長い前置きだが、ここから本題に入る。最近、ウシの体性幹細胞から、細胞培養により筋肉組織を育てて人工肉を作る技術が開発され、ウシを解体しなくても牛肉を食べられるようになったのである。2013年にウシの人工肉が初めて公開されたときは、ハンバーガー用のパティサイズの肉を作るのに32万5千ドルかかったというが、現在は11ドルに下がっているという。価格が2ドルくらいまで下がれば実用化されるだろう。
この技術はウシばかりでなく他の家畜にも応用可能である。さらに、体性幹細胞ではなく、iPS細胞やES細胞を使えば、肉ばかりなく、他の部位も作れそうだから、食材の多様性も確保できそうだ。価格が下がって美味しいということになれば、通常の解体した肉よりもポピュラーになるかもしれない。ほとんどの人が人工肉を食べるようになると、現在の捕鯨反対論者がクジラを殺すなと言うのと同様に、動物愛護団体は解体に関して強い反対運動を起こすに違いない。しばらくすると先進国では家畜を解体することは規制され、さらには犯罪になるかもしれない。さて何が起こるだろうか。
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