少子化なんてどこ吹く風。「育児・保育」業界が衰えを見せぬ理由

 

変化のシグナル──満たされない顧客と無消費者が存在することを示す兆候

この業界の顧客はどのような用事を片づけようとしているのでしょうか。育児であれば「家庭で我が子を保護して世話する手助けをしてほしい」ということであり、保育であれば「我が子が小学校に上がるまで養護し教育してほしい」ということです。

では、そんな顧客は現在の育児・保育に関連する製品やサービスを十分に消費していないのでしょうか、満たされていないのでしょうか、それとも過剰満足なのでしょうか。

育児に関しては、高付加価値商品への需要が高まっています。たとえば、ほ乳瓶や機能性を重視したベビーカー、肌触りがよく漏れにくい紙おむつなどの機能性商品が登場しています。これらはいずれも、既存顧客に向けて導入される新しい改良製品であり、満たされない顧客をターゲットとした上位市場に向かう持続的イノベーションが根づこうとしているシグナルといえます。

一方、保育に関しては、多くの無消費の状況が存在します。イノベーションの理論に従えば、認可保育サービスを受けたいときに消費できない人は、無消費の状況にいるといいます。また、無消費と並列する概念もあります。それは、一般の企業が認可保育園のようなサービスを提供できない場合、無提供者と呼びます。また、一般人が保育士と同じことができない場合も、一般人はその特定の状況における無提供者になります。

イノベーションの理論によれば、無消費者の存在は、新市場型破壊的イノベ-ションの機会となります。しかし、そこにはイノベーションの阻害要因が存在します。動機づけ/能力の枠組みによれば、私立保育所への企業の参入が進まないことは、プレイヤーの動機づけや能力を高められていないことを示唆しています。

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