日本、過労死ね。残業「月最大100時間」合意を新聞はどう伝えたか

 

演出された「合意」

【毎日】は1面左肩と3面の解説記事及びQ&Aの「なるほドリ」。見出しから。

1面

  • 「月100時間未満」労使決着
  • 繁忙期 残業 初の上限

3面

  • 過労死防止は不透明
  • 残業「月100時間未満」
  • 首相裁定で合意演出
  • 「勤務間の休息」課題
  • どうして「100時間」なの?(以下、なるほドリ)
  • 労災判断の目安 合意守る努力必要

uttiiの眼

《毎日》も《読売》のように、残業時間の上限規制の全体を図示しようとしているが、頑張りすぎてしまったためにかえって分かりづらいものになっている。

1面記事はそれでもユニークな内容がいくつかある。1つはメンタルヘルスやパワハラ対策を進めることも法案に盛り込むという点、また現行では残業上限の対象外となっている建設業とトラック、タクシーなど自動車運転業務についても、将来的には残業規制の対象に加えていくとされていること。

きょうの3面解説記事「クローズアップ」。見出しに、愛すべき《毎日》の率直さ、直截さが溢れている。

まずは「過労死防止は不透明」。

政治的な駆け引きや労使間のメンツのような問題をグダグダ書いて、そこに何かの意味を求めようとするのではなく、この間の経緯が、結局のところ「過労死防止という目標の実現に役立つのかという大本の問題意識をそのまま見出しにしている。そして、結果として「過労死防止は不透明」と断を下す。また、「その差は実質1秒」(《読売》記事から)の攻防を丸く収めたとされる首相については、「首相裁定で合意演出」と政権の裏の意図を勘繰るジャーナリストらしい気働きを見せている。「演出を見出しに取る勇気には拍手

3面記事本文はさらに興味深い。まず、財界が「100時間未満」に抵抗した理由については、「100時間に達した瞬間に罰則が科されること」を嫌がったのだと説明されている。

改めて、過労自殺した電通の高橋まつりさんのケースが社会問題化し、電通の書類送検があり、あるいは厚労省労働局は有名企業の長時間労働を次々摘発し、経団連も、上限規制を否定できない情勢が生まれていたこと。

他方、「1カ月100時間はあり得ない」と訴えていた連合だが、労使の合意がなければ法案は出せないと安倍氏に言われ、連合のせいで残業時間の青天井が続いたと言われたくないため、合意の方向に向いたとする。首相が経団連を説得するという政府の演出に乗って合意をするしかなくなってしまったと。

《毎日》が紹介する高橋まつりさんのお母さんの言葉は激越だ。「(残業分だけで)月100時間働けば経済成長すると思っているとしたら、大きな間違いです。繁忙期であれば命を落としてもよいのでしょうか」と聞かれて、まともな答えができる人は政・労・使のいずれにもいないだろう。

なるほドリが「過労死ライン」について書いているのも素晴らしい。

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