もう後がない。過去最大63億円赤字の「大塚家具」が迎える正念場

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2015年に勃発した「お家騒動」によるマイナスイメージが客離れを引き起こした大塚家具。その後驚異的な復活劇を演じるものの再び業績は悪化、2017年12月期の中間決算では63億円という過去最悪の最終損失が見込まれています。無料メルマガ『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』では著者でMBAホルダーの安部徹也さんが、財務分析を通して苦戦する大塚家具の経営を検証するとともに、復活のための必達目標を記しています。

過去最悪の赤字に沈む大塚家具の財務分析

大塚家具の2017年12月期の中間決算が発表されました。

mba20170819-1出典:大塚家具 平成29年12月期 第2四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)

売上高は前年同期比11.3%減の214億円、本業の儲けを示す営業利益は27億円の赤字、そして最終損失は事業立て直しのための引当金19億円を特別損失として計上した影響で46億円にまで膨らみます。

この中間期での予想を大幅に上回る業績悪化を受けて、大塚家具は2017年12月期の業績予想を下方修正。

売上高は当初14%増の530億円から一転、8%減の428億円へ、営業利益は5億円の黒字から43億円の赤字に、そして最終損失は63億円と過去最悪の水準に達する見込みであることを発表しました。

今回はこの中間決算を踏まえ、財務分析を通して苦戦する大塚家具の経営を検証していくことにしましょう。

大塚家具のこれまでの業績を振り返る

まずは大塚家具のこれまでの業績を簡単に振り返っていくことにしましょう。
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大塚家具は、創業者大塚勝久氏の経営の下、会員制の徹底した接客で順調に売り上げを伸ばしてきましたが、2003年に730億円の売上高を記録して以降、業績は伸び悩みます。

そして、2008年に5億円の最終赤字に転落すると、2009年には娘である久美子氏が社長として登板し、勝久氏は会長に退きます。

危機を救うべく経営の舵取りを任された久美子社長は、会員制で敷居の高いビジネスモデルから誰でも気軽に入れるカジュアルな店舗へと路線変更を図ることによって成長を指向。この路線変更後も売り上げの低下と赤字は2010年まで続きますが、2011年にはようやく黒字化を達成します。

その後、黒字基調は続くものの、売上高は550億円前後で伸び悩んだことから、業を煮やした勝久会長が2014年7月に久美子社長を突然解任し、自ら社長を兼務するという暴挙に出ます。そして、再び会員制に戻すことによって、業績アップを目論んだのです。

ところが、結果は来店客数の2割減、営業利益と経常利益は4年振りの赤字に転落するという惨憺たる有り様。そこで、2015年1月には久美子氏がわずか半年で社長に復帰し、再び陣頭指揮を執ることになります。そしてこの後、3月の株主総会で経営権を巡って親子の激しいバトルが繰り広げられることにつながっていくのです。

この親子の争いがメディアで大々的に取り上げられたことにより、大塚家具のイメージは大幅に悪化し、株主総会が開催された2015年3月の月次売上は前年同月比38.8%減と大きく落ち込むことになります。

ところが、娘の久美子社長に軍配が上がった後、メディアの注目を浴び露出度が高まるにつれ、大塚家具への来店客が増加するという予想だにしなかった効果が生まれます。

そして、2015年5月に開催した大感謝フェアでは、店舗に顧客が殺到するなど、5月の月次売上は前年同月比170%と驚異的な水準に達し、2015年は増収増益で再び黒字化を果たしたのです。

ただ、その後はメディア露出が減少するにつれ、大塚家具は売り上げに苦戦するようになり、2016年は売り上げを120億程度減らし463億へ、そして最終損益は43億という巨額の赤字に転落。

2017年もこの悪い流れを好転させることができずに、現状は売上高428億円、最終損益で63億円の赤字とこれまでに経験したことのない厳しい決算を見込んでいるのです。

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