昭和の日に考えたい、激動の時代を支えた昭和天皇の「直き心」

 

「日本のこころ」のあり方を示す「日本国の象徴」

こうした「直き心」を、中西輝政教授は日本文明の大きな特徴として捉えている。

日本ではつねに「正直できれいな心」「裏表のない心根」という、独特な心のあり方が求められる。さらには「素直で争いごとを好まない」「黙々と努力する」「約束を守る」などといった、「心の清潔さ」に大きな価値が与えられてきた。これを古い時代には「明(あか)き清き心」「直き心」と呼んだ。

 

これこそ日本文明の大きな特徴であり、このような「心のあり方」に重要な価値を置く文明はほかには見あたらない。…この国には、一人ひとりが自らの内面を大切にし、「心の清潔さを保つことこそ、幸福を招き、社会を平穏にするもとである」と考える、確かな伝統があるのである。…

 

そしてこうした「日本のこころ」のあり方を、目に見えるかたちでもっともはっきりと示すもの、それが天皇なのである。
(『皇室の本義』中西輝政、福田和也 著/PHP研究所)

日本のこころのあり方を目に見えるかたちで示す。これが天皇を日本国の象徴とすることであるとしたら、その「象徴」の意味はとてつもなく重い。

「日本が世界に良い影響を与えている」

「お金を拾ったら警察に届ける」と言う日本人が、スペイン人、アラブ人、ロシア人などから「ナイーブすぎる」「バカだ」「どうして警察が信用できる?」と集中砲火を浴びせられる。これが現代の国際社会の縮図であろう。

こんな国際社会の中で生きていくためには、「直き心」を捨て去って、嘘をついても、人を騙しても、自分の利益を守っていかなければならないのか。中西輝政教授はこう語る。

よく日本人は「外交下手」といわれるが、これは私の見るところ、深い意味で「仕方のないこと」なのである。なぜならそれはこの国の本質、日本文明の核心に関わる欠点だからである。そして深いレベルでは「外交下手」は、むしろ日本の誇りでさえある、といえるかもしれない。
(同上)

確かに相手国を騙して利益を得る外交も、短期的には成り立つだろう。しかし、相手国も馬鹿ではない。長年付き合っていれば、信頼できる国かどうかはいずれ分かってしまうものだ。

かつて読売新聞などが行った「アジア7か国世論調査」では「日本がアジアの一員として、アジア発展のために積極的な役割を果たしている」「日本が世界に良い影響を与えているという声が圧倒的だった。

我々は、もっと自信を持って我々なりの直き心を持って国際社会に対すべきではないか。それが波風の絶えない国際社会を「和らげ調え」る事につながるだろう。

そしてその「直き心」は過度の物質主義、性急な進歩主義、そして模倣の個人主義といった「精神のバブルから我々を目覚めさせ安らかな幸福へと導くであろう。

我々は有史以来、「直き心」を持って「和らげ調えてしろしめす」天皇を国民統合の象徴として戴いてきた国民なのである。

文責:伊勢雅臣

 

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【著者】 伊勢雅臣 【発行周期】 週刊

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