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観測データを持たぬ御用学者に地震は予測できない【村井vs早川対談】

在野で地震予測を続ける両研究者の対談が実現!

2016年4月には熊本地方を震源とした最大震度7の大地震が発生し、それ以降も同年6月に道南の内浦湾、10月には鳥取県中部、12月には茨城県北部をそれぞれ震源とした、最大震度6弱の地震が起きるなど、絶えず揺れに見舞われている日本列島。毎年「全国地震動予測地図」を発表している政府の地震調査委員会も、先日その最新版を発表し、それによると南海トラフ地震に代表される海溝型地震の発生リスクが高まっており、太平洋側の各エリアで今後30年内に大きな揺れに見舞われる確率が特に高いと指摘しています。

そのいっぽうで、ここ数年活発になっているのが、国などの公的機関ではなく、在野で活動している研究者たちによる地震予測。なかでも測量学のメソッドを駆使し地表のわずかなズレから将来の揺れを予測する村井俊治・東大名誉教授、そして大規模地震の直前に発生するとされる電波の異常を察知して予測する早川正士・電通大名誉教授の両氏は、その的中率の高さにも定評があり、民間による地震予測研究をけん引する存在として、大いに注目を集めています。

ともにメルマガ著者でもある村井氏と早川氏ですが、この春そんなお二人によるスペシャル対談が、ついに実現しました。意外なことにほぼ初対面だったというお二人が語り合った、これまでの研究の総括と将来における地震予測の在り方、そしてお二人が指摘する今後特に警戒すべきエリアとは……。2時間近くにも渡った対談の模様を、今回は特別に一部抜粋して公開します。

地震予測の両巨頭、お互いの印象は?

まぐまぐ編集部(以下、ま):地震予測・予知の研究家として、ともに大活躍されている村井教授と早川教授ですが、こうやって対面されるのは今日が初めてなんですよね?

村井:はい、そうなんですよ。楽しみにしていました。

早川:直接お会いするのは初めてですね。もっともテレビを通じてでしたら、私は何回もお目にかかってますが(笑)。

ま:お二人が地震予測の研究をしようと思い立ったきっかけを、詳しく教えてくださいますか。

村井:私が地震予測の研究を始めたのは2002年なんですが、その翌年にマグニチュード8.0の十勝沖地震が起きたんです。その頃の国土地理のGPSデータというのは今よりも貧弱で、1か月単位ぐらいの平均しか出なかったんですが、それでも前兆が出てたんです。それを受けて、GPSで地震予測をする特許を出願しようということになって、自分で申請の明細書を作成して提出したんですが、3回断られてるんですよね。

早川:はいはい、わかります。審査をしてるのがみんな地震学者だから……。

村井:そうなんです。つまらないいちゃもんを付けて拒絶してくるものだから、こちらも喧嘩腰になってしまって「特許っていうのは元々、産業を振興するためにあるんだ。審査官の言ってることは非常に些細なことで、取るに足らない。論拠はちゃんと説明してある。そんな些細なことでケチを付けるんじゃない」って言ってやったんですよ。そうしたら、その1か月後にやっと通ったんです。

早川:よく通りましたね。

村井:その後も、GPSデータを持っている建設会社の技術アドバイザーなどを務める傍らで、研究を続けていたんですが、その時に東日本大地震の直前に発生した前兆にも気付いたんです。で、このような研究を通じて何が分かったかというと、地震の前にはなぜだか理由は分からないのですが、地球が異常に動くということがはっきりしたと。早川先生がおっしゃる電波のほうでも、地震の直前に原因はわからないけど乱れや擾乱が発生するということですが、地球のほうも事前にビクッと動いているんです。

これを見てください。これは東日本大地震の直前までの地表の動きなんですが、2か月前にまず前兆があって、3日前にもドドドドドって異常に動いているんですね。この異常な動きこそ、地震学者が誰も発見したことないっていう「プレスリップ」だと思うんです。でも、こうやってデータを示しても、地震学者は「プレスリップはまだ誰も発見してない」って言うんですよね。GPSのデータはインチキだ、デタラメだっていうことで。

観測データを持たない者は予測などできない

村井:とはいえ、巨大地震の直前にはGPSのデータにもこういう異常が出るのは、事実なわけで。われわれの夢は、その前兆をいち早く見つけて、地震の直前予測に役立てたいということなんですが、国土地理院のデータは2日遅れとか2週間遅れで提供されるので、直前の異常を察知できないんです。昨年からNTTドコモと組んで自前のプライベート観測点を立てているのは、この直前の前兆を捉えるためにリアルタイム型の観測をしたいという大きな目的があるからなんです。

早川:でも、そうなると自分でお金出さなきゃいけないでしょ?

村井:そうなんです。自前のプライベート観測点が1基で500万円ほど費用が掛かります。

早川:それぐらいはしますよね。

村井:それを今、全部で18基つくろうとしてるんですけど、そうなると諸々の経費も含めて1億円は下らないと。予算が全然ないなかで厳しい話ではあるのですが、なんとかやっていこうと。

早川先生は電波の領域で研究なさっているから分かると思うんですが、データというものは絶対にウソをつかないんです。でも地震学者は、データから前兆を調べてるんじゃなくて、あくまで前歴だけを調べてるんです。彼らは過去の前歴から確率モデルがどうこうって言ってますが、私に言わすとそれっていい加減で、どうでもいいような結論です。予測というものは、観測をすることで初めてできるのであって、観測データを持たない人は予測などできません

早川:まったくその通りだと思いますよ。私のほうも阪神淡路大震災をきっかけに、どうも電離層という電波を反射する層が、大規模な地震が起きる前にどうも下がっているんじゃないかっていうことが分かったんですね。その後も調べていくうちに、VLFの電波を使ってこの電離層の異常を調べることで、地震の予知ができることがはっきりしたんですよ。

東日本大震災の時は、まだ情報配信をしていなかったんですが、異常が現れたのを事前に察知していたんです。こちらの地図を見ていただけると分かるんですが、調布からシアトルを結ぶこのパスの上で、3.11が起こってるわけなんです。

このグラフは東日本大震災の前、3月5日と6日の調布からシアトルのパスなんですが、夜中の振幅が標準偏差の3~4倍を超えて下がっています。これはものすごく異常な動きなんです。それまでの研究で、このような異常が出ると1週間後には地震が起きるというのは分かっていたんです。統計的にそうでしたから。

ただこの時は、3月9日にマグニチュード7.2の地震が起きました。その時、地震学の先生たちは「東北地方ではもうこれ以上地震は起きません」と発言しているんですが、われわれの経験からいくと、前兆から3日後に起きるというのはタイミング的に早すぎるので、「これで終わりじゃないな」「この後にさらに大きなものがくるな」と考えたんです。

ま:実際、その後に3.11が起きたと……。

早川:そうなんです。地震と前兆との関係は、割り箸を両手で握って折り曲げるのをイメージしてもらうと分かりやすいんですよ。持った割り箸にゆっくり力をいれていくと、パチパチっと割れて、その後にバチっと割れますよね。この最後にバチっと割れるのが地震なんですが、その前にパチパチとひび割れが入る時に発生するのが前兆なんです。

VLF電波で分かる前兆は、そのパチパチとひび割れが入る時に発生するものと思われるのですが、われわれは他の電波も観測していて、VLF電波とは別に約1日前にアコースティックミッションという現象が現れるものがあるんです。先ほど村井先生は、大きな地震の前には前兆が2度現れるとおっしゃられていましたが、そういう意味では村井先生の話と私の話は完全に矛盾しないと思います。

今後「地震予測」はどのように活用されるべきか

ま:お二人のこれまでの研究の経緯をお聞きしていると、なかなか地震予測についての理解が世間や学会でなかなか進まないという現実があって、なんだかものすごくもどかしい気分がします。

早川:特に地震学の人間は、われわれの話に対して本当に聞く耳を持ってくれないんですよね。

実は阪神淡路大震災が起こった後なんですが、村井先生もご存知だと思うのですが、もともと東大の地震研究所のご出身でプレートテクトニクス研究の第一人者である上田誠也先生に、「ちょっと地震学のところに行って話をしてみませんか」と誘われて、話をしにいったことがあるんです。でもその時も、向こうの反応は悪かった。それどころか「早川のような変ないかがわしい人間と付き合うな」みたいな空気になるんですよ。私と付き合うと、いわゆる「地震村」のソサエティで立場がなくなるというか。

村井:上田先生は、私のことをフジテレビに紹介してくださった方なんです。で、私が会社を作ってすぐの頃にワークショップを開催したときに、わざわざ来てくださったんですよ。

偉い先生がやって来たっていうことで、来賓の挨拶を5分くらいでお願いしたんですが、上田先生は15分間に渡って、現在の地震学がいかに地震予知ができないかということを滔々と話されて、その上で私に向かって「期待していますよ」とおっしゃって、元気付けてくれたんです。地震学の中枢にいらっしゃる方のなかでも、上田先生ほど柔軟な考えをお持ちの方っていうのは、他にいらっしゃらないと思います。

早川:いないですね。それなのに、その周りにいる人間たちが理解できないんですから、どうしようもない。あるいは、実は頭の中では理解しているんだけど、われわれのところとは一緒にできないという地震学者としての立場上の問題で、分からないふりをしているだけかもしれないですが。まあ、しょうがない話なのかもしれませんね。……しかし今日は村井先生のお話を伺って、そちらもわれわれと同じような取り扱いを受けてるんだなっていうことが、よく分かりました。

村井:まぁ野党のようなものですからね(笑)。

早川:野党も野党で、めちゃめちゃ少数派のマイノリティですから。

ま:そもそも、どうして「地震予測はいかがわしいものである」といったイメージが生まれたのか、お二人はどうお考えですか?

早川:それは、国が「地震予知はできない」ということを宣言したのが大きいんですよ。もちろんそれは地震学だけの結論であって、われわれの結論ではもちろんありませんけど。

新聞とかのメディアも、それに乗っかっちゃうわけなんです。私自身も嫌な経験があって、阪神淡路大震災が起こった後なんですが、先ほども話した通り地震の予知は可能なんじゃないかということが分かったので、研究や情報配信に協力してくれる民間の企業を探してたんです。すると、それをある新聞社が聞きつけて取材に来たんですが、掲載された記事を見てみると、なんと「地震予知を売ろうとする不埒な輩がいる」っていう論調だったんです。親方日の丸とはよく言いますけど、国の言う絶対意志の影響力というのは、想像以上に強いんだなって思い知らされましたよ。

村井:ただ、お役所や世間などの反応も、昔と比べると随分良くなって来ているというか、今の若い人たちはむしろ支援してくれる雰囲気になってるような気もしますけどね。

早川:確かに、ここ数年でずいぶん変わってると思います。私は2015年は地震予知元年と位置付けてるんですけど、ここに来て村井さんや私のところ以外にも、地震予知を行うところがたくさん出てきて、世間的にも地震予知という言葉がかなり広まっている気がします。私個人としても、今のようにいろんな予測法が出て来る状況というのは、とても歓迎すべきことだと思います。

村井:私はだいたい年に30回ぐらい、いろんなところで講演させていただいていて、以前だと半信半疑で聴いていらっしゃる方が多いように見受けられたんですが、最近では「メルマガの会員です」「非常時に向けての心の支えになってます」と話しかけてくださる方が結構増えてきているんです。そういう点では手ごたえはすごく感じていますが、まだまだ広く多くの方に知ってもらいたいという思いもあります。

早川:そうですね。どういう印象を持たれるのであれ、まずは知っていただかない限りはどうしようもないですから。私なんかはもう「地震の予知をしている、いかがわしい早川という男を知っていただく」というのが、スタート地点でもいいかなとまで思うようになりましたから(笑)。

 


酸いも甘いも噛み分ける両教授による忌憚なきクロストークですが、MAG2 NEWSでお読みいただけるのはここまで。村井教授の『週刊MEGA地震予測』、早川教授の『【1週間前に地震を予知】早川教授の最新『WEEKLY 地震予報』』のどちらかを5月中にご登録いただくと、今後警戒すべき大規模地震の危険エリアについても言及した、当対談の「完全版」を読むことができます。お二人のメルマガはともに「初月無料」。この機会にぜひご登録ください。

Photo by:Sakito Taki(MAG2 NEWS)

 

『週刊MEGA地震予測』
著者/JESEA(地震科学探査機構)
測量学の世界的権威である東京大学名誉教授・村井俊治氏による、測量工学的アプローチに基づいた地震予測を毎週配信。2014年に発生した震度5以上の地震を全て予測するなど、高い予測的中実績を誇り、テレビ・新聞・雑誌等での紹介も多数。
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『【1週間前に地震を予知】早川教授の最新『WEEKLY 地震予報』』
著者/早川正士
『地震』が事前にわかれば、自分と自分の大切な人の命が守れます。日本地震予知学会会長で電気通信大学名誉教授の早川正士先生が発見した理論から関東中心に『地震予知』を行い、お知らせするサービスです(毎週火曜日+緊急号外配信あり)。地震は地下の活動による直接的な現象だけでなく、宇宙空間までその影響が及んでいます。電離層と電波から地震の起こる約1週間前に地震発生の前兆現象をつかむ技術(特許第4867016号)で、短期地震予知を実用化しました。「何よりも地震による被害を最小限に抑えたい」それが早川教授の想いです。
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