「日本ヤバい」をまとめた経産省・若手のスライドにある違和感

 

一番目は、全体的に「これは経産省の描くべきビジョンではない』ということです。勿論、縦割り行政に私は賛成しませんが、全体を貫く内容はほとんどが再分配を調整せよという話であって、厚労省マターばかりが出てくるのです。

従って、経済産業を「前向き」に進めるための構造改革産業構造転換という話は全く出てきません。「なんじゃこりゃ~」という感じです。

奇妙なのは、一人あたりGDPが下降しているという事実をあえて避けていることです。また、なにをやるにも一定の成長が必要という話も避けているんですね。これでは、穏健な国家社会主義と言われても仕方ないわけで、経済的にもゼロサムでみんな貧乏にというかなりネガティブな感じがします。

先端的な頭脳労働がどんどん流出している中で、国内GDPが毀損されていく問題など、国際化の方向性や弊害の指摘などもありません。また、終身雇用、年功序列の崩し方に知恵を絞るべきなんですが、そうした産業と労働形態の話も出てきません。母子家庭の貧困の話をしながら、男女差別への問題提起も出てきません

結局のところは、ベーシックインカムなどを使って、世代間格差などを「再分配の調整」で改善しようという話以上でも以下でもないのです。どういうわけか、「ネガティブな現実を直視している」として、人気化しているスライドなのですが、過大評価は禁物と思います。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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