自動運転が可能なソフトを搭載した電気自動車「Tesla Model X」は、人々に驚きを与え、車の概念を根底から覆そうとしています。メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的プログラマーの中島聡さんは、今はまだ運転サポート機能にとどまっているものの、このままいけば、あと数年で私たちがイメージするような自動運転車になる、と見ています。今回は、中島さんがTesla(テスラ)とiPhoneの相似点などを挙げながら、Tesla独自の魅力を紹介。さらに、自身が所有する「Tesla Model X」で高速道路を走行した際の使用感などを詳しくレビューしています。
Tesla と iPhone
Tesla Model X を入手して5週ほどになりますが、強く感じるのは、ユーザー体験が初代の iPhone を入手した時と似ている、という感覚です。
私にとっては、これまで、自動車は「移動するための道具」でしかありませんでした。なので、「速く走ること」も「カッコ良い」ことも全く重要ではなく、「壊れずに安定して使えること」が何よりも重要でした。
しかし、Model X は全く違います。そもそも入手した時から、(自動運転を可能にする)最初のソフトウェアアップデートが待ち遠しくて仕方がなかったし、自動運転が可能になってからは、道路上で色々と実験するのが楽しみになりました。
「電話をかけるための道具」であった携帯電話が、iPhone の登場により「電話機能付きのコンピュータ」に変わったのと同じように、Model X は「移動機能付きのコンピュータ」なのです。
iPhone が発売された際には、日本の携帯電話メーカーのエンジニアたちからは「あんな携帯電話ならうちにも作れる」という声が聞かれました。しかし、彼らが気付いていなかったのは、「なぜ Steve Jobs が iPhone を作ったのか」という設計思想の根本的な違いでした。Steve Jobs は、単に携帯電話に色々な機能を詰め込みたかったのではなく、Steve Jobs は、iPhone により人々のライフスタイルを根本的に変えたかったのです。
Tesla にも同じく、Elon Musk (イーロン・マスク)の強い思いが込められています。彼は、単に「自動運転付きの電気自動車」を作りたいのではなく、「ガソリン車よりも圧倒的に便利な電気自動車」を普及させることにより、化石燃料に頼らなくても維持できる世界を作りたいのです。
今年の CES では、自ら「Tesla Killer」と名乗る Faraday Future の FF91 が発表されましたが、全く心を動かされなかったのは、そこに何の「思い」も感じることができなかったからです。
ちなみに、HW2 と呼ばれる最新のハードウェアを搭載した Model X の自動運転は高速道路でしか使えないし、時速45マイルまでという制限が付いています。まだ十分なテストができていないというのが理由であり、徐々にこの速度制限は緩和させるとのことです。
「Tesla Model X 」の自動運転機能はどこまで進化しているのか?