高演出大作戦を打って、アベノミクスの死を悟られないようにしながら、取り敢えずは3月末決算期を乗り切ろう──というのが、菅官房長官の昨年末発言の真意と考えてよいのではないか。

本当なら官房長官が自らの口から為替操作まがいのことを言うべきではなかったし、しかもその口調に、「ものすごく」とか「重要な」とか「危機管理」とか「決断」とかの過剰表現が目立つのは老獪・冷静な彼らしくないとも思うが、それだけアベノミクスがいよいよ追い詰められていることの裏返しなのだろう。

つまり、アベノミクスは、最初も最後も、円安による幻覚以外に何の中身もなかった訳で、そこをトランプから突かれた時に、安倍首相は何と答弁するのだろうか。

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