屈辱の容認。なぜ中国は北朝鮮をあっさり捨てたのか?

 

今後、トランプ政権が実際に北朝鮮に対する軍事攻撃に踏み切るかどうかは別としては、少なくとも中国の出方に対し、アメリカはもはや心配しなくなったことは確実だ。習政権は米国に大きく譲歩したことはまず間違いない。

しかしそれは中国にとって、まさに「画期的」ともいうべき大いなる譲歩である。過去の長い歴史において、歴代の中華帝国はずっと朝鮮半島のことを自らの勢力範囲であるとの認識を持ち、それを守るために戦争を起こすことも辞さなかった。最後の王朝である清国はまさに朝鮮半島の権益を守るために日本との間で日清戦争を戦って惨敗したが、今の中華人民共和国も成立早々、同じ理由で朝鮮戦争に参戦して米軍と数年間の死闘を繰り返して百万人程度の死傷者を出したことがある。

当時、米軍を中心とする国連軍が38度線を超えて北朝鮮領内に攻め込んだ途端、中国軍はさっそく半島になだれ込んで参戦した。この歴史の経緯からしても、北朝鮮に外国の軍事力が入ってくることを拒否することは中国にとって重要な国家戦略であることが分かる。

朝鮮戦争の参戦を決めたのは当時の中国主席、毛沢東であるが、朝鮮戦争以来直近に至るまで、中国共産党の歴代政権はこの国家戦略を守り続けてきた。この数年間、北朝鮮との関係が悪化したとしても、中国は一貫して北朝鮮の延命に手を貸しつつ、朝鮮半島の現状維持に腐心して、中国と米韓同盟との間のクッション的な役割を北朝鮮に託しているのである。

しかし、今になって習近平政権が北朝鮮に対する米国の軍事攻撃を容認することとなれば、それはまさに、中国が死守してきた重要な国家戦略の転換であり、朝鮮半島に対する中国の地政学的権益と影響力を放棄することにもなるのである。米軍が軍事攻撃に踏み切った場合、中国はそのまま座して高みの見物でもすれば、北の体制が崩壊して朝鮮半島全体が米軍と米韓同盟の支配下に置かれてしまう可能性は大だ。それだと中国は永久に朝鮮半島を失うのである。

こうしたことは百も承知のうえで、習近平政権は一体どうしてアメリカへ北朝鮮攻撃に容認の態度をとったのか。ここでは2つの理由が考えられる。

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