先日、トランプ大統領との「やり取りの全貌」を暴露したFBI前長官のジェームズ・コミー氏。この証言により大統領支持率は38%にまで急降下しましたが、当のトランプ氏はコミー氏の主張を真っ向から否定。さらに、「自身の正当性が証明された」と自信をみせました。これに対し、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、真実を知るのは当事者二人のみとしながらも、トランプ大統領の発言に疑問を呈しています。
トランプとコミー(FBI前長官)、ウソつきはどっち?
トランプさんに解任されたFBIのコミー前長官は6月8日、上院情報委員会の公聴会に出席。トランプさんとの関係について、証言しました。彼は、何を語ったのでしょうか?
前号で触れましたが、ざっくり復習すると、
- 自分(コミー)が解任されたのは、トランプが「ロシアに関する捜査方法を変えたかったから」。
これは、常識的に考えると「捜査妨害」ですが、コミーさんは、断言しませんでした。
- ロシアがアメリカの大統領選挙に介入したことは、明白。
プーチンは一貫して否定していますが、アメリカ国内では「常識」になっています。
- トランプは、コミーさんに、「フリン(前大統領補佐官)の捜査をやめるよう」要求した。
これも「司法妨害」に思えますが、コミーさんは「そうだ」と断言はしませんでした。
コミー発言へのリアクションは、二つでした。一つは、「これまでメディアで報じられた内容で、新しい話はなかったよね」というもの。もう一つは、「メディアで聞いた話、やっぱりホントだったのだな」という反応。どちらもあるのですが、この証言でトランプの支持率は38%まで下がりました。トランプは、どう反応したのでしょうか?
コミーは、「うそつき!」
トランプさんは9日の記者会見で、コミー発言についてコメントしました。
トランプ氏はまた、フリン前大統領補佐官への捜査を打ち切るよう大統領から求められたとのコミー氏の主張を強く否定。コミー氏が偽証したと間接的に批判する形となった。
(CNN.co.jp 6月10日)
トランプさんは、「フリンの捜査を打ち切れ」とは言ってないそうです。要するに、「コミーは偽証している」「コミーはうそつきだ」と。
長官在任中にトランプ氏個人が捜査対象になったことはないなどとコミー氏が証言したことについては歓迎の意を表明。「結託も司法妨害もなかった」と述べた。
(同上)
トランプ自身が捜査対象になったことはないから、「司法妨害はなかった」というのは、強引ですね。なぜなら、問題とされているのは、「フリンの捜査を中止するよう要求した」こと、「ロシア・ゲートの捜査をやめさせるために、FBI長官を解任したこと」なのですから。
トランプ氏は証言中は沈黙を守っていたが、9日朝にツイッターで、「多くの虚偽の発言やうそにも関わらず、(自身の)正当性が完全に証明された」「コミー氏は情報漏えい者だ」と述べていた。
(同上)
コミーは「うそつき」だが、それでも証言で「自身の正当性が証明された」そうです。彼が自分を守るのは当然ですが、国民の認識とはずれています。