森友問題はまだ終わってない。財務省も青ざめた籠池氏の「録音データ」

 

しかし、最終的に籠池夫妻は、ほとんど聞き役に徹していた田村室長から、以下のような内容の発言を引き出した。

国有地の管理処分は基本的には財務局の権限です。ただ、本件のように特例的なものは、相談がこちらに来る。仮に、土地を売る値段よりも、土地を改良する価格の方が高いときに、売るかどうかは、別の判断がありますが、われわれここまでさせていただいて…。

この発言からは、ゴミ撤去費の値引きで土地の価格をゼロにするわけにはいかないが、特例的にこれまで進めてきたことだから、なんとかいたします、というニュアンスが読み取れる。

この発言の後、籠池夫妻は急に上機嫌になった。帰り際の夫妻の会話。

籠池氏「きょうは話してよかったでしょう」

 

諄子氏「うん、よかったです」

 

籠池氏「いや、もうね、棟上げ式にね、首相夫人が来られて餅をまくことになってるから」

面談の9日後の3月24日に、森友学園から近畿財務局に「土地を購入したい」との申し入れがあり、大阪航空局がゴミ処分費用を8億1,900万円と見積もって、6月20日、1億3,400万円で売買契約が締結されたのである。

民進党のヒアリングで、籠池氏は「大阪航空局も、近畿財務局も、廃棄物撤去費を見積もるための資料を持っていなかったことがわかったので、こちらの業者の資料を提供した」と語っている。

おそらく、森友側の資料をもとに、ゼロにならない範囲での値引き額を見積もり、売却価格を設定したのであろう。その方向性が固まった段階で、近畿財務局から森友学園の顧問弁護士に連絡があり、籠池氏は土地購入方針に切り換えたと推測される。

それにしても、籠池氏の話を聞く限り、昭恵夫人との交流は想像以上に密接である。

2014年3月、昭恵夫人が塚本幼稚園での講演を引き受けてくれることになり、籠池氏は事前に東京のホテルオークラで夫人と会う。小学校建設に話が及ぶと、「主人に伝えます」「何かすることがありますか」と昭恵夫人。そのさい安倍晋三事務所の秘書が同行していた。

2014年4月25日、昭恵夫人が初めて塚本幼稚園で講演、小学校用地を視察した。籠池氏は「土地を借り受けたいが、交渉はなかなか進まない」と訴えた。籠池氏は交渉のため10日に一度は近畿財務局に出向いていたという。

その後、籠池氏は交渉経過を「適時」、昭恵夫人に電話で報告。諄子氏は籠池氏より高い頻度で昭恵夫人の携帯を鳴らし、1時間から2時間にわたって話し込んでいたという。当時の近畿財務局の担当者には昭恵夫人と密に連絡を取り合っていることを知らせていた

すると、2014年夏ごろ、突然近畿財務局が定借に前向きになった。「なぜ態度を変えたのかは知る由もないが…」と籠池氏は言う。

2014年12月、近畿財務局は契約書のひな形一式を添えて「今後の手続きについて」という文書を森友学園に送付してきた。そこからは2015年5月29日の定借契約締結までまっしぐらに進んだ。

籠池氏は昭恵夫人の役割について、「私の報告を聞いて各方面に対応していただいた」と語っている。だが、自分たちには昭恵夫人がついている、そのバックには安倍総理がいる、という驕りと慢心が、結局は籠池夫妻の命取りとなっていったのではないか。

籠池氏が値下げの直接交渉のため上京し財務省に乗り込んだとき、田村室長に近畿財務局の対応について「どうも、われわれが舐められているなぁというふうに感じてましてね」と語ったのは、安倍夫妻の存在をふりかざした威嚇ともとれよう。

これをどう処理するべきか、誰が考えてもふだんの仕事とは異なる。総理案件として、話が財務省上層部にまで伝わっていたことは想像に難くない。

権力をカサに着て甘い汁を吸おうとし、そのあげく、権力に裏切られる。驕れるもの久しからずだが、もっとも驕っている安倍総理がいまだ国民から高い支持率を得ているのは、どうしたものか。絶妙だった日本国民のバランス感覚にも狂いが出はじめているのかもしれない。

 

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