探偵が調査。積水ハウスから63億円を騙し取った「地面師」の黒幕

 

「なりすましをやった人物」

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ネットでこの事件を調べると70代の「海喜館」のオーナー女将に化けた人物がいるということであり、パスポートも黒塗りながら公開されていた。さらにこの人物は、不動産業界では有名な超危険人物である池袋のK」であるという。

そこで、私は事件関係者に話を聞き、このなりすまし犯についての情報を得た。そしてわかったことは、私が以前に「不動産オーナーであると、精巧な偽造証明書を使って、金融機関からお金をだまし取ろうとした」事件の調査対象者にそっくりだということ。

そして、「海喜館」積水ハウス事件では、印鑑証明書までも提出されているということもわかったのだが、状況から考えると、まずはパスポートの偽造を行い、これに基づいて印鑑登録を変更させているであろうということがわかったのだ。

詐欺師の世界ではこのような偽造物を精巧に作る職人を道具屋と呼ぶが、こうした偽造物は本物が使う紙を使用したり、中にはICチップまでも偽造したりするから、それこそ本格的にチェックする以外、これを見破るのは極めて困難なのだ。

ただ裏の世界で確認調査を進めると、やはり私が以前にあげたことのある人物がこのなりすまし犯であることが判明したのだ。そして、今まさに逃亡中であることも併せてわかった。ある程度の資金をつけて地下に潜った詐欺師は拠点移動を頻繁に行うため、見つけ出すのは極めて難しい。

そこで、私は道具屋のAに話を聞くことにした。Aは、自分のところではないがと断りを入れてから、なりすましの女性は、新たに偽造のパスポートを手配ししばらく身を隠すと言っていたということだった。

事実、このなりすまし常習犯とも言える高齢女性が縄張りとしていた東京北部に関しては、彼女を見かけたという証言はなかった。高飛びをして海外にということも考えられたが、どうやら、そこまでの資金を使うのはリスキーであると考え、国内に潜伏している

というのも、この件でなりすまし女性が手にした金額は、数千万円単位ではなく数百万円程度という情報も得たからだ。逃亡資金としてはあまりに乏しい。つまりは、トカゲの尻尾切りで、確実に逮捕される役割逮捕要員なのだろう。

積水ハウス側

積水ハウス側は、この件は刑事事件として被害を届け出ているからと沈黙を貫くが、唯一公表したことは、この件に関わった責任者が自殺をしたという噂はそうしたことはないということであった。

しかし、上場企業でもある「積水ハウス」ともあろう不動産のプロが、ここまで杜撰な取引を行ったことは、誰が見ても不自然さが残るのだ。実際、「海喜館」周囲のお店などで確認を行えば、すぐに本人ではないと見抜けたはずなのだ。ところが、足を使った調査活動は、どこにいっても確認できない状況であったから、十分な調査を蹴飛ばして、取引を強引に進めた、ということがわかる。

それにしても、ほとんど調査をしていない上に、所有者のS子さんではない人物と取引をしてしまったということを認知したのは、仮登記をしてしばらく経ってから、土地の測量を始めて「海喜館」の周辺にパイロンなどを起き始めてから、S子氏側の弁護士に阻まれてからなのだ。

その様子を近くで見ていた近所の住人によれば、積水ハウスの担当者は真っ赤な顔をしながら、「この人S子さんですよね?」と確認を取ってきたそうだ。「違うよ」と答えると、みるみるうちに顔面が蒼白になり、その場で呆然としていたということであった。

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