元記者が怒りの告発。朝日新聞に「誤報」が掲載されてしまった訳

 

「虐殺は日本軍がやったことにしておきなさい」

確かに、この地域ではまとまって遺骸が発見されている。事実、日本軍がマラヤ共産党の華人抗日ゲリラが集まった所を急襲して殺害しているが、戦後も華人ゲリラが日本軍に協力したマレー人民衆を相当数、殺害し、マレー人側もその仕返しをしている。さらに再支配を始めたイギリス側も、反英戦に入った共産ゲリラを多数、討伐した。

それまで、その辺の二、三の屋内での取材で私は、あちこちでまとまって発見された遺骸がなぜ全て日本軍がやったと言えるのか、との旨の質問をしたが、そう伝わっている、そう聞かされている、あるいはそれを子供の時に体験した式の、判で押したような答えしか返されず、全てが日本軍による「民衆虐殺」であることを裏付ける具体的な根拠、証拠は聞かされなかった。
(同上)

その後、取材を終えた長谷川氏に、「聞いて欲しいと言わんばかりの風情」で中年の華人女性が話しかけてきた。

「シンガポールにいるという日本の朝日新聞の女性の記者が、虐殺は日本軍がやったことにしておきなさい、かまわない、と言ったんです」

そして、その女性記者の名前を「マツイ」と述べた。
(同上)

長谷川氏は松井やよりが告発していた「民衆虐殺の遺骸については、氏の知る限り、「いかなる法医学上考古学上の調査も一切なされていない」という事実を確認した。その結果、自身の『アエラ』記事では、この虐殺問題については、一切扱わない事とし、「松井やよりとは正反対の対処となった」。

松井やよりは定年退職後に、上述の「法廷」を発案し、推進するのだが、これは検事がアメリカ、韓国、北朝鮮などから50名、被害証言者つまり元慰安婦が9カ国から64名と大がかりなものだった。これだけの規模の「法廷を支える経費はどこから得られたのか、関係者は「趣旨に賛同した人たちの寄付による」というだけで、収支の明細は明らかにされていない

さらに、関係者によると、松井やよりは「法廷の準備のために北朝鮮にも行っているという。核開発も日本人拉致事件も明白になっていた時点で、北朝鮮とどのような話し合いをしたのかも一切不明である。長谷川氏は得られた事実からここまでしか語らないが、そこから先は誰でも容易に一つの推論に辿り着く。

中ソの人民大虐殺という「事実」を報道しない朝日

1988(昭和63)年、長谷川氏は『アエラ』の取材で、白ロシアの首都ミンスクを訪れた。1937年から40年にかけてのスターリン時代、当局が一定数の「人民の敵」を処刑したと報告するために、ある区域に住んでいる住民全員を郊外の森に連行して虐殺したのだった。

林には、遺骸を埋め込んだ大きな穴の窪みが見渡す限り点在していて、私がある窪みを踏んだら、「そこはまだ遺骸が埋まっているかも」と言われ、飛び退いた。…ミンスクの松林での、足下の遺骸を通してマルクス主義社会の狂気、非道は直に体感した。

 

そのときの私は、コートをまとっていても震えた。
(同上)

人口811万人の小国カンボジアでも、200万人に上る大虐殺がなされたとされているが、その直前に朝日新聞の元プノンペン特派員だった和田俊(たかし、故人)は、こう報じている。

政府権力の委讓も、平穏のうちに行われたようだ。敵を遇するうえで、きわめてアジア的な優しさにあふれているようにみえる。…カンボジア人の融通自在の行動様式からみて、革命の後につきものの陰険な粛清は起こらないのではあるまいか。
(同上)

ソ連や中国を含め、これまでの共産主義国家での人民虐殺の犠牲者数は総計1億人近いと推定されている。そういう「事実」は、朝日の唱える真実には都合が悪いので報じられない

私は、朝日新聞社のソ連、中華人民共和国に関する報道で一番欠けているのは、この両国で発生した途方もない人民大虐殺、テロの報道、究明であると考えている。

 

それに比すればある時期の戦争に伴う日本の「加害」を声高に批判しながらも、中ソのことに関しては声が消えるこの新聞社は、両国のこの大犯罪の、少なくとも道義的には共犯者とみなされるべきではないのか。
(同上)

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