人件費の高騰に悩むラウンドワンが、V字回復した「皮肉な理由」

 

ラウンドワンの主要ターゲット層は若者です。しかし、少子高齢化の影響でターゲット層の若者は徐々に減っています。このことはラウンドワンにとって喜ばしくない現象といえるでしょう。近年の同社の業績悪化は少子高齢化の影響も少なからずあったといえます。

一方、若者はアルバイトやパートとして働くことが少ないという側面があります。学生がアルバイトとして働いたり、若年層の主婦がパートとして働いていたりします。このように、正規社員ではなくアルバイトやパートとして働いている若者は少なくありません。

このことから、時給上昇による恩恵があることがわかります。というのも、時給上昇により主要ターゲット層の若者の所得が上がるからです。高い時給で働き、得た給与で消費を行います。少子高齢化でターゲット層は徐々に減っていますが、そのスピード以上にターゲット層の労働時時給が上昇していることで、若者全体としての所得は拡大しているのです。

若者の割合が大きいゲームセンター売上高は大きく上昇しています。2017年3月期は前年比39.4%にもなっています。若者の所得増加が業績に貢献しているのです。

一方、幅広い年齢層が楽しむボウリングは苦戦しています。ラウンドワンは2015年ごろから、開店時間を午前10時から8時に繰り上げるなどシニア層の取り込みに舵をきって少子高齢化対策を始めました。しかし、ラウンドワンのボウリングはそれでも低迷が続き、2017年3月期の売上高は前年比で1.1%減少しています。

近年、ゲームセンターを利用するシニア層が増えているという報道があります。しかし、2016年9月15日付ブルームバーグの報道によると、60代以上のゲームセンター参加率は2005年と2015年との比較で、男性で1.0ポイント程度の上昇女性で2.0ポイント程度の上昇です。1年あたりではわずか0.1ポイントと0.2ポイント程度にすぎません。シニア対策は中長期的な施策の問題で、ラウンドワンの直近の業績に大きく貢献したとは言えないでしょう。

いずれにしても、アルバイト・パートの時給上昇による若者の所得増加はラウンドワンにとって追い風になりそうです。しかし、アミューズメント業界の市場規模は縮小傾向にあり、中長期的には厳しい経営環境が続きそうです。

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